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第67話 試験管の中身
しおりを挟む手を引かれて大きなガラスの筒に近づくと、中は何かの液体で満たされているのがわかった。少量の泡が時折浮かび上がる。
そしてその中央に——。
胎児が浮かんでいた。
「ゔぁッ!?」
「シーッ、しずかにするの!」
「ごめん……」
篠宮とて本物の胎児を見た事があるわけではなかったが、一目で認識できる。教科書などで見る写真と相違ない、ヒトの児だ。
臍の緒の代わりなのか、上からコードのようなケーブルが伸びて、胎児のお腹に付いている。
彼らは頭を下にして浮いていた。
ヒトの形だが、まだ赤子の姿には遠く、薄い皮膚を通して血管が透けて見えた。
それを目にした篠宮は胃の中から何かが迫り上がってくる感覚に襲われる。
「うぇぇッ——」
幸い、吐きはしなかった。えづいただけのようだ。
手を取る幼女がこちらを見ていた。
——何がおかしいの?
そんな目だ。
篠宮は涙目になりながら、他の試験管にも目をやった。
六本ある。
その全てに同じような胎児が浮かんでいた。
「ごめん、戻ろう」
篠宮の言葉に、幼女はきょとんとして見つめ返した。
「せっかく、しょうかいしようとおもったのにー」
「うん、そ、そうだね。あの、もう少し離れたところで、教えてよ」
一方、篠宮を追いかけもしないサクラはゆっくりと、部屋を出た。とりあえず白衣を脱いで、篠宮が持っていたシリンダーを丁寧に包んで、胸に抱いている。
コレに損傷が無いのが救いか……?
抱いたシリンダーからは白衣を通して冷たさが伝わってくる。サクラの記憶の奥底に、あの古いスパコンがある。
あの部屋は見た事がある。
それも昔——。
もしもコレが奇跡的に作動したのだとしたらここは十八年前の——。
「あッ!」
サクラは何気なく窓の外を見下ろして驚きの声を上げた。一人の白衣の青年が歩いていた。
「浅木博士……!?」
つづく
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