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本編1
09.醜い傷跡と懺悔03
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「だから……離婚されても……仕方ないんです」
妊娠しないオメガを置いておく意味はない。ただ僅かな夢が見られた樟は幸せだった。優しくしてくれる人がいる。作ったご飯を食べて「美味しい」と言ってくれた人がいる。それだけで充分だ。
耀一郞にメリットが一つもないのが申し訳ないけれど。
だからこの身体を使うのであれば、素直に差し出そうと思っていたのだ。発情期のないオメガでは面白みも半減するだろうが。
「…………離婚したらどうするつもりなんだ」
「実家に……」
帰るしかないかもしれない。いや、それ以外の選択肢が、今はある。父が離婚を知る前に逃げ込めたら、だが。
耀一郞がしゃがんだのが空気の動きでわかった。
(ああ、殴られるんだ)
樟は覚悟を決めた。
(大丈夫、身体を丸めて力を入れて堪えていたら、そのうち終わる)
堪えていればその時間がいつか終わることを、この十余年でしっかりと学んだ。素直に殴られれば、少しだけ早く終わることも。
耀一郞は、殴ってはこなかった。
代わりに痛いほど強く抱き締めてきた。
先程味わった温かさがまた痩身を包み込む。
「ここにいればいい、ずっといればいい」
絞り出すような声が、今にも泣きそうに思えるのはなぜだろう。耀一郞ほどの、アルファほどの強い人が、泣くはずもないのに。
「…………でも、発情しないから子供ができません」
「構わない。子供なんていなくてもいい」
「それではオメガと結婚した意味がありません……」
子供が産めないオメガに価値などないのに、無価値な自分だというのに、逞しい胸に顔を埋めて心が熱くなるのを感じた。大事にされているような錯覚に陥る。
耀一郞はなにも答えなかった。ただ強く抱き締めてくれた。
この胸の中が心地よくて、ずっと閉じ込められたい。
でも腕を回すことは躊躇われた。出来損ないのオメガが調子に乗っていると思われたら――それで怒鳴られたらと思うと勇気が出ない。
さっきと同じようにシャツのウエストを小さく握った。樟の精一杯だった。
トクントクンと跳ねる耀一郞の心音は心地よくて、彼の腕の中で目を閉じた。こんなにも暖かい場所が世界にあるなんて、知らなかった。
(でもいつか出て行かなきゃいけないだ……嫌だな)
その「いつか」が少しでも先の未来であることをひたすら願った。耀一郞に抱き締められたまま、神に祈り続けた。
樟の部屋の扉を閉めた耀一郞は、リビングに戻って散らかったテーブルの上を片付けた。美味しかった料理を、樟はあまり口を付けなかった。啄むように数度口に運んだだけで置き去りになったおかずをどうすればいいのか思い倦ね、今日の記憶を掘り起こしてしまうのではと怖くなって、捨てた。
樟が入院するまで毎日のように続けたというのに、今は罪悪感が湧き起こり躊躇ってしまう。
汚れた皿を食洗機に並べてスイッチを押す。これで勝手に乾燥までしてくれる。
耀一郞はソファにドサリと座り込んで身体を背もたれに預けた。
ぼんやりと掌を見つめる。
(細い身体だった……だというのに、なんて酷い傷跡なんだ……)
見るに堪えないとはあのことだ。正常な肌色を探す方が難しいほどに広範囲にあった痛めつけられた跡。
――俺がここで仕事を始めてから一番酷い虐待の跡だ。
井ノ瀬のあの言葉は大げさでもなんでもなかった。耀一郞ですら一度目にしただけで忘れられないほどに酷かった。その理由がオメガだからというのも信じられずにいる。
(どの口が言うか……オメガだからと軽蔑していたのは私もだ)
樟のことをなにも知らずなにも見ず、オメガだから誰にでも足を開くのだと決めつけていた。けれど彼は違った。押さえつけられ、名も知らぬ「兄の友人」たちの慰みにされていた、自分の意思とは関係なしに。
きっと拒んでは殴られたに違いない。言うことを聞かせるために嬲った結果があの無残な背中だ。
(痛ましかった……だが私にはどうすればいいかがわからない)
このまま切り捨てるのは簡単だ。しかし離婚した途端、今度は涎を垂らし手ぐすねを引いて待つ父に嬲られるのだ。あの男は発情するしないなど気にしないだろう。どれほど嬲っても自分がいなければ生きていけないように相手を毀すのが楽しいのだ。
(私は間違っていたんだ)
抱き締めた感触が未だに残っている。
耀一郞の腕が余るほどに細い身体。ただ抱き締めることしかできなかった。なにも言えなかった。樟もなにも言わなかった。ただ抱き合って、気がつけば細い身体が力を失い凭れかかった。その時初めて樟が眠ったのだと気付いた。
ベッドに運び、下着とパジャマを着せた。成人男性の着替えをするなんて想像もしなかったが、嫌悪感は僅かも生じなかった。耀一郞にすべてを任せた人形のような身体が心配でしょうがなかった。
それにしても酷い跡だ。
「何一つ、あいつのせいじゃないのに……」
報告書の、家政婦が必死に訴えていた項目を思い出した。
『奥様が死んでから樟さんの扱いが酷くなった。食事もまともに与えられなくて、家族の目を盗んで私(家政婦)が食事を自室に持っていかなければ、飢え死にしていただろう』
『長男が友人を家に連れ込んでは樟さんの部屋でひどいことを繰り返していた。いつも悲鳴が聞こえていた』
なによりも酷かったのは、菊池社長の妻の死因だ。
「守りたい……」
思い出す、細い身体を。
同時に怯えて身体を丸め暴力に堪えようとする様を。
ここでは怯えなくていい。不安にならなくていい。
だがどうやってそれを伝えればいいか、耀一郞にはわからなかった。
初めにあれほど酷いことをした自分を、果たして樟は信じてくれるだろうか。
掌で目元を覆い、懺悔の溜め息を吐き出した。
あの頃に戻れるなら、自分をぶん殴ってやりたい。
オメガへの偏見に囚われて樟を見ずに冷たい態度ばかりを取った。酷いことを口にした。彼はなにも悪くないのに……八つ当たりをしたのだ。怖がられて当然のことを散々して、どうして今頃信じろと言えるだろうか。
己の愚かさを悔いても時間は巻き戻らない。
そして耀一郞にはわからなかった、慈しむ方法が――愛する方法が。
冷え切った家で育った耀一郞は両親の愛情を知らないまま大きくなった。
なにせ二人とも家にいなかった。父はずっと愛人の家を渡り歩き、母も恋人と共に住むマンションから帰ってくることはなかった。
ずっと傍にいてくれたのは家政夫をしていた男だけだ。
人として必要な事を教えてくれたのは、あの人だけだった。雇用も関係なく、悪いことをすれば叱り、頑張れば大げさなほど褒めてくれた。誰よりも愛情を注いでくれた存在だ。耀一郞とは十歳しか違わないが、誰よりも信頼を寄せていた。
その人は今、どこでなにをしているのか分からない。
「……美濃部さん、私はどうしたらいいんだ」
宙に向かって懇願を呟く。
「どうやって彼を愛せばいいんだ」
大切にしたい、誰よりも。慈しみたい、なによりも。その方法を持ち得ない自分がもどかしくて苛立ちばかりが湧きあがる。
そう、気付いてしまった。
いつの間にか樟を愛してしまっていることを。
耀一郞はギュッと握り絞めた拳に額を付けた。神に祈る姿に似ているとも気付かないまま、ただ道標を求めて続けた。
妊娠しないオメガを置いておく意味はない。ただ僅かな夢が見られた樟は幸せだった。優しくしてくれる人がいる。作ったご飯を食べて「美味しい」と言ってくれた人がいる。それだけで充分だ。
耀一郞にメリットが一つもないのが申し訳ないけれど。
だからこの身体を使うのであれば、素直に差し出そうと思っていたのだ。発情期のないオメガでは面白みも半減するだろうが。
「…………離婚したらどうするつもりなんだ」
「実家に……」
帰るしかないかもしれない。いや、それ以外の選択肢が、今はある。父が離婚を知る前に逃げ込めたら、だが。
耀一郞がしゃがんだのが空気の動きでわかった。
(ああ、殴られるんだ)
樟は覚悟を決めた。
(大丈夫、身体を丸めて力を入れて堪えていたら、そのうち終わる)
堪えていればその時間がいつか終わることを、この十余年でしっかりと学んだ。素直に殴られれば、少しだけ早く終わることも。
耀一郞は、殴ってはこなかった。
代わりに痛いほど強く抱き締めてきた。
先程味わった温かさがまた痩身を包み込む。
「ここにいればいい、ずっといればいい」
絞り出すような声が、今にも泣きそうに思えるのはなぜだろう。耀一郞ほどの、アルファほどの強い人が、泣くはずもないのに。
「…………でも、発情しないから子供ができません」
「構わない。子供なんていなくてもいい」
「それではオメガと結婚した意味がありません……」
子供が産めないオメガに価値などないのに、無価値な自分だというのに、逞しい胸に顔を埋めて心が熱くなるのを感じた。大事にされているような錯覚に陥る。
耀一郞はなにも答えなかった。ただ強く抱き締めてくれた。
この胸の中が心地よくて、ずっと閉じ込められたい。
でも腕を回すことは躊躇われた。出来損ないのオメガが調子に乗っていると思われたら――それで怒鳴られたらと思うと勇気が出ない。
さっきと同じようにシャツのウエストを小さく握った。樟の精一杯だった。
トクントクンと跳ねる耀一郞の心音は心地よくて、彼の腕の中で目を閉じた。こんなにも暖かい場所が世界にあるなんて、知らなかった。
(でもいつか出て行かなきゃいけないだ……嫌だな)
その「いつか」が少しでも先の未来であることをひたすら願った。耀一郞に抱き締められたまま、神に祈り続けた。
樟の部屋の扉を閉めた耀一郞は、リビングに戻って散らかったテーブルの上を片付けた。美味しかった料理を、樟はあまり口を付けなかった。啄むように数度口に運んだだけで置き去りになったおかずをどうすればいいのか思い倦ね、今日の記憶を掘り起こしてしまうのではと怖くなって、捨てた。
樟が入院するまで毎日のように続けたというのに、今は罪悪感が湧き起こり躊躇ってしまう。
汚れた皿を食洗機に並べてスイッチを押す。これで勝手に乾燥までしてくれる。
耀一郞はソファにドサリと座り込んで身体を背もたれに預けた。
ぼんやりと掌を見つめる。
(細い身体だった……だというのに、なんて酷い傷跡なんだ……)
見るに堪えないとはあのことだ。正常な肌色を探す方が難しいほどに広範囲にあった痛めつけられた跡。
――俺がここで仕事を始めてから一番酷い虐待の跡だ。
井ノ瀬のあの言葉は大げさでもなんでもなかった。耀一郞ですら一度目にしただけで忘れられないほどに酷かった。その理由がオメガだからというのも信じられずにいる。
(どの口が言うか……オメガだからと軽蔑していたのは私もだ)
樟のことをなにも知らずなにも見ず、オメガだから誰にでも足を開くのだと決めつけていた。けれど彼は違った。押さえつけられ、名も知らぬ「兄の友人」たちの慰みにされていた、自分の意思とは関係なしに。
きっと拒んでは殴られたに違いない。言うことを聞かせるために嬲った結果があの無残な背中だ。
(痛ましかった……だが私にはどうすればいいかがわからない)
このまま切り捨てるのは簡単だ。しかし離婚した途端、今度は涎を垂らし手ぐすねを引いて待つ父に嬲られるのだ。あの男は発情するしないなど気にしないだろう。どれほど嬲っても自分がいなければ生きていけないように相手を毀すのが楽しいのだ。
(私は間違っていたんだ)
抱き締めた感触が未だに残っている。
耀一郞の腕が余るほどに細い身体。ただ抱き締めることしかできなかった。なにも言えなかった。樟もなにも言わなかった。ただ抱き合って、気がつけば細い身体が力を失い凭れかかった。その時初めて樟が眠ったのだと気付いた。
ベッドに運び、下着とパジャマを着せた。成人男性の着替えをするなんて想像もしなかったが、嫌悪感は僅かも生じなかった。耀一郞にすべてを任せた人形のような身体が心配でしょうがなかった。
それにしても酷い跡だ。
「何一つ、あいつのせいじゃないのに……」
報告書の、家政婦が必死に訴えていた項目を思い出した。
『奥様が死んでから樟さんの扱いが酷くなった。食事もまともに与えられなくて、家族の目を盗んで私(家政婦)が食事を自室に持っていかなければ、飢え死にしていただろう』
『長男が友人を家に連れ込んでは樟さんの部屋でひどいことを繰り返していた。いつも悲鳴が聞こえていた』
なによりも酷かったのは、菊池社長の妻の死因だ。
「守りたい……」
思い出す、細い身体を。
同時に怯えて身体を丸め暴力に堪えようとする様を。
ここでは怯えなくていい。不安にならなくていい。
だがどうやってそれを伝えればいいか、耀一郞にはわからなかった。
初めにあれほど酷いことをした自分を、果たして樟は信じてくれるだろうか。
掌で目元を覆い、懺悔の溜め息を吐き出した。
あの頃に戻れるなら、自分をぶん殴ってやりたい。
オメガへの偏見に囚われて樟を見ずに冷たい態度ばかりを取った。酷いことを口にした。彼はなにも悪くないのに……八つ当たりをしたのだ。怖がられて当然のことを散々して、どうして今頃信じろと言えるだろうか。
己の愚かさを悔いても時間は巻き戻らない。
そして耀一郞にはわからなかった、慈しむ方法が――愛する方法が。
冷え切った家で育った耀一郞は両親の愛情を知らないまま大きくなった。
なにせ二人とも家にいなかった。父はずっと愛人の家を渡り歩き、母も恋人と共に住むマンションから帰ってくることはなかった。
ずっと傍にいてくれたのは家政夫をしていた男だけだ。
人として必要な事を教えてくれたのは、あの人だけだった。雇用も関係なく、悪いことをすれば叱り、頑張れば大げさなほど褒めてくれた。誰よりも愛情を注いでくれた存在だ。耀一郞とは十歳しか違わないが、誰よりも信頼を寄せていた。
その人は今、どこでなにをしているのか分からない。
「……美濃部さん、私はどうしたらいいんだ」
宙に向かって懇願を呟く。
「どうやって彼を愛せばいいんだ」
大切にしたい、誰よりも。慈しみたい、なによりも。その方法を持ち得ない自分がもどかしくて苛立ちばかりが湧きあがる。
そう、気付いてしまった。
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