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第97話 行け! エメロード!
しおりを挟むおぼつかない足取りのウォルフを追って、リリと篠宮は階段を上り、旧校舎の廊下に出た。
ウォルフはそのまま歩いて行くが、リリは途中のロッカーからしっかりとした生地の日傘と黒いレインコートを取り出した。サッとなれた様子でそれを身に付けると、リリは黒い日傘を手に外へ出た。
夏本番とはいかない空だが、それなりに日差しはある。それを日傘で遮りながら、彼女は歩いて行く。
校舎を出ると、プールの手前にエメロードを肩に乗せた鬼丸が見えた。リリはそれを目にすると、躊躇いなく駆け出した。
「あっ、リリちゃん!」
篠宮はウォルフを追い越して走るリリに慌てた。このままではすぐに鬼丸達に追い付くだろう。
「鬼丸君! リリちゃんが行ったよ!」
篠宮は叫んで鬼丸に知らせるしかない。少しだけ振り向いたリリに睨まれたのは気のせいではないだろう。「余計な事を」と紅い瞳が語っていた。
鬼丸は篠宮の警告を耳にすると、同じく走り出した。
「鬼丸先生、待てッ!」
リリの叫びをも耳にしながら、鬼丸はエメロードを両手で担ぎ上げた。
「エメロード、行けるな?」
『お任せします』
プールまでは十数メートルある。しかもフェンスが鬼丸達とプールとの間にある。
鬼丸は両腕に力を込めた。
まさか!
篠宮とリリ目を疑った。
リリは日傘を投げ捨てて走り寄り、鬼丸の身体に体当たりした。
しかしリリの体格では鬼丸にはさほどの影響はない。鬼丸はそのままエメロードを空高く放り投げた。
綺麗な放物線を描いて——水音高く、エメロードはついにプールへとたどり着いた。
「エメロード……」
茫然とするリリに篠宮は後ろから日傘を差し出す。
「あの、ほら……なんていうか、リリちゃんも見学なら出来るんだろ? エメロードちゃんの泳ぎを見て行こうよ」
リリは篠宮から日傘を引ったくると、憤懣やるかたない顔で睨んで来た。
そこへ——。
『リリ!』
と楽しげな声と高く跳ね上がるエメロードの姿。力いっぱい泳いでいるのだろう。陽の光を受けて、エメラルド色に輝く鱗と白い肌を目にして、リリは諦めた様にプールへと向かう。
「ほら、楽しそうじゃん」
「……どうなっても知らないからな」
リリの捨て台詞に、篠宮と鬼丸は顔を見合わせたが、その意味はわからなかった。
つづく
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