ラッキーアイテムはオオカミさん

神凪凛薇

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 数日後、純花は講義を受けようと、講堂に入った。席を探してきょろきょろしながら前の方へと歩いていく。その途中、くいっと服の裾を引かれて視線を落とすと、そのまま顎を落とした。ぽかんと口を開けたままフリーズした彼女にその元凶は、してやったりと笑みを浮かべた。

 「な、な、な、な、な、な」

 わななく指をむけ、純花は絶叫する。

 「何で居るんですかぁ⁈」

 その指の先で大上はニヤリと笑った。





 突然響いた絶叫に講堂内が静まり返る。羞恥に顔を赤らめオロオロする純花を大上は強引に隣に座らせた。チラチラとこちらを見ながらも再びざわつきだす中、純花は真っ赤になって硬直していた。大上は一周回って逆に感心したようだ。

 「よく叫ぶな、お前」
 「誰のせいだと思ってるんですか!!」

 涙目になって小声で叫ぶという、器用な事をさらりとやってのける純花。しれっとした顔で大上は言う。

 「さあ。俺は何もしてねぇけど?」
 「な、う、あ」

 口をパクパクさせる。意味をなさない言葉しか出てこない。すーはー、と深呼吸した純花。隣でニヤニヤしている大上を上目遣いに睨む。

 「どうしているんですか⁈」

 身長の関係でどうしても上目遣いになる純花を見て一瞬動揺した大上だったが、純花に気付かれる前に持ち直しポケットから出したものを突き付ける。

 「これ、なーんだ?」

 首を傾げた純花。見た瞬間に再びフリーズした。最早、意味をなさない声すらも出無い様だ。

 「俺、一応、ここの学生」


 純花に突き付けられていたのは、大上の学生証。

 それも、同じ大学の。

 「えええええええええ⁈」

 再び純花の絶叫がこだました。






 大上が大学に復帰した。それすなわち二人が一緒に居る時間が増えたという事で。キャンパスのあちらこちらで二人の目撃情報が寄せられる。今日はその中の一日であり、そうでもない日だった。

 「うううううううう」

 唸り声をあげてとぼとぼと歩く純花。耳と尻尾が元気なく垂れているのが目に浮かぶようだ。その隣には悠然と歩く男が一人。

 「いい加減唸るのを止めたらどうだ?」
 「か、神様は不公平なのです!!どうしてそこまで頭が良いのですか⁈勉強しているようには全く見えないのです!!」
 「ほぉ?何気なく俺をディスるか。良い度胸だな?」
 「みゅう…」

 キャンキャンと食って掛かるが、にこやかな大上の笑顔に撃沈する純花。哀愁漂うその背を大上は笑いをかみ殺して見つめる。

 そもそも純花がこうなったのにはちょっとした理由がある。何気なく、授業のここが分からないのだ、と言う話をしたところ、大上があっさり疑問を解決したのだ。

 単なる愚痴であったはずの言葉に答えを返され、驚く純花。そのまま色々な質問をしたが、大上はすべてに危なげなく答えていく。そうなると意地になってくるのが純花である。ムキになって色々な質問を投げかけるのだが、大上に答えられないものはなく。

 結局、楽し気に全てに答えきった大上に純花は撃沈した。

 その時の純花の様子を思い出して笑いがこみあげてきた大上だったが、ふと周りを見回す。最近ようやく見慣れてきた学校帰りの道は、何か変わった様子はない。それに、大上が感じたものは違和感ではなく。

 「視線…?」
 「大上さん?」

 不思議そうにあたりを見回す大上の元に純花がとことこと戻ってくる。少し先を歩いていたのだが、大上が立ち止まっているのを見つけ戻ってきたようだ。小首をかしげて見上げてくる純花の頭を少し乱暴に撫でる。

 「ふきゃ⁈」

 いきなり頭をぐしゃぐしゃにされた純花が悲鳴を上げる。慌ててその手の下から脱出すると、何するんですかっ!と涙目で睨む。本人は必死でも、傍から見てる分には全く効果のない威嚇に大上はクックッと笑う。

 「何でもない。行くぞ」

 それだけ言ってさっさと歩き出す。後ろから文句を言いつつ純花が追ってくるのを感じながら、大上は先程の事を気のせいだと結論付けた。







 少し離れた所で人影が一つ、そっと身を翻していった。
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