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第33話 酔っ払い
しおりを挟むサクラは酒瓶を傾けると、自分のコップに思い切り注ぎ始めた。
「あっ、ダメ! そんなに——」
篠宮が止めに入る。
「そうだぞ、初めての酒なんだから……」
鬼丸も止める。篠宮はサクラの手から酒瓶をもぎ取った。中身を確認している。
「ああっ! 滅多に手に入らないカモツルなのに! こんなに飲んじゃって!」
鬼丸がコケる。
「酒の心配か」
「いや、えっと、サクラさんは?」
見ればサクラの目が座っている。
ジトーッと篠宮を睨んで来るのだ。
「おい、篠宮ツカサ」
「はいぃぃっ!」
低い声で名を呼ばれ、篠宮は背筋をピンと伸ばす。サクラの手が彼のネクタイをグイッと掴んだ。
「ヒィッ!」
「お前、なかなかやるなぁ」
へ? 褒められた?
さらに引き寄せられ、背中をバシバシ叩かれる。
「痛い痛い痛い」
「花見は良いな! 楽しいぞ!」
「そ、それはよかった……」
頬を紅く染めて、にこやかに微笑まれて、篠宮はドギマギする。一方で鬼丸は見た事のないサクラの醜態にぽかんと口を開けて見ている。
あの、クールで厳格な須王が、にこにこと笑っている!
酒とはなんとすごいものなのだ!
自分は酔わないだろうと思いつつ、鬼丸は一人感心していた。
とっておきの酒を半分以上飲まれて、篠宮はこれ以上酒を失うわけにはいかないと、酒瓶を隠す事にした。
散々サクラにどつきまわされた後、ボロボロになりながら篠宮はそっと花見の席を離れる。
新校舎の一階に教員用のロッカーがある。篠宮はとりあえずそこに酒を隠す事にした。
「サクラさんは意外と酒癖が悪いなぁ。でも俺がリードしてゆっくり飲ませれば……あれ?」
邪な妄想中の篠宮の目の端に、鴫原校長の姿が入った。
英国紳士らしく背筋を伸ばして、両手で重箱を持っている。それだけではなく、肘から下げた紙袋も何か入っているようだった。
校長は人気のない旧校舎へと進んでいく。
「重箱を持って、どこへ行くんだろう??」
つづく
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