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71『最低の連休』
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泣いてもω(オメガ) 笑ってもΣ(シグマ)
71『最低の連休』小松
最低の連休だよ。
二日の日にわき腹を刺されて、そのまま救急車で入院。
数えて六日目になる。
幸い内蔵には達していなかったので、手術の後はひたすら寝ているだけなんだけど。
笑っても寝返りを打っても痛い(;'∀')。
内臓に達していないとはいえ、左前のわき腹から背中側に駆けて八センチもナイフが刺さったもんで、いまだ、わき腹に異物が刺さったままのような感じがする。
「先生、どうしたんですか!?」
朝の点滴をしにきたドクターを見て驚いた。白衣の前が金魚の柄のように赤く染まっているんだもんね。
「今朝の点滴は失敗してばかりなんだ」
聞くんじゃなかったよ(;'∀')。
この病院では日によっては当番のお医者さんが点滴をしにくる。医師でも看護師さんの不足を補うことは良いことだと思うんだけど、相対的にお医者さんはヘタクソなんだよね。目の前で点滴パックをぶらさげているお医者さんは、その中でもスコブル付のヘタッピーの様子。
「じゃ、いきます……」
点滴の針を構えると、目に見えて先生の緊張が高まる。
なんだかピンチに立った時ののび太に似ているぞーー、こういう時ののび太って、必ず失敗してドラえもんの世話になるんだ。
でも、この病院にドラえもんはいない。
ウグッ!!
腕とお腹じゃ比較にならないかもしれないけど、刺された時よりも数段上の痛みが走る。
「あ……れ? れ? れ? ここに静脈が……」
あるはずの静脈が見つからないのか、針を指したままグリグリやっている。
「ああ、ここだここだ(#'∀'#)」
右手で二度失敗したあげく、左手でやっと成功。するほうもされるほうも額に汗が噴き出している。
「週末に、もう一回来るけど、その時は、もっと上手くなってるからね」
ゲ、もっかいくるのかよ!
針が刺さって五分もすると、左腕全体が痛くなってくる。
先生がヘタクソなせいじゃない。
わたしは血管痛になるのだ。
人より血管が細いのかデリケートなのか、針を刺したところから始まって、しだいに腕全体、放っておくと、肩や首筋まで痛くなってくる。最初はナースコールを押していたけど、三日目からは自分で点滴の速度を落としている。
お昼にはもなかさんがやってくる。
入院した日は泊まり込んでくれたし、あくる日からは昼前にはやってきて食事の世話などをやってくれる。もなかさんは、自分の身代わりに刺されたと思って、まるで自分の責任のように感じている。
無理もないんだけど、かえって気の毒になるよ。
「杉谷さん、先生が呼んでる」
点滴のパックが残り1/3ほどになったときに看護師さんの声が掛かった。
この先生は緊張のび太ではなく、私の主治医。
珍しい女性の外科医。優しい笑顔とは裏腹に、テキパキとしていて「大丈夫、痛いのは治りつつある証拠だから」と、患者を甘やかさない。男性患者には人気があるようなんだけど、わたし的には、まだ一週間なので判断がつかない。
点滴のポールを押しながら診察室へ。
「えーーーと」
レントゲンを見ながら、先生は言葉を繋いだ。
「経過も良好なんで、明日退院してください」
「え、明日ですか!?」
わたしは、点滴のポールをゴロゴロひきながら病棟のフロアを歩くのが精いっぱい。まだ階段を上り下りする勇気も無かった。
「あ、もう点滴も必要ないのよ。連絡いってないのかなあ」
朝の苦行はいったいなんだったんだ!?
「でも、神楽町まで帰る自信ありません。階段とか坂道はちょっと……」
「タクシーで帰ればいいじゃない。荷物はナースに持たせるといいわ」
「でも、帰るのは下宿ですし、せめて静岡の両親が来れるまで」
「病院はホテルじゃないの、治った人には退院してもらわなきゃ、後がつかえてるのよ」
そう言うと、先生はカルテのファイルをパタリと閉じた。問答無用のようだ。
点滴の苦しみから解放されるのと、もなかさんに一安心してもらえるのは嬉しいけども……。
わたしの週明けは、ちょっと割り切れないところから始まった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
鈴木典亮 (ノリスケ) 高校三年 雄一の数少ない友だち
風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
ミリー・ニノミヤ シグマの祖母
ヨッチャン(田島芳子) 雄一の担任
木田さん 二年の時のクラスメート(副委員長)
増田汐(しほ) 小菊のクラスメート
71『最低の連休』小松
最低の連休だよ。
二日の日にわき腹を刺されて、そのまま救急車で入院。
数えて六日目になる。
幸い内蔵には達していなかったので、手術の後はひたすら寝ているだけなんだけど。
笑っても寝返りを打っても痛い(;'∀')。
内臓に達していないとはいえ、左前のわき腹から背中側に駆けて八センチもナイフが刺さったもんで、いまだ、わき腹に異物が刺さったままのような感じがする。
「先生、どうしたんですか!?」
朝の点滴をしにきたドクターを見て驚いた。白衣の前が金魚の柄のように赤く染まっているんだもんね。
「今朝の点滴は失敗してばかりなんだ」
聞くんじゃなかったよ(;'∀')。
この病院では日によっては当番のお医者さんが点滴をしにくる。医師でも看護師さんの不足を補うことは良いことだと思うんだけど、相対的にお医者さんはヘタクソなんだよね。目の前で点滴パックをぶらさげているお医者さんは、その中でもスコブル付のヘタッピーの様子。
「じゃ、いきます……」
点滴の針を構えると、目に見えて先生の緊張が高まる。
なんだかピンチに立った時ののび太に似ているぞーー、こういう時ののび太って、必ず失敗してドラえもんの世話になるんだ。
でも、この病院にドラえもんはいない。
ウグッ!!
腕とお腹じゃ比較にならないかもしれないけど、刺された時よりも数段上の痛みが走る。
「あ……れ? れ? れ? ここに静脈が……」
あるはずの静脈が見つからないのか、針を指したままグリグリやっている。
「ああ、ここだここだ(#'∀'#)」
右手で二度失敗したあげく、左手でやっと成功。するほうもされるほうも額に汗が噴き出している。
「週末に、もう一回来るけど、その時は、もっと上手くなってるからね」
ゲ、もっかいくるのかよ!
針が刺さって五分もすると、左腕全体が痛くなってくる。
先生がヘタクソなせいじゃない。
わたしは血管痛になるのだ。
人より血管が細いのかデリケートなのか、針を刺したところから始まって、しだいに腕全体、放っておくと、肩や首筋まで痛くなってくる。最初はナースコールを押していたけど、三日目からは自分で点滴の速度を落としている。
お昼にはもなかさんがやってくる。
入院した日は泊まり込んでくれたし、あくる日からは昼前にはやってきて食事の世話などをやってくれる。もなかさんは、自分の身代わりに刺されたと思って、まるで自分の責任のように感じている。
無理もないんだけど、かえって気の毒になるよ。
「杉谷さん、先生が呼んでる」
点滴のパックが残り1/3ほどになったときに看護師さんの声が掛かった。
この先生は緊張のび太ではなく、私の主治医。
珍しい女性の外科医。優しい笑顔とは裏腹に、テキパキとしていて「大丈夫、痛いのは治りつつある証拠だから」と、患者を甘やかさない。男性患者には人気があるようなんだけど、わたし的には、まだ一週間なので判断がつかない。
点滴のポールを押しながら診察室へ。
「えーーーと」
レントゲンを見ながら、先生は言葉を繋いだ。
「経過も良好なんで、明日退院してください」
「え、明日ですか!?」
わたしは、点滴のポールをゴロゴロひきながら病棟のフロアを歩くのが精いっぱい。まだ階段を上り下りする勇気も無かった。
「あ、もう点滴も必要ないのよ。連絡いってないのかなあ」
朝の苦行はいったいなんだったんだ!?
「でも、神楽町まで帰る自信ありません。階段とか坂道はちょっと……」
「タクシーで帰ればいいじゃない。荷物はナースに持たせるといいわ」
「でも、帰るのは下宿ですし、せめて静岡の両親が来れるまで」
「病院はホテルじゃないの、治った人には退院してもらわなきゃ、後がつかえてるのよ」
そう言うと、先生はカルテのファイルをパタリと閉じた。問答無用のようだ。
点滴の苦しみから解放されるのと、もなかさんに一安心してもらえるのは嬉しいけども……。
わたしの週明けは、ちょっと割り切れないところから始まった。
☆彡 主な登場人物
妻鹿雄一 (オメガ) 高校三年
百地美子 (シグマ) 高校二年
妻鹿小菊 高校一年 オメガの妹
妻鹿幸一 祖父
妻鹿由紀夫 父
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風信子 高校三年 幼なじみの神社(神楽坂鈿女神社)の娘
柊木小松(ひいらぎこまつ) 大学生 オメガの一歳上の従姉 松ねえ
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