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087『オートマ体変更の理由とヒント』
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銀河太平記
087『オートマ体変更の理由とヒント』 本多兵二
昭和のむかし、天気予報の的中率は64%ほどだったらしい。
実は、晴れの確率も64%なので、毎日「明日の天気は晴れです」と言っていれば64%の確率で当たる。
なにも、わざわざお金と資材と人員を使って予報しなくてもいいわけで、気象庁無用論を唱える人も居たらしい。
じっさい気象庁の運動会に雨が降ることがあったらしいから、そんなものだろう。
23世紀の今日、天気予報は100%の的中率を誇る。
しかし、地震予知の確率は昭和の時代とさほど変わらない。
「ここ50年間には、かならず、この地方に地震が起こります」という程度にしか予測ができない。それは、過去の歴史から地震の記録を見て、その周期を予測するのと変わりがない。
言ってみれば、それほどに地球の内部は複雑なのだ。素通しの大気を観察するようなわけにはいかない。
だから、島民みんなが驚き、かつ喜んだ。
何に驚き、何を喜んだかというと、A鉱区の第四層で、巨大なパルス鉱脈が発見されたのだ。
A鉱区は、大規模な落盤事故があって、多くの犠牲者を出したばかりだ。
ナバホ村とフートンからの援助があって、復旧作業と採掘作業が並行して行われた結果だ。
僕も、フートンから派遣されたお助け隊の一員なので、ちょっと嬉しい。
「もっと喜んでもいいのよ」
「じゅうぶん喜んでる」
「ううん……薄いのよ、喜び方っていうか、感情表現が。ごらんなさいよ、シゲさんとか、おたくのサブちゃんとか、もう全身で喜びを表現してるじゃない」
「じゃあ、メグミも、ああ云うふうに喜んでみればいい」
「アハハ、冗談言わないでよ、女子が、あんな格好できるもんですか!」
ウワアアアアアアアア! アハハハハ!
鉱脈発見の島を挙げての宴会の間最中。
火を囲んだ島民から歓声と笑いが巻き起こる。
シゲさんとサブが、酒の勢いで始めた剣舞が、いつの間にか、やけくその裸踊りになってきた。
二人とも両手にトレーを持って、器用に過激に踊って喝さいを浴びている。
「おう、メグミ!」
「え、あたしに振らないでよ!」
「そこの、アイスクリームのコーンを投げてくれ!」
サブが、トレーで招くようにして催促する。
「これでいいの?」
「おう」
「いくよ、えい!」
食堂特製のコーンは、少し重量があって、きれいな放物線を描いてサブの頭上に落ちていく。
「よし……止し……どうだ!」
サブはファールフライを追うようにして、落下してきたコーンを体とトレーの間に落とし込んだ。
次の瞬間「ハイ!」の掛け声と共にトレーをどけると、さっきの倍以上の歓声と笑いが起こる。
「どうだ!」
コーンは、マタグラの凸部にきれいにかぶさっている。
ウワアアアアアアアア! アハハハハ!
「ちょ、なに、この下品さ!」
「いやいや、まだ終わりじゃないようだ」
今度はシゲさんが、お岩さんに催促している。
「ほら、シゲ、あんたは、これだ!」
お岩さんが投げたのは……食堂で「セルフサービス!」とか「ちゃんと列に並んで!」とか言う時のためのメガホンだ。
スポ!
シゲさんは、口で擬音を発しながら、サブと同様にしてキャッチした!
「どうだ!」
ウオオオオオオオ! ワハハハハ!
いやはや……なんとも……見ているだけで恥ずかしい(#^_^#)
「もお、島の男ども、サイテー!」
サブとシゲさんの芸に腹を立てたメグミだけども、数日後、これに勝るとも劣らない任務を果たした。
「社長」
「おお、出来ましたか!?」
「あ……いえ、まだプランの段階なんですが、このやり方しかアレンジのしようがなくて」
「どれどれ……フムフム……なるほど、いいアイデアだと思うよ」
「ですかぁ?」
「ハイ(^▽^)」
タブレットで見せたアイデアは、あっさりと社長のOKが出てしまった。
じつは、鉱脈の詳しい探査をしなければならなくなった。
予備調査で分かったのは、鉱脈のおおよその分布だけだ。
詳しい調査をしなければ、採掘の計画も立てられないので、調査人員を向かわせなければならない。
大事故から間がないこともあり、人にしろロボットにしろ、危険な任務には就かせられない。
そこで白羽の矢が立ったのがパチパチたちだ。
オートマ体が、機能的のもサイズ的にもピッタリなのだ。
作業機械なので、ロボットのようにパルスCPへの影響も考えずに済む。
落盤事故で、被災者の救助はできなかったものの、発見や初期対応には、いい成果を残している。
問題は、広範囲にわたる鉱脈の構造をサーチする機能だ。オートマ体のそれは地中においてはたかだか10メートルほどの探査機能しか付いていない。最低でも1000メートルの探査能力がなくては役に立たない。
しかし、それを可能とする地中ソナーはテニスボールほどの大きさがあり、3D的探査をやるには、二個のソナーを12センチの間隔で並列に並べなければならない。十歳児ほどの体格でしかないオートマ体には、格納するスペースが無い。
ということで、体の前方、正中線を跨いだ中央部。胸につけざるを得ない。
「ということで、君たちのオートマ体は女性型に変更!」
三体のオートマ体は、立派な女性型に変更されることになった。
この件については、島中の意見を二分してしまうことになった……。
※ この章の主な登場人物
大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
カサギ 扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ
グノーシス侵略 百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略
扶桑通信 修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信
西ノ島 硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地
087『オートマ体変更の理由とヒント』 本多兵二
昭和のむかし、天気予報の的中率は64%ほどだったらしい。
実は、晴れの確率も64%なので、毎日「明日の天気は晴れです」と言っていれば64%の確率で当たる。
なにも、わざわざお金と資材と人員を使って予報しなくてもいいわけで、気象庁無用論を唱える人も居たらしい。
じっさい気象庁の運動会に雨が降ることがあったらしいから、そんなものだろう。
23世紀の今日、天気予報は100%の的中率を誇る。
しかし、地震予知の確率は昭和の時代とさほど変わらない。
「ここ50年間には、かならず、この地方に地震が起こります」という程度にしか予測ができない。それは、過去の歴史から地震の記録を見て、その周期を予測するのと変わりがない。
言ってみれば、それほどに地球の内部は複雑なのだ。素通しの大気を観察するようなわけにはいかない。
だから、島民みんなが驚き、かつ喜んだ。
何に驚き、何を喜んだかというと、A鉱区の第四層で、巨大なパルス鉱脈が発見されたのだ。
A鉱区は、大規模な落盤事故があって、多くの犠牲者を出したばかりだ。
ナバホ村とフートンからの援助があって、復旧作業と採掘作業が並行して行われた結果だ。
僕も、フートンから派遣されたお助け隊の一員なので、ちょっと嬉しい。
「もっと喜んでもいいのよ」
「じゅうぶん喜んでる」
「ううん……薄いのよ、喜び方っていうか、感情表現が。ごらんなさいよ、シゲさんとか、おたくのサブちゃんとか、もう全身で喜びを表現してるじゃない」
「じゃあ、メグミも、ああ云うふうに喜んでみればいい」
「アハハ、冗談言わないでよ、女子が、あんな格好できるもんですか!」
ウワアアアアアアアア! アハハハハ!
鉱脈発見の島を挙げての宴会の間最中。
火を囲んだ島民から歓声と笑いが巻き起こる。
シゲさんとサブが、酒の勢いで始めた剣舞が、いつの間にか、やけくその裸踊りになってきた。
二人とも両手にトレーを持って、器用に過激に踊って喝さいを浴びている。
「おう、メグミ!」
「え、あたしに振らないでよ!」
「そこの、アイスクリームのコーンを投げてくれ!」
サブが、トレーで招くようにして催促する。
「これでいいの?」
「おう」
「いくよ、えい!」
食堂特製のコーンは、少し重量があって、きれいな放物線を描いてサブの頭上に落ちていく。
「よし……止し……どうだ!」
サブはファールフライを追うようにして、落下してきたコーンを体とトレーの間に落とし込んだ。
次の瞬間「ハイ!」の掛け声と共にトレーをどけると、さっきの倍以上の歓声と笑いが起こる。
「どうだ!」
コーンは、マタグラの凸部にきれいにかぶさっている。
ウワアアアアアアアア! アハハハハ!
「ちょ、なに、この下品さ!」
「いやいや、まだ終わりじゃないようだ」
今度はシゲさんが、お岩さんに催促している。
「ほら、シゲ、あんたは、これだ!」
お岩さんが投げたのは……食堂で「セルフサービス!」とか「ちゃんと列に並んで!」とか言う時のためのメガホンだ。
スポ!
シゲさんは、口で擬音を発しながら、サブと同様にしてキャッチした!
「どうだ!」
ウオオオオオオオ! ワハハハハ!
いやはや……なんとも……見ているだけで恥ずかしい(#^_^#)
「もお、島の男ども、サイテー!」
サブとシゲさんの芸に腹を立てたメグミだけども、数日後、これに勝るとも劣らない任務を果たした。
「社長」
「おお、出来ましたか!?」
「あ……いえ、まだプランの段階なんですが、このやり方しかアレンジのしようがなくて」
「どれどれ……フムフム……なるほど、いいアイデアだと思うよ」
「ですかぁ?」
「ハイ(^▽^)」
タブレットで見せたアイデアは、あっさりと社長のOKが出てしまった。
じつは、鉱脈の詳しい探査をしなければならなくなった。
予備調査で分かったのは、鉱脈のおおよその分布だけだ。
詳しい調査をしなければ、採掘の計画も立てられないので、調査人員を向かわせなければならない。
大事故から間がないこともあり、人にしろロボットにしろ、危険な任務には就かせられない。
そこで白羽の矢が立ったのがパチパチたちだ。
オートマ体が、機能的のもサイズ的にもピッタリなのだ。
作業機械なので、ロボットのようにパルスCPへの影響も考えずに済む。
落盤事故で、被災者の救助はできなかったものの、発見や初期対応には、いい成果を残している。
問題は、広範囲にわたる鉱脈の構造をサーチする機能だ。オートマ体のそれは地中においてはたかだか10メートルほどの探査機能しか付いていない。最低でも1000メートルの探査能力がなくては役に立たない。
しかし、それを可能とする地中ソナーはテニスボールほどの大きさがあり、3D的探査をやるには、二個のソナーを12センチの間隔で並列に並べなければならない。十歳児ほどの体格でしかないオートマ体には、格納するスペースが無い。
ということで、体の前方、正中線を跨いだ中央部。胸につけざるを得ない。
「ということで、君たちのオートマ体は女性型に変更!」
三体のオートマ体は、立派な女性型に変更されることになった。
この件については、島中の意見を二分してしまうことになった……。
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大石 一 (おおいし いち) 扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い
穴山 彦 (あなやま ひこ) 扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子
緒方 未来(おがた みく) 扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた
平賀 照 (ひらが てる) 扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女
加藤 恵 天狗党のメンバー 緒方未来に擬態して、もとに戻らない
姉崎すみれ(あねざきすみれ) 扶桑第三高校の教師、四人の担任
扶桑 道隆 扶桑幕府将軍
本多 兵二(ほんだ へいじ) 将軍付小姓、彦と中学同窓
胡蝶 小姓頭
児玉元帥 地球に帰還してからは越萌マイ
森ノ宮親王
ヨイチ 児玉元帥の副官
マーク ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)
アルルカン 太陽系一の賞金首
氷室 西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)
村長 西ノ島 ナバホ村村長
主席(周 温雷) 西ノ島 フートンの代表者
※ 事項
扶桑政府 火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる
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