41 / 98
第41話 それぞれの朝
しおりを挟む須王サクラは後悔していた。
起床してからずっと頭が痛いのだ。
今日が休みで良かった——。
彼女が勤務する学校も、世間にならって土日祝日は休みである。ちなみに昨日は初めて花見とやらを行った。
なかなかに楽しいものであったが、途中から記憶がない。誰かと何か約束をしたような気がするが、全く思い出せないのだ。
それよりも頭痛だ。
仕方ない。何かあればスタッフィーに連絡が来るだろう。
サクラはもう一眠りする事にした。
徳田六花は浮かれていた。
昨日のお花見というものを体験してからなんだかふわふわした気持ちであるのだ。
一人早く目覚めてしまい、布団の中で昨日の出来事を反芻する。
ユニ君の名前がわかった。
ユニ君にお礼を言えた。
ユニ君に自分の事を知ってもらえた。
ユニ君と食事した。
ユニ君に手作りのパウンドケーキを食べてもらえた。
ユニ君に食べてもらえるなら、もっとドライフルーツをたくさん入れたり、ナッツを入れても良かったかな。
今度作るなら——。
そこまで考えてから、彼の連絡先を聞くのを忘れていたと思い当たる。
思い切ってスタッフィーを送ってみようか?
でもαの私の事、本音では嫌がってたらどうしよう?
昨日は嫌々話を合わせてくれただけだったらどうしよう?
六花は浮き上がった気持ちを無理やり押さえつけた。
鬼丸はすでに起きていた。
彼は自分がβの後輩らを守らねばならぬと決めた時から、生活習慣を守っている。それが一番、自分の能力を使いこなすコツなのだ。
朝食を作りに家庭科室へ向かうと、すでにレディが来ていた。調理も半ば終わっている。
「おはよう。昨日は面白かったわね」
「悪いな、任せちまって」
鬼丸は所在なさげに近くの椅子に座った。鬼丸の重量に椅子が軋んだが、いつものことだ。此処の椅子はよく壊れる。
「楽しくなかったの? あの女の醜態も見れたのに」
レディは手早くボールの中の玉子をかき混ぜる。すぐ横ではフライパンが熱くなっていた。
「……」
「意外と仲良くしてたじゃない。いつから?」
「何も変わらねぇよ」
レディは無言で玉子をフライパンに流し込んだ。
篠宮ツカサは張り切って早起きした。いつもなら遅くまで布団に潜っている土曜日だが、今日は違うのだ。
「ふふふ……」
ニヤケが止まらない。
スキップで旅館の洗面所に行くと身支度を整える。髪に櫛を通して髪型をキメる。悪くないんじゃない?
再びスキップで部屋に戻ると、服を選ぶ。少ないワードローブの中から、いくらか見栄えの良い物を選ぶ。
いつもと違いすぎず、かついつもと違う雰囲気を出さねば印象に残らない。
服を決めると篠宮は鼻歌を歌いながら、一階の食堂へと向かった。
つづく
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語
ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。
だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。
それで終わるはずだった――なのに。
ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。
さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。
そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。
由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。
一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。
そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。
罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。
ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。
そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。
これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる