[本編完結]伯爵令嬢は悪魔と呼ばれた公爵様を応援したい。

ゆき

文字の大きさ
2 / 14

ふわふわして可愛らしいもの

しおりを挟む


「私はふわふわして可愛らしいものが大好きなんだ!!!」


体格の良い体に、少し目つきの悪い赤い瞳でそんなことを言う公爵様に思わず耳を疑ってしまった。

怪物なんて称される彼にこんな一面があったなんて誰が思うだろうか。


「それはつまり、公爵様のお眼鏡に適ったのがうちの妹だったということでよろしいでしょうか…?」

「ああ、そうだ。一目惚れだ」


確かにふわふわして可愛らしいと言えばホーリィの代名詞と言っても過言ではない。



「でしたら、婚約を申し込んだらよろしいのでは?」

「それだと本当の意味で彼女を手に入れることなんて到底叶わないだろ」


「ホーリィと心を通わせたいと?」

私がそう尋ねると公爵様はこくりと頷く。


確かに私達は一介の伯爵家で、公爵様からそんな申し込みがあれば両親は喜んで受け入れてしまうだろう。

ホーリィはよく知らない公爵様(しかも社交界の悪魔)と無理やり結婚させられることになる。


そんな状況で常人が心を開き、公爵様に想いを寄せることなんて到底不可能だ。



「そうですね、懸命な判断だと思います」


問題はどうやってホーリィに公爵様を好きになってもらうかだ。

か弱くて華奢な彼女は少し臆病なところがあるから…



「ホーリィの好きなタイプは優しくて面白い人です。ですが、大前提として公爵様はもう少しコミュニケーション能力を上げた方が良いのでは?」

「コミュニケーション、能力?」


私がそう言うと彼は不思議そうに首を傾げていた。

自覚がないタイプは面倒くさい。



「公爵様が悪魔なんて呼ばれてしまう原因はその容姿だけのせいではありません」

「っ、そうなのか!?」


「容姿から連想される人柄を否定できない対人能力の無さです」

「…君は随分はっきりとものを言うのだな」


はっきり言わなければ気づかないでしょう?

公爵様が不器用で鈍感だということは少し話しただけで理解できた。


「どうしてこの場ではそこそこ会話も成り立つのに、社交界に出ると途端に無口になってしまうのですか?」

「…緊張するだろ」


「そんなものは初めだけです。慣れる努力をしないからそうなるんですよ?」


緊張なんて言ってられる場合ではないのだ。

いくら社交は女の役割が多いと言っても、このままでは伴侶すら怪しい。


勿論彼がどこかの家に婚約を申し込めば無理な話ではないけど、彼自身にそんな気がなさそうだから仕方ない。


「いくら人は見た目じゃないと言ってもやはり容姿が与える影響は大きいんです。それは私やあなたが一番理解しているはずでしょう?」

「ああ、そうだな」


しゅんとした顔で下を向いてしまう公爵様。

こんなあどけない一面を見たら一気に悪魔なんて印象飛んでいっちゃいそうなのに、気の毒な人。


社交界での噂もあながち否定できないような気の強さを持つ私よりも、きっと彼はつらい思いをしてきたのだと思った。



「だから、まずはたくさん話をして本当の公爵様を知ってもらいましょう。そうしたらきっとみんな本当の公爵様がどんな人か気づいてくれますから」

不安そうに手遊びする公爵様をじっと見つめて言葉を続ける。


「私はこんなに短い時間で、公爵様が本当は優しくて素敵な心を持った人だとちゃんと理解することができました。同じことです。本当の公爵様を曝け出すことができたら、きっとホーリィだって貴方の魅力に気づいてくれますよ」

「…っ、そうか」

公爵様は照れたように頬を赤らめ、それから少し嬉しそうに口角を上げるのだった。


…可愛い人だ。


こんな公爵様の一面を見る事が出来てなんだか得したような、くすぐったいような不思議な気持ちになる。



「私も、ちゃんと気づいたぞ。毒華と呼ばれる君がこんな悪魔の話を真剣に聞いて、考えを巡らしてくれるようなお人好しだって」


彼は蠱惑的な笑みを浮かべてそんなことを言う。


「公爵様からの相談を無下にできる程私は肝が据わっていませんから」

「憎まれ口は癖なのか?君は私にコミュニケーション能力がどうこうなんて言えないんじゃないか?」


この人、私の事をからかってる…!



「どうして私の前ではそんなにペラペラと口が回るのに、一度社交界に出ると驚くほど口下手になってしまうのですか」

「さあな、私にもわからん。ただ、ハンナ嬢は言葉に嘘がないから、ズバズバとものを言う君にはこちらも遠慮なく話が出来る」


なるほど、貴族社会では相手の腹を読んでこちらの有利に物事を進めることが常だ。

公爵様は良くも悪くも真っ直ぐな人間のようだからそういう社会そのものが苦手なのかもしれない。


「つくづくこの世界に向いていない人ですねあなたは」

「失礼だな」


しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

地味顔令嬢の私を「嘘の告白」で笑いものにするつもりですか? 結構です、なら本気で惚れさせてから逆にこっちが盛大に振ってあげます!

日々埋没。
恋愛
「お前が好きだ。この俺と付き合ってくれないか?」    学園のアイドル、マルスからの突然の告白。  憧れの人からの言葉に喜んだのも束の間、伯爵令嬢リーンベイルは偶然知ってしまう。それが退屈しのぎの「嘘の告白(ウソコク)」だったことを。 「あの地味顔令嬢が俺に釣り合うわけないだろ。ドッキリのプラカードでも用意しとくわ」  親友のミネルバと共に怒りに震える彼女は、復讐を決意する。まずは父の言いつけで隠していた「絶世の美貌」を解禁! 嘘の恋を「真実の恋(マジコク)」に変えさせ、最高のタイミングで彼を地獄へ突き落とす――。 「……今さら本気になった? 冗談はやめてください、これドッキリですよ?」

わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが

水谷繭
恋愛
公爵令嬢のリリアーヌは、婚約者のジェラール王子を追いかけてはいつも冷たくあしらわれていた。 王子の態度に落ち込んだリリアーヌが公園を散策していると、転んで頭を打ってしまう。 数日間寝込むはめになったリリアーヌ。眠っている間に前世の記憶が流れ込み、リリアーヌは今自分がいるのは前世で読んでいたWeb漫画の世界だったことに気づく。 記憶を思い出してみると冷静になり、あれだけ執着していた王子をどうしてそこまで好きだったのかわからなくなる。 リリアーヌは王子と婚約解消して、新しい人生を歩むことを決意するが…… ◆表紙はGirly Drop様からお借りしました ◇小説家になろうにも掲載しています

悪役令嬢と誤解され冷遇されていたのに、目覚めたら夫が豹変して求愛してくるのですが?

いりん
恋愛
初恋の人と結婚できたーー これから幸せに2人で暮らしていける…そう思ったのに。 「私は夫としての務めを果たすつもりはない。」 「君を好きになることはない。必要以上に話し掛けないでくれ」 冷たく拒絶され、離婚届けを取り寄せた。 あと2週間で届くーーそうしたら、解放してあげよう。 ショックで熱をだし寝込むこと1週間。 目覚めると夫がなぜか豹変していて…!? 「君から話し掛けてくれないのか?」 「もう君が隣にいないのは考えられない」 無口不器用夫×優しい鈍感妻 すれ違いから始まる両片思いストーリー

追放された悪役令嬢はシングルマザー

ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。 断罪回避に奮闘するも失敗。 国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。 この子は私の子よ!守ってみせるわ。 1人、子を育てる決心をする。 そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。 さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥ ーーーー 完結確約 9話完結です。 短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

悪役令嬢だったので、身の振り方を考えたい。

しぎ
恋愛
カーティア・メラーニはある日、自分が悪役令嬢であることに気づいた。 断罪イベントまではあと数ヶ月、ヒロインへのざまぁ返しを計画…せずに、カーティアは大好きな読書を楽しみながら、修道院のパンフレットを取り寄せるのだった。悪役令嬢としての日々をカーティアがのんびり過ごしていると、不仲だったはずの婚約者との距離がだんだんおかしくなってきて…。

貴方なんて大嫌い

ララ愛
恋愛
婚約をして5年目でそろそろ結婚の準備の予定だったのに貴方は最近どこかの令嬢と いつも一緒で私の存在はなんだろう・・・2人はむつまじく愛し合っているとみんなが言っている それなら私はもういいです・・・貴方なんて大嫌い

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

処理中です...