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番外編2
嬉し恥ずかし新婚旅行01
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結婚して二年半が経った。十一月も後半となると、不思議と世間も浮き足立つ。早いところではクリスマスイルミネーションが始まり、嫌でも年末を意識するようになった。
昨年の年末年始は樟が風邪を拗らせて病院で年を越してしまったが、今年は二人でゆっくりと過ごせそうだ。
耀一郞の父である隆一郎の一連の報道も落ち着き、会社もようやく平常を取り戻した。
忙しない耀一郞も年末年始は仕事が休みだろうと、おせち料理の作り方をサイトで確認していると、のぞき込んだ耀一郞が信じられないことを言った。
「冬休みを長めに取る。行きたいところはないか。海外でもいいぞ」
「どうしたんですか、急に」
「いや、一昨年のゴールデンウィークに房総へ行こうと誘っただろう。断られてしまったが」
大きな手が、癖のせいでふわふわとする樟の髪を玩び始めた。猫っ毛で癖がある髪は柔らかく、耀一郞は「昔飼っていたプードルを思い出す」と口にするので、案外細いのかもしれないと思い始めていた樟は、意識をそちらに持っていき向けられた言葉を上手く飲み込めずにいた。
「今度こそ新婚旅行に行こう。希望はあるか?」
「し……んこんりょこ?」
「そうだ。していなかっただろう。二年経ったが、まあ遅くはないだろう」
耀一郞が目の前のパソコンを器用に使ってトラベルサイトのページを立ち上げた。トップページに華やかな海外の画像が数秒ごとに変わっていく。
「どれがいい?」
どれと言われても、樟には選べない。海外旅行どころか、子供の頃に旅行をした記憶すらあやふやだ。父が仕事で忙しくしている関係で遠くに出かける機会がなく、中学校の修学旅行が最後の旅行だ。物心つく前に行ったかもしれないが、少なくとも旅行というのは樟の身近にはなかった。
「学校行事以外の旅行に行ったことがないので……選べません」
こんな言葉、以前なら口にするのすら怖かった。怒られるんじゃないか、嘲られるんじゃないか。そんなことばかり考えていたが、最近は思っていることを口にするようにしている。
耀一郞に請われたからだ。主治医の安井にも、その番である久乃にも、思っていることを口にするのが相手への思いやりだと言われ続け、最近ようやく躊躇うことなく気持ちをそのままぶつけられるようになった。
耀一郞は男らしい眉をひょいっと上げ、「なるほど」と独りごちた。
「海外に興味があるか?」
「……言葉がわからなくて怖いです」
「そうか。では国内にしよう。やってみたいことがあれば教えて欲しいんだが」
言われてすぐに思いつくことがない。小さく首を振ると髪を弄んでいた大きな手がクシャリと頭を撫でてくれた。気に病むなと言われているようで、少しだけ擽ったい。
近頃、些細なスキンシップが増えたように思う。それだけではない、会話もかつてよりずっと多くなった。リビングでも寝室でも同じ空間にいると話をするか、しなくても身体の一部が触れ合っているからだろう。
ある日、耀一郞が言い出した。
「もっとわかりやすく私の愛情を示す必要がある。お前が疑う暇もないくらいでなければならない」
その理由が樟にはわからなかった。
かつては小野家の家政夫だった久乃に想いを寄せているのかと考えていたが、主治医の安井の助言に従って勇気を出して胸の内をぶつけたら、いともあっさり否定されてしまった。
本当に自分が愛されているのだと初めて実感したのだが、耀一郞はそれだけでは終わらせなかった。もっと樟にわかりやすく伝えなければならないと自分を戒め始めたのだ。
結果が過度なスキンシップである。
そして、飾らない言葉がいつも投げかけられる。以前と違いすぎて樟は戸惑うが、居心地がいいのも確かだ。擽ったさが残って、直視はできないが俯きながらもはにかんでしまう。
今もそうだ。樟の後ろから手を伸ばしキーボードを器用に叩いて検索をしていく。なぜか出てくる画像は雪景色ばかりだ。
純白の景色の中にある宿から漏れる灯りの柔らかさに見入れば、マウスを動かしていた手が樟の髪に触れた。
「雪は好きか?」
「都内から出たことがないので……こんなにたくさん積もっている雪は、昔テレビで観ただけです」
テレビも、第二性診断が出てから観せて貰えなくなったが、冬になるたびに映し出される映像は子供ながらに憧れ、いつか自分もその中に立つことを夢見ていた。子供っぽいと彼にからかわれるかもしれないが、そっと口に乗せると「そうか」と柔らかい返事が返ってきた。
憧憬の眼差しを画面に向けたままでいると、クイッと顎をしゃくられ仰け反った顔にキスが落とされる。
鼻の先、頬、尖った顎、そして僅かに開いた唇へと順番に。
唇を触れ合うのはこの一年で随分と慣れた。自分でも数え切れないほどの人に――兄に命じられたとはいえ――この身を好きにされたが、キスは誰からも強要されなかった。口すらも違う用途に使われていたが、今はそれで良かったと思っている。
その話を聞いた耀一郞が、甘いキスを何度もしてくれる。自分は搾取されるのではなく与えられるのだと実感できるのが嬉しくて、彼から与えられるすべてを拒まずにいる。本当は自分からも「して欲しい」とお願いすれば耀一郞は拒むどころか喜んで願いを叶えてくれるだろうが、恥ずかしくて口にできない。だから彼から与えてくれる瞬間に期待を膨らませてしまう。
今も、合わさるだけでなく唇の隙間からぬるりと挿り込んだ舌に先を舐められてジンとした痺れが沸き起こる。気持ちよくて頭がぼうっとなり、顎に触れている手を包むシャツの袖を掴んだ。皺になるとわかっているのに気持ちいいと伝える代わりに力を入れてしまう。甘く舌が絡まり表面を擽られてすぐに離れていった。名残惜しく伸ばしてしまう舌を慌てて引っ込めて、僅かに潤んだ目を伏せた。
フッと笑う気配がした。
また大きな手が頬を撫でゆっくりと画面へと戻した。
「では新婚旅行は雪遊びをしよう。樟が楽しめるようにスキー場の傍にしようか」
「スキー……簡単に滑ることができるんですか?」
「レッスンが必要だが……今回は止めよう。せっかくの新婚旅行だ、お前の全部を独占したい。僅かな時間も他の男と一緒に居るのは私が許せない」
またそんなことを……言葉一つで舞い上がりそうになる。
隠さなくなった独占欲。それを感じる言葉が耳に届けられるたびに恥ずかしくなる。久乃が好きなのかと誤解した樟に、耀一郞は宣言した。もう二度と勘違いを起こさないように気持ちを示すと。それが実行されるたびに、求められているんだと実感して、気持ちが浮きだってしまう。愛されているんだと、彼に大事にされているんだと、心が満ち足りていく。
また頬にキスをされ、椅子の背ごと抱き込まれた。
「貸別荘にするか……だがそれではお前が休まらないな。隠れ家のような宿にしよう。部屋に露天風呂があるのがいいな。お前の身体を誰にも見せないようにしないと」
傷痕が未だに色濃く残る背中を持つ樟は、公衆の場にその肌を晒すことができない。言葉にしなくてもすぐに配慮してくれるのが嬉しくて、お礼の気持ちを込めて高い熱を発する大きな手を上から包み込んだ。
「それでいいか?」
「はい……」
こんなにも大事にされていいのだろうか。
甘い甘い糖蜜にも似た心地よい安寧に身を委ねた。
昨年の年末年始は樟が風邪を拗らせて病院で年を越してしまったが、今年は二人でゆっくりと過ごせそうだ。
耀一郞の父である隆一郎の一連の報道も落ち着き、会社もようやく平常を取り戻した。
忙しない耀一郞も年末年始は仕事が休みだろうと、おせち料理の作り方をサイトで確認していると、のぞき込んだ耀一郞が信じられないことを言った。
「冬休みを長めに取る。行きたいところはないか。海外でもいいぞ」
「どうしたんですか、急に」
「いや、一昨年のゴールデンウィークに房総へ行こうと誘っただろう。断られてしまったが」
大きな手が、癖のせいでふわふわとする樟の髪を玩び始めた。猫っ毛で癖がある髪は柔らかく、耀一郞は「昔飼っていたプードルを思い出す」と口にするので、案外細いのかもしれないと思い始めていた樟は、意識をそちらに持っていき向けられた言葉を上手く飲み込めずにいた。
「今度こそ新婚旅行に行こう。希望はあるか?」
「し……んこんりょこ?」
「そうだ。していなかっただろう。二年経ったが、まあ遅くはないだろう」
耀一郞が目の前のパソコンを器用に使ってトラベルサイトのページを立ち上げた。トップページに華やかな海外の画像が数秒ごとに変わっていく。
「どれがいい?」
どれと言われても、樟には選べない。海外旅行どころか、子供の頃に旅行をした記憶すらあやふやだ。父が仕事で忙しくしている関係で遠くに出かける機会がなく、中学校の修学旅行が最後の旅行だ。物心つく前に行ったかもしれないが、少なくとも旅行というのは樟の身近にはなかった。
「学校行事以外の旅行に行ったことがないので……選べません」
こんな言葉、以前なら口にするのすら怖かった。怒られるんじゃないか、嘲られるんじゃないか。そんなことばかり考えていたが、最近は思っていることを口にするようにしている。
耀一郞に請われたからだ。主治医の安井にも、その番である久乃にも、思っていることを口にするのが相手への思いやりだと言われ続け、最近ようやく躊躇うことなく気持ちをそのままぶつけられるようになった。
耀一郞は男らしい眉をひょいっと上げ、「なるほど」と独りごちた。
「海外に興味があるか?」
「……言葉がわからなくて怖いです」
「そうか。では国内にしよう。やってみたいことがあれば教えて欲しいんだが」
言われてすぐに思いつくことがない。小さく首を振ると髪を弄んでいた大きな手がクシャリと頭を撫でてくれた。気に病むなと言われているようで、少しだけ擽ったい。
近頃、些細なスキンシップが増えたように思う。それだけではない、会話もかつてよりずっと多くなった。リビングでも寝室でも同じ空間にいると話をするか、しなくても身体の一部が触れ合っているからだろう。
ある日、耀一郞が言い出した。
「もっとわかりやすく私の愛情を示す必要がある。お前が疑う暇もないくらいでなければならない」
その理由が樟にはわからなかった。
かつては小野家の家政夫だった久乃に想いを寄せているのかと考えていたが、主治医の安井の助言に従って勇気を出して胸の内をぶつけたら、いともあっさり否定されてしまった。
本当に自分が愛されているのだと初めて実感したのだが、耀一郞はそれだけでは終わらせなかった。もっと樟にわかりやすく伝えなければならないと自分を戒め始めたのだ。
結果が過度なスキンシップである。
そして、飾らない言葉がいつも投げかけられる。以前と違いすぎて樟は戸惑うが、居心地がいいのも確かだ。擽ったさが残って、直視はできないが俯きながらもはにかんでしまう。
今もそうだ。樟の後ろから手を伸ばしキーボードを器用に叩いて検索をしていく。なぜか出てくる画像は雪景色ばかりだ。
純白の景色の中にある宿から漏れる灯りの柔らかさに見入れば、マウスを動かしていた手が樟の髪に触れた。
「雪は好きか?」
「都内から出たことがないので……こんなにたくさん積もっている雪は、昔テレビで観ただけです」
テレビも、第二性診断が出てから観せて貰えなくなったが、冬になるたびに映し出される映像は子供ながらに憧れ、いつか自分もその中に立つことを夢見ていた。子供っぽいと彼にからかわれるかもしれないが、そっと口に乗せると「そうか」と柔らかい返事が返ってきた。
憧憬の眼差しを画面に向けたままでいると、クイッと顎をしゃくられ仰け反った顔にキスが落とされる。
鼻の先、頬、尖った顎、そして僅かに開いた唇へと順番に。
唇を触れ合うのはこの一年で随分と慣れた。自分でも数え切れないほどの人に――兄に命じられたとはいえ――この身を好きにされたが、キスは誰からも強要されなかった。口すらも違う用途に使われていたが、今はそれで良かったと思っている。
その話を聞いた耀一郞が、甘いキスを何度もしてくれる。自分は搾取されるのではなく与えられるのだと実感できるのが嬉しくて、彼から与えられるすべてを拒まずにいる。本当は自分からも「して欲しい」とお願いすれば耀一郞は拒むどころか喜んで願いを叶えてくれるだろうが、恥ずかしくて口にできない。だから彼から与えてくれる瞬間に期待を膨らませてしまう。
今も、合わさるだけでなく唇の隙間からぬるりと挿り込んだ舌に先を舐められてジンとした痺れが沸き起こる。気持ちよくて頭がぼうっとなり、顎に触れている手を包むシャツの袖を掴んだ。皺になるとわかっているのに気持ちいいと伝える代わりに力を入れてしまう。甘く舌が絡まり表面を擽られてすぐに離れていった。名残惜しく伸ばしてしまう舌を慌てて引っ込めて、僅かに潤んだ目を伏せた。
フッと笑う気配がした。
また大きな手が頬を撫でゆっくりと画面へと戻した。
「では新婚旅行は雪遊びをしよう。樟が楽しめるようにスキー場の傍にしようか」
「スキー……簡単に滑ることができるんですか?」
「レッスンが必要だが……今回は止めよう。せっかくの新婚旅行だ、お前の全部を独占したい。僅かな時間も他の男と一緒に居るのは私が許せない」
またそんなことを……言葉一つで舞い上がりそうになる。
隠さなくなった独占欲。それを感じる言葉が耳に届けられるたびに恥ずかしくなる。久乃が好きなのかと誤解した樟に、耀一郞は宣言した。もう二度と勘違いを起こさないように気持ちを示すと。それが実行されるたびに、求められているんだと実感して、気持ちが浮きだってしまう。愛されているんだと、彼に大事にされているんだと、心が満ち足りていく。
また頬にキスをされ、椅子の背ごと抱き込まれた。
「貸別荘にするか……だがそれではお前が休まらないな。隠れ家のような宿にしよう。部屋に露天風呂があるのがいいな。お前の身体を誰にも見せないようにしないと」
傷痕が未だに色濃く残る背中を持つ樟は、公衆の場にその肌を晒すことができない。言葉にしなくてもすぐに配慮してくれるのが嬉しくて、お礼の気持ちを込めて高い熱を発する大きな手を上から包み込んだ。
「それでいいか?」
「はい……」
こんなにも大事にされていいのだろうか。
甘い甘い糖蜜にも似た心地よい安寧に身を委ねた。
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