異世界に転生したら王子と勇者に追いかけられてます

椎名サクラ

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本編77

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「やっと着いた……」

 以前入ることもできなかった王都の門の前で、ソーマは万歳する勢いで両手を上げた。

「やったーーー!」

 ようやくたどり着いた。といっても、夜中に近くまで飛んできて城門が開くのをひたすら待っただけなのだが。それでも山賊にあったり街で迷子になったりと、ソーマにとっては長い旅だった。

「やっぱり夜中に飛んで近くに潜んでれば早かったんだ。今度来るときはもっと計画をちゃんと立てないとダメだな」

 今までの人生(前世含む)で計画的行動などしたことがないソーマは、計画の必要性をひしひしと感じながら、ゆったりと城門をくぐった。そこに広がっていたのは、今まで見たこともない高い建物と、所狭しと並ぶ家々。大通りに面した場所には綺麗な店が立ち並んでいる。

「すごい……」

 これが大都会か。

 辺境の村では考えられないほど人がひしめき合い、石の道を馬車が何台も走っている。屋台では様々な果物や野菜が売られ、一体何を取り扱っているのかもわからないような店も多い。ソーマは始めてみる光景にきょろきょろしながら進んでいった。

 ソーマは宰相宅には向かわず、まずはとちょっといかがわしい場所へと向かった。そう、娼館である。

 山賊からその存在を教えてもらったソーマは、これまた最短で童貞喪失を図ろうと目論んでいる。娼館だったら、童貞喪失なんて簡単だ。ルンルン気分で人に場所を訊ねながら歩き進んでいく。

 場所を聞かれた相手は、ソーマが娼婦になるために行くと思って喜んで教えたとも知らずに。

 そして、いくつもの筋をまがった先に、その建物はあった。

「ここか……」

 ソーマは娼館の扉を開いた。

「すみません、営業してますか?」

 こんな朝っぱらからやってくる客などいるはずもないし、夜通し仕事をしていた娼婦たちが今は短い休息をとっているとも知らないまま、声をかけた。なにせ、二世に渡っての生粋な童貞である。娼館の基本が夜間営業であると知るはずもなかった。

「難題こんな朝っぱらから……」

 出てきたのは皺でどこに目があるのかもわからない老婆だった。しかも、背が低く背中も曲がっている。まるでおとぎ話に出ているような魔女の容姿に、薄暗い館内と相まって恐怖を与えてくる。

 だがここで怯んだら童貞卒業の道は遠のく。

 ソーマは恐怖をぐっと堪えた。

 いつ卒業するの、今でしょ!

 気合を入れ、老婆に話しかけた。

「あの、綺麗でボンギュッボンのお姉さんを一人お願いします! できれば綺麗な人がいいです」

「なんだいあんた、綺麗な顔して男だったのかい……なんだったらここで働くかい。あんたみたいな男好きな顔はいい客付くよ。どうせ男と経験したことあんだろ」

 なんだろう……見えているのかさえ分からない目をしているのに、なぜそんなことまでわかってしまうのだろうか。いや、自分は男が好きなのではない。どちらかと言えば女のほうがずっと好きだ。ただちょっと顔が綺麗とは言われるが、二人の男から言い寄られてやられちゃってはいるが、それでも断然女の子のほうが良い!
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