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第34話 謎の地下室
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篠宮はそっと校長の跡をつけた。
例の如く、気配を消すのはお手の物だ。
校長は迷う様子もなく、廊下を進み、階段の前に来た。上に上がるのかと思いきや、彼はその脇にある鉄製のドアを引いた。
ゴゴン……。
重いドアが動く鈍い音がして、そこに地下へと向かう階段が現れる。
校長はそこを降りていった。
篠宮もその入り口まで忍び寄ると、ひょいと覗き込んでみる。
湿気——水の匂いが篠宮の鼻に届いて来た。嫌な匂いではない。清潔な水の香りだ。
薄暗い階段が彼の恐怖心を刺激したが、好奇心に負けて、篠宮は地下へと足を踏み出した。
「黒羽君、調子はどうですか?」
鴫原校長は目の前にいる生徒たちに声をかけた。本当なら一緒に花見をしたかったのだが、「行きたくない」と頑なに断られたのだった。
「僕は別に」
長い前髪で片目を隠したショートカットの子は、その見えている片目でチラリと校長を見たが、すぐにそっぽを向いてしまった。
細い指で胸元のリボンタイを弄びながら、目の前の巨大な水槽を眺めている。
校長は近くの机の上に持って来た重箱を置いた。
「良かったら一緒に食べませんか? 私の妻が作ったものと、『緑風荘』の主人が作ったものとを持ってきました」
「先生と一緒に?」
「ええ。飲み物もありますよ」
「なら、いいよ。エメロードもいいよね」
その声に反応した様にゴボリと水槽の中から音がした。
『今そちらに行くわ』
人の声にしては少しエコーがかった声が返事をする。それは目の前の水槽から大きなパイプを通って地下室の中にある浅い水槽へと移動して来る。
「君らも遠慮する事はなかったのですが」
校長が机に重箱と紙袋を置いた。紙袋からは飲み物のペットボトルと割り箸を取り出す。
「僕らの事は気にしないで。遠慮してるわけじゃないから」
「新しい先生も紹介したかったのでね」
鴫原校長がそう言うと、黒羽はふん、と馬鹿にした様に鼻を鳴らした。
「僕は人間の先生なんて信用しないよ。αクラスの奴らと同じで、どうせ僕らを化け物の様に扱うに決まってる」
つづく
例の如く、気配を消すのはお手の物だ。
校長は迷う様子もなく、廊下を進み、階段の前に来た。上に上がるのかと思いきや、彼はその脇にある鉄製のドアを引いた。
ゴゴン……。
重いドアが動く鈍い音がして、そこに地下へと向かう階段が現れる。
校長はそこを降りていった。
篠宮もその入り口まで忍び寄ると、ひょいと覗き込んでみる。
湿気——水の匂いが篠宮の鼻に届いて来た。嫌な匂いではない。清潔な水の香りだ。
薄暗い階段が彼の恐怖心を刺激したが、好奇心に負けて、篠宮は地下へと足を踏み出した。
「黒羽君、調子はどうですか?」
鴫原校長は目の前にいる生徒たちに声をかけた。本当なら一緒に花見をしたかったのだが、「行きたくない」と頑なに断られたのだった。
「僕は別に」
長い前髪で片目を隠したショートカットの子は、その見えている片目でチラリと校長を見たが、すぐにそっぽを向いてしまった。
細い指で胸元のリボンタイを弄びながら、目の前の巨大な水槽を眺めている。
校長は近くの机の上に持って来た重箱を置いた。
「良かったら一緒に食べませんか? 私の妻が作ったものと、『緑風荘』の主人が作ったものとを持ってきました」
「先生と一緒に?」
「ええ。飲み物もありますよ」
「なら、いいよ。エメロードもいいよね」
その声に反応した様にゴボリと水槽の中から音がした。
『今そちらに行くわ』
人の声にしては少しエコーがかった声が返事をする。それは目の前の水槽から大きなパイプを通って地下室の中にある浅い水槽へと移動して来る。
「君らも遠慮する事はなかったのですが」
校長が机に重箱と紙袋を置いた。紙袋からは飲み物のペットボトルと割り箸を取り出す。
「僕らの事は気にしないで。遠慮してるわけじゃないから」
「新しい先生も紹介したかったのでね」
鴫原校長がそう言うと、黒羽はふん、と馬鹿にした様に鼻を鳴らした。
「僕は人間の先生なんて信用しないよ。αクラスの奴らと同じで、どうせ僕らを化け物の様に扱うに決まってる」
つづく
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