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第52話 話し好きな篠宮
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そして約束の月曜日——。
の、放課後。
放課後とはいうものの、篠宮はまだ授業らしきものをしていない。αクラスは何やら彼の理解の及ばぬ研究をしているし、βクラスに行ってみれば教室には誰もいなかった。
「誰もいないってどういう事ですか!?」
サクラに愚痴りながら、二人は校舎外の購買部に向かう。
「仮にも学校でしょう? サクラさん、わかりますか? ドアを、ドアをガラッと開けたら誰もいないんですよ!」
「βクラスは一年生の授業だったな。カグラにカナエ、それとエメロードか。おそらくエメロードの水槽の所にでもいたのでは無いか?」
「そ、それなら早くに教えて下さいよぅ。俺はどこでだって授業しちゃいますよ!」
鬱陶しい。
サクラは今日の篠宮をそう評した。
αクラスの授業がなくなったのは、今やっている研究が佳境に入ったからだ。
それを説明した時もぎゃあぎゃあ喚いていた。大体彼はおしゃべりだ。黙っている事はないのだろうか?
「篠宮、お前、黙っている時はあるのか?」
「へ? そりゃありますよ。部屋で一人の時とか」
「ふむ。他人といる時は——」
「うーん、大抵話をしちゃうかな。なんか沈黙が怖いんで」
「怖い?」
篠宮は自分が母子家庭で育った事をサクラに告げた。
「その時の癖ですかね。母親が仕事から帰って来たら、ずっと喋ってた覚えがあるんですよ——」
母が、いつか目の前から消えてしまう気がして。
篠宮はその言葉を飲み込んだ。
その思いは本当であるが、この歳になって母親の話をするのは気が引けた。
サクラはそれには気づかず、
「お前、母子家庭って……父親は何してた?」
「いや、まあ、そのいろいろあるじゃないですか。おっ、あの建物が購買部ですね!」
言葉を濁した篠宮が指さしたのは小さな四角い建物だった。
プールの近くにあるので、更衣室かと思うほどの小ささだ。
庇が出ていてその下にカウンターと窓がある。普段はここから品物を買うのだろう。しかし今は窓の中でカーテンが閉じられていた。
「閉まってますね」
「放課後だからな。それに学生数も少ないから、すぐに閉じるんだ」
それで儲けが出るのだろうか、と篠宮が思ったが、亜人の皆《み》んなが普段買えない物を調達して来て売るのなら、需要はあるだろう。
「こっちだ」
サクラはカウンターの脇にあるドアを示した。どうやら篠宮に開けろと言っているらしい。
篠宮はそのドアの前に立った。
つづく
の、放課後。
放課後とはいうものの、篠宮はまだ授業らしきものをしていない。αクラスは何やら彼の理解の及ばぬ研究をしているし、βクラスに行ってみれば教室には誰もいなかった。
「誰もいないってどういう事ですか!?」
サクラに愚痴りながら、二人は校舎外の購買部に向かう。
「仮にも学校でしょう? サクラさん、わかりますか? ドアを、ドアをガラッと開けたら誰もいないんですよ!」
「βクラスは一年生の授業だったな。カグラにカナエ、それとエメロードか。おそらくエメロードの水槽の所にでもいたのでは無いか?」
「そ、それなら早くに教えて下さいよぅ。俺はどこでだって授業しちゃいますよ!」
鬱陶しい。
サクラは今日の篠宮をそう評した。
αクラスの授業がなくなったのは、今やっている研究が佳境に入ったからだ。
それを説明した時もぎゃあぎゃあ喚いていた。大体彼はおしゃべりだ。黙っている事はないのだろうか?
「篠宮、お前、黙っている時はあるのか?」
「へ? そりゃありますよ。部屋で一人の時とか」
「ふむ。他人といる時は——」
「うーん、大抵話をしちゃうかな。なんか沈黙が怖いんで」
「怖い?」
篠宮は自分が母子家庭で育った事をサクラに告げた。
「その時の癖ですかね。母親が仕事から帰って来たら、ずっと喋ってた覚えがあるんですよ——」
母が、いつか目の前から消えてしまう気がして。
篠宮はその言葉を飲み込んだ。
その思いは本当であるが、この歳になって母親の話をするのは気が引けた。
サクラはそれには気づかず、
「お前、母子家庭って……父親は何してた?」
「いや、まあ、そのいろいろあるじゃないですか。おっ、あの建物が購買部ですね!」
言葉を濁した篠宮が指さしたのは小さな四角い建物だった。
プールの近くにあるので、更衣室かと思うほどの小ささだ。
庇が出ていてその下にカウンターと窓がある。普段はここから品物を買うのだろう。しかし今は窓の中でカーテンが閉じられていた。
「閉まってますね」
「放課後だからな。それに学生数も少ないから、すぐに閉じるんだ」
それで儲けが出るのだろうか、と篠宮が思ったが、亜人の皆《み》んなが普段買えない物を調達して来て売るのなら、需要はあるだろう。
「こっちだ」
サクラはカウンターの脇にあるドアを示した。どうやら篠宮に開けろと言っているらしい。
篠宮はそのドアの前に立った。
つづく
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