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第88話 プール開き
しおりを挟む八月も手前になると、春の遅いアオバヤマ町でも流石に暑くなる。篠宮達が掃除したプールにも水が張られ、いつでも入れそうだ。
「プールの授業ってまだですかね?」
いまいちクーラーの効きが弱い職員室で、篠宮は首まわりの汗を拭きながら聞いてみた。ちょうどサクラは席を外していたので、鴫原校長への質問となった。
サクラがいたら何を言われるかわかったものではない。篠宮は純粋にプールで泳ぎたいだけなのだ。それなのに生徒の水着姿を見るつもりだろうとか、お前に見せる水着は無いとか言われるに違いない。
校長は至極穏やかにタブレットの授業カリキュラムの時間割を開いて、水泳の授業開始を確かめてくれる。
「ほう、明後日に始まりますね」
「えっ、明後日?」
思ったより早くて嬉しいが、心の準備が出来ていない。いや、もう準備OKで良い。篠宮は急激にテンションが上がって来た。
「ふ、ふふふ……」
ダメだニヤける。
サクラさんは「担当授業ではないから」と言って、プールには来ないだろう。とても残念だが、監視の目がなくなると思えば良い。
「篠宮君は、泳ぎが得意なんですか?」
「へっ? いや、普通——よりは泳げますかね」
篠宮家では幼少の頃からスイミングスクールに通う決まりになっていた。ある程度己の身を守るように色々な習い事をさせられたが、スイミングは長く続いた方だ。インストラクターが若い女性だったからだろうか。
「ほほう、では篠宮君も水泳の授業に参加しますか? 体育の教員免許はないですが、ま、このような学校ですから」
篠宮はうっかりしていた。体育の教員免許がないくせに参加するつもりだったからだ。鴫原校長はそんな篠宮には気付かず、例の如く英国紳士な口髭を整えながら、タブレットをいじっている。
「教員というよりサポーターという位置付けでどうでしょうか?」
「喜んで!!」
「では、登録しておきますね」
やった!
これで堂々と授業に参加できる!
——プール開き当日。
晴天。
田舎町の空は広くどこまでも青い。気温も高く、まさにプール日和。
冷たい水が跳ね上がり、太陽の光に煌く。みんなある程度は泳げるようで、ほぼ水遊びの様相を呈していた。それもそのはず、広いプールに対して人数が少ないからだ。
カグラが持ち込んだビーチボールが篠宮の足元に転がって来た。
「先生、いい加減諦めてプールに入ってはどうか?」
黒狼の人狼・ウォルフもカグラに同意する。
「いつまで暗くなっているんだよ? 早く遊ぼうぜ」
そう、篠宮は天気とは裏腹に一人黒雲を背負い、プールサイドで膝を抱えていた。
なぜなら——男子の授業担当だったからである。
つづく
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