9 / 100
9『コクコク頷くシグマ』
しおりを挟む
泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
9『コクコク頷くシグマ』
だれかにハメられたか!?
そう思いついた時、背後でカサリと人の気配がした。
尻の穴がキュっとなって逃げ出したくなった。
根性無しの俺は、瞬間の妄想で反射的に逃げ腰だ。
「あ、先輩!」
グゥアーーーン!!
声でシグマと知れたが、逃げ腰の勢いで階段室の鉄の扉に思いっきりぶつかってしまった。
「ツーーーーーーーッ!」
「大丈夫ですか!」
顔からぶつかったようで、オデコと鼻がめっぽう痛い。
反射的に押えた手には、ヌルッと生暖かい感触がした。
「あ、先輩!」
シグマは、すぐにハンカチを出して俺の顔にあてがってくれる。
オデコと鼻は痛いんだけど、至近距離に寄って来たシグマからは、ソープだかシャンプーだかのいい匂いがする。
こういう匂いは妹の小菊もするんだけど、絶対的に違う。
うまく言えないけど、小菊のは臭いで、シグマは匂いだ。
堂本からは不評のΣ口も間近で見ると、心配からだろう小さく開いてなかなか可愛い。なまじ媚びて作った表情じゃないので(なんたって、俺のω口といっしょで、本人にはウィークポイントなんだから)ナチュラルな可愛さを感じてしまう。
分類の仕方によってはアヒル口だな……アルファベット三文字のアイドルグループに、こういうのが居たが評価は極端に分かれていたっけ……なにより本人が嫌いっていうか、表情の活かし方を知らない。
知っていたら、このΣ口は武器になるぞ。最終兵器Σ!とかな……それにシグマの肌は潤いがあって雪のように白く、白の内側からポッと赤みがさしていて、祖父ちゃん言うところの羽二重肌(はぶたえはだ)だ。
先輩?
気づくと、じっくり観察なんかしてしまって、目と鼻の先のシグマの顔にうろたえる。
「あ、すまん(;'∀')」
「ごめんなさい、ビックリさせてしまって……」
「いや、勝手に驚いたのは俺だから」
「あの、こっち来てもらっていいですか? ここだと本館の四階から丸見えなもんで」
アッ!?
そうなんだ、別館は敷地の端っこで、あまり人の目は刺さないが、中庭挟んだ本館からは見えてしまう。
それを考えて、シグマは人目が刺さない階段室の向こう側で待っていたんだ。
「あ、あの……これ、ハワイのお土産です」
シグマは通学カバンからマカダミアナッツチョコの箱を出して差し出した。
「あ、いいのに、観光じゃないんだし。あ、お祖母ちゃんどうだった?」
「着いたら、もうピンピンしてました。心臓の発作で、周囲の人たちがビックリして日本まで電話してきたみたいで、でも、お祖母ちゃん喜んでたし、お祖母ちゃん孝行できて結果オーライだったと……いや、先輩にはつまんない用事頼んでしまって、すみませんでした」
ペコリと頭を下げるシグマ。
「そうだ、これ約束の……」
気を使って単に「これ」とだけ言ったが、シグマは一瞬で顔が真っ赤になった。
「あ、ありがとうございました(*≧o≦*)!」
それだけ言うと、ふんだくるようにしてゲームの入った袋をとって階段室に飛び込んだ。
「あ、あの!」
呼び止めると、俺は階段の上、シグマは踊り場という構図になった。
「は、はひ(;'∀')」
まるで警察の職質にあったみたいに、シグマは振り返った。
「えと、ハンカチ」
差し出したハンカチは鼻血で染まっていた。
「あ、洗ってから……いや、新しいの買って返すよ」
「あ、いいんです、そんなハンカチ(#'∀'#)」
クルリと向き直って階段を下りようとする。
「じゃ、なくって! えと……そのゲームコンプリートしたら、貸してもらえないかな!」
シグマに恥ずかしい思いをさせちゃいけないのとノリスケの言葉がごっちゃになって口走ってしまった。
「え!? え、え、えと、えと……」
突然の申し出に頭も口も付いてこないシグマ。
「連絡とかしたいから、番号の交換とか……」
そう言うと、目を白黒させながらコクコクと頷くシグマだった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一(オメガ) 高校二年
百地 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
ノリスケ 高校二年 雄一の数少ない友だち
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
9『コクコク頷くシグマ』
だれかにハメられたか!?
そう思いついた時、背後でカサリと人の気配がした。
尻の穴がキュっとなって逃げ出したくなった。
根性無しの俺は、瞬間の妄想で反射的に逃げ腰だ。
「あ、先輩!」
グゥアーーーン!!
声でシグマと知れたが、逃げ腰の勢いで階段室の鉄の扉に思いっきりぶつかってしまった。
「ツーーーーーーーッ!」
「大丈夫ですか!」
顔からぶつかったようで、オデコと鼻がめっぽう痛い。
反射的に押えた手には、ヌルッと生暖かい感触がした。
「あ、先輩!」
シグマは、すぐにハンカチを出して俺の顔にあてがってくれる。
オデコと鼻は痛いんだけど、至近距離に寄って来たシグマからは、ソープだかシャンプーだかのいい匂いがする。
こういう匂いは妹の小菊もするんだけど、絶対的に違う。
うまく言えないけど、小菊のは臭いで、シグマは匂いだ。
堂本からは不評のΣ口も間近で見ると、心配からだろう小さく開いてなかなか可愛い。なまじ媚びて作った表情じゃないので(なんたって、俺のω口といっしょで、本人にはウィークポイントなんだから)ナチュラルな可愛さを感じてしまう。
分類の仕方によってはアヒル口だな……アルファベット三文字のアイドルグループに、こういうのが居たが評価は極端に分かれていたっけ……なにより本人が嫌いっていうか、表情の活かし方を知らない。
知っていたら、このΣ口は武器になるぞ。最終兵器Σ!とかな……それにシグマの肌は潤いがあって雪のように白く、白の内側からポッと赤みがさしていて、祖父ちゃん言うところの羽二重肌(はぶたえはだ)だ。
先輩?
気づくと、じっくり観察なんかしてしまって、目と鼻の先のシグマの顔にうろたえる。
「あ、すまん(;'∀')」
「ごめんなさい、ビックリさせてしまって……」
「いや、勝手に驚いたのは俺だから」
「あの、こっち来てもらっていいですか? ここだと本館の四階から丸見えなもんで」
アッ!?
そうなんだ、別館は敷地の端っこで、あまり人の目は刺さないが、中庭挟んだ本館からは見えてしまう。
それを考えて、シグマは人目が刺さない階段室の向こう側で待っていたんだ。
「あ、あの……これ、ハワイのお土産です」
シグマは通学カバンからマカダミアナッツチョコの箱を出して差し出した。
「あ、いいのに、観光じゃないんだし。あ、お祖母ちゃんどうだった?」
「着いたら、もうピンピンしてました。心臓の発作で、周囲の人たちがビックリして日本まで電話してきたみたいで、でも、お祖母ちゃん喜んでたし、お祖母ちゃん孝行できて結果オーライだったと……いや、先輩にはつまんない用事頼んでしまって、すみませんでした」
ペコリと頭を下げるシグマ。
「そうだ、これ約束の……」
気を使って単に「これ」とだけ言ったが、シグマは一瞬で顔が真っ赤になった。
「あ、ありがとうございました(*≧o≦*)!」
それだけ言うと、ふんだくるようにしてゲームの入った袋をとって階段室に飛び込んだ。
「あ、あの!」
呼び止めると、俺は階段の上、シグマは踊り場という構図になった。
「は、はひ(;'∀')」
まるで警察の職質にあったみたいに、シグマは振り返った。
「えと、ハンカチ」
差し出したハンカチは鼻血で染まっていた。
「あ、洗ってから……いや、新しいの買って返すよ」
「あ、いいんです、そんなハンカチ(#'∀'#)」
クルリと向き直って階段を下りようとする。
「じゃ、なくって! えと……そのゲームコンプリートしたら、貸してもらえないかな!」
シグマに恥ずかしい思いをさせちゃいけないのとノリスケの言葉がごっちゃになって口走ってしまった。
「え!? え、え、えと、えと……」
突然の申し出に頭も口も付いてこないシグマ。
「連絡とかしたいから、番号の交換とか……」
そう言うと、目を白黒させながらコクコクと頷くシグマだった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一(オメガ) 高校二年
百地 (シグマ) 高校一年
妻鹿小菊 中三 オメガの妹
ノリスケ 高校二年 雄一の数少ない友だち
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
幼馴染が家出したので、僕と同居生活することになったのだが。
四乃森ゆいな
青春
とある事情で一人暮らしをしている僕──和泉湊はある日、幼馴染でクラスメイト、更には『女神様』と崇められている美少女、真城美桜を拾うことに……?
どうやら何か事情があるらしく、頑なに喋ろうとしない美桜。普段は無愛想で、人との距離感が異常に遠い彼女だが、何故か僕にだけは世話焼きになり……挙句には、
「私と同棲してください!」
「要求が増えてますよ!」
意味のわからない同棲宣言をされてしまう。
とりあえず同居するという形で、居候することになった美桜は、家事から僕の宿題を見たりと、高校生らしい生活をしていくこととなる。
中学生の頃から疎遠気味だったために、空いていた互いの時間が徐々に埋まっていき、お互いに知らない自分を曝け出していく中──女神様は何でもない『日常』を、僕の隣で歩んでいく。
無愛想だけど僕にだけ本性をみせる女神様 × ワケあり陰キャぼっちの幼馴染が送る、半同棲な同居生活ラブコメ。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる