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本編27
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「お前、竜じゃなかったのか! それとも魔法使いか!?」
「僕は竜だよ。一応、竜王だけど、普段はこっちの姿のほうが便利なんだよ」
うるさい男を無視して、奥にある館に戻ろうとする。
「あ、ここ何もないから居ても面白くないよ。女の子だったらお嫁さんになってもらおうと思ったけど、男はお嫁さんになれないから、帰ってくれると嬉しいんだけど」
「王都までどうやって帰ればいいんだ?」
「さあ、知らない。人の足なら一ヶ月くらいって聞いたことがあるよ。あ、この森を抜けたところに辺境の村があるから、そこで訊いたほうが確実かも」
「村の名前は何だ」
「村の名前? そういえば知らなかったな……みんな辺境の村って言ってたよ」
相変わらずそういうところにはいい加減なソーマである。自分が住んでいた村の名前どころか、近隣の村の名称すら知らないでいた。
男はソーマのいい加減さに怒鳴ろうとして、そして黙った。
じろじろと不躾に見つめてくる。
「なんだよ……」
ちゃんと石鹸使って綺麗にしてから出発したし、すぐに帰ってくる羽目になったからそれほど身なりがおかしいことはないはずだ。そりゃ、男に比べて身なりは貧相だが……。
「お前……綺麗だな?」
「はい?」
綺麗とは元来女性に使う形容詞だろう。なんで男が男に使っているんだ。そう言えば、昔ゲオルクも同じことを言っていたが、その頃のソーマには知識がなくスルーしていた。だが今は違う。石板と本でたくさん勉強したのだ、それはやっぱり女性に向かって言うべき言葉だ。
「こう見えても僕、男なんだけど」
そりゃ、目の前のいかにも『漢』という体型の人間からしたら、細くてなかなか太れず無駄に背だけが高くなったソーマは貧相だろうが、それでも女性に間違うはずがない。多分。
成人してからずっと自分の姿を見ることがなかったから、言い切れないのが辛い。水鏡で見ようと思っても、すぐに魚が集まったり、風呂で確認しようとしても勝手に泡風呂にされて確認できなかったりだが。
だが、背だけは高くなっている、はずだ。こんなに背の高い女声などいないだろう(と思いたい)。
そうでなければ、チビで父に似た女顔のまま大人になったら、また結婚が遠のいてしまう。
ソーマは未だに女人との結婚を切望していた。自分が竜王であるにもかかわらず。
「王都で生まれ育ったが、お前ほど美しい人間を見たことはない」
「あーはいはい。だから、男だってば」
もういいだろう、出ていってくれと言わんばかりの対応をしているのに、なぜか勇ましい声の主は引き下がろうとしない。むしろどんどんと近づいてくる。
「ちょっと、なんだよ」
「僕は竜だよ。一応、竜王だけど、普段はこっちの姿のほうが便利なんだよ」
うるさい男を無視して、奥にある館に戻ろうとする。
「あ、ここ何もないから居ても面白くないよ。女の子だったらお嫁さんになってもらおうと思ったけど、男はお嫁さんになれないから、帰ってくれると嬉しいんだけど」
「王都までどうやって帰ればいいんだ?」
「さあ、知らない。人の足なら一ヶ月くらいって聞いたことがあるよ。あ、この森を抜けたところに辺境の村があるから、そこで訊いたほうが確実かも」
「村の名前は何だ」
「村の名前? そういえば知らなかったな……みんな辺境の村って言ってたよ」
相変わらずそういうところにはいい加減なソーマである。自分が住んでいた村の名前どころか、近隣の村の名称すら知らないでいた。
男はソーマのいい加減さに怒鳴ろうとして、そして黙った。
じろじろと不躾に見つめてくる。
「なんだよ……」
ちゃんと石鹸使って綺麗にしてから出発したし、すぐに帰ってくる羽目になったからそれほど身なりがおかしいことはないはずだ。そりゃ、男に比べて身なりは貧相だが……。
「お前……綺麗だな?」
「はい?」
綺麗とは元来女性に使う形容詞だろう。なんで男が男に使っているんだ。そう言えば、昔ゲオルクも同じことを言っていたが、その頃のソーマには知識がなくスルーしていた。だが今は違う。石板と本でたくさん勉強したのだ、それはやっぱり女性に向かって言うべき言葉だ。
「こう見えても僕、男なんだけど」
そりゃ、目の前のいかにも『漢』という体型の人間からしたら、細くてなかなか太れず無駄に背だけが高くなったソーマは貧相だろうが、それでも女性に間違うはずがない。多分。
成人してからずっと自分の姿を見ることがなかったから、言い切れないのが辛い。水鏡で見ようと思っても、すぐに魚が集まったり、風呂で確認しようとしても勝手に泡風呂にされて確認できなかったりだが。
だが、背だけは高くなっている、はずだ。こんなに背の高い女声などいないだろう(と思いたい)。
そうでなければ、チビで父に似た女顔のまま大人になったら、また結婚が遠のいてしまう。
ソーマは未だに女人との結婚を切望していた。自分が竜王であるにもかかわらず。
「王都で生まれ育ったが、お前ほど美しい人間を見たことはない」
「あーはいはい。だから、男だってば」
もういいだろう、出ていってくれと言わんばかりの対応をしているのに、なぜか勇ましい声の主は引き下がろうとしない。むしろどんどんと近づいてくる。
「ちょっと、なんだよ」
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