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番外編2
嬉し恥ずかし新婚旅行08
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サクッサクッと足を下ろすたびに音がする。靴の裏から伝わる不思議な感触が面白くて、樟は降り積もった雪に靴跡を付けていく。
「あまり下ばかり見ているとまた転ぶぞ」
すぐ後ろから注意する声はどこか笑いを含んでいた。
新婚旅行に来て四日、耀一郞の機嫌はすこぶるいい。
「滑り止めを付けてくれたので、もう転びません!」
ムキになって先を行こうにも、三日間で積もった雪は足早になろうとする樟の動きを鈍らせる。まさかショートブーツよりも雪のほうが高さがある光景を直で見るなんて、夢にも思わなかった。
新雪は柔らかく、思い切り足を上げて歩かなければならない。
すべてが楽しくてしょうがないのに、耀一郞へと、どうしても意識が向いてしまう。
なんせあの言葉を本当に実行しているのだ。
――この旅行中はお前を煽り続ける。
雪が降ったり止んだりが続き、天気が安定しないから外に出れられないと、本当この三日間煽り続けられ、今日ようやく青空が広がったのを見て外出したのだ。
晴れなければ今もあの古今が融合した部屋の中で甘い声を上げ続けていたと思うと、耀一郞を受け止める最奥がズクンと疼いた。
振り払うように顔を左右に振り、また一歩先へと進む。
宿の和室から見える小川が半分雪に覆われているのが面白くて、近くで見たいと必死に歩いているのだが、なかなか上手く進まないのは絶対に腰に力が入らないせいだ。
へっぴり腰で進んでいけば、やっと周囲の雰囲気に見合った木造の橋へと辿り着く。僅かにアーチ型になっているその一番高い場所へと立ち、川を見下ろした。
「ここにも鮎が泳いでいるんでしょうか」
「多分な。知識では知っているが、実際に泳いでいる場を見たことがないんだ」
「一緒ですね! 待ってたら見られるかな……昨日食べた背越し、美味しかったな」
骨ごと薄くスライスされた生の鮎の、焼いたときとは全く異なる味わいを思い出し、うっとりと水面を見つめる。
「なんだ、気に入ったのか。なら今度は東京で食べられるところに行こうか」
「いいんですか? 嬉しいな」
「鮎を取り扱う店が見つかったらな」
「はい!」
嬉しさに笑いかければ、一瞬だけ真顔になった耀一郞が、またすぐに蕩けたような笑みを浮かべた。それを目にして、樟は慌てて視線を逸らす。
その表情がいつもベッドの中で向けてくるものだから。
見てしまうと昨夜まで続いた淫らな感覚を思い出してしまう。
振り切るようにまた水面に目をやれば、澄んだ水の流れに積もった雪が映し出される。重さに堪えかねて葉に乗った雪が川に落ち、さらさらと消えてしまう。
「雪が溶けた……川の水も冷たいのに……」
「水の温度はきっと外気よりも高いだろう。だからといって指を突っ込もうと思うなよ。外よりは高いと言うだけで、冷たいことには変わりないからな」
思わず伸ばそうとした手を慌てて引っ込める。代わりに欄干に積もった雪に触れてみた。初日に触れたときよりも柔らかい感触だ。
「雪ってこんなに気持ちいいんだ……」
すぐに裸の指先が濡れる。その手を耀一郞が取り、冷たくなった先を掌で包んで温め始めた。
「思った以上に雪が気に入ったみたいだな。これから毎年、冬の休みは雪のあるところに行こうか。スキーをするなら雪山もいい」
なんてことない会話のはずなのに、樟の心が震えた。
それは、ずっと続く約束だから。
当たり前のように来年もその先も一緒に居ると告げていて、「今」しか見えなかった樟の眼前に輝かしく幸福な「その先」を見せてくれる。
二人の未来があることを教えてくれている。
きっと耀一郞にとっては他愛ない話だろうが、胸の震えと一緒に涙腺までも震えて、涙が溢れ出し零れ落ちそうになる。樟は唇を噛み締め堪えようとしたが、昔のように上手くできない。
どうしてだろう。
あんなに泣くのを堪えるのが上手だったはずなのに。
泣くたびに殴られて蹴られて、だから泣かないように自分を抑えることは当たり前だったのに。
耀一郞の傍にいると、自分がどんどんと弱くなっていく気がした。
甘えて寄りかかって、感情をただ漏れにして。
こんな自分じゃ面倒だと思われるとわかっていても止めることが難しくなった。
「ん? どうしたんだ」
指先を温めていた手が、盛り上がる涙を、流れるよりも先に親指で拭った。
「嫌だったのか?」
違う、その逆だ。
樟は首を振って否定しながら涙を散らした。耀一郞の肩に額を押しつける。綿が入ったコートから温かい空気が頬を掠めた。
まるでこの人のようだ。表面は冷たいのにその中に温かいものを孕んでいる。だから、強張った心が溶けて、強くあろうとしていたのに、ドロドロになってしまう。
「……嬉しいです。来年もその先も耀一郞さんと一緒に居られるのが……」
逞しい腕が樟を包み込む。
「当たり前だろう。死ぬまで私の隣にいてもらうために発情させようとしているんだ。来年どころか死ぬまで一緒だ」
当たり前のように告げる、幸せな未来のビジョン。
この人を好きになって良かった。
この人が結婚相手で良かった。
オメガで、良かった。
「早く……発情したいです……」
第二性で嫌な事がたくさんあった。辛いことも山のようにあった。でも、この人に出会うためだったんだと、今は過去をすべて受け入れることができる。
きっとオメガでなかったら耀一郞と出会えなかったし、結婚もできなかった。こんなにも愛されることを知らないままだった。
樟は初めて、不幸の象徴でしかなかった第二性に感謝した。そして、発情したいと強く願う。
耀一郞だけの自分になって、彼だけを見続ける未来を切望する。
自分では掴むことのできなかった優しい未来が手を伸ばせば届くことの幸せを、じっくりと噛み締める。希望に満ち溢れた約束をギュッと手の中に握り絞めて。
「発情して……耀一郞さんに噛んで貰って…………早く、番になりたいです」
ほろりほろりと落ちる涙を撥水効果があるコートに擦りつける。
「そんなことを言ったら、また部屋に戻る羽目になって雪遊びはできなくなるぞ」
笑いを含んだ声音の中に優しさと愛おしさが染み込んでいた。結婚式のときには想像もできないくらいの温かさに包まれている。この温もりを手放すことなど考えられない。
「……来年も、できますから……」
耀一郎に倣って二人が一緒に居る未来を口にしてみる。
胸に熱いものが込み上げて、血潮とともに指先まで広がった。
ただ包み込んでいた腕に力がこもり、僅かな痛みを感じたが、それすらも嬉しかった。彼もまた何かしら感情が揺さぶっているから。
もっと強く抱き締めて欲しくて、ギュッとコートの裾を握る。いつものように。
「違う、こうだろ」
控えめな仕草はすぐさま修正され、両腕は耀一郞の首へと移動し、願ったきつさで抱き締められる。
肺からゆっくりと空気を吐き出して、唇だけを動かす。
『愛してます』
自分から口にするのがいつも恥ずかしくて伝えられずにいる言葉を温習していれば、いつかは気負うことなく彼に伝えることができるのではないか。
素直に想いを届けたいのにできない樟を、耀一郞はいつものように抱き上げると、積もった雪などなかったように歩き出した。
部屋までの距離を、その肩に顔を埋めて期待に身体を熱くした。
「あまり下ばかり見ているとまた転ぶぞ」
すぐ後ろから注意する声はどこか笑いを含んでいた。
新婚旅行に来て四日、耀一郞の機嫌はすこぶるいい。
「滑り止めを付けてくれたので、もう転びません!」
ムキになって先を行こうにも、三日間で積もった雪は足早になろうとする樟の動きを鈍らせる。まさかショートブーツよりも雪のほうが高さがある光景を直で見るなんて、夢にも思わなかった。
新雪は柔らかく、思い切り足を上げて歩かなければならない。
すべてが楽しくてしょうがないのに、耀一郞へと、どうしても意識が向いてしまう。
なんせあの言葉を本当に実行しているのだ。
――この旅行中はお前を煽り続ける。
雪が降ったり止んだりが続き、天気が安定しないから外に出れられないと、本当この三日間煽り続けられ、今日ようやく青空が広がったのを見て外出したのだ。
晴れなければ今もあの古今が融合した部屋の中で甘い声を上げ続けていたと思うと、耀一郞を受け止める最奥がズクンと疼いた。
振り払うように顔を左右に振り、また一歩先へと進む。
宿の和室から見える小川が半分雪に覆われているのが面白くて、近くで見たいと必死に歩いているのだが、なかなか上手く進まないのは絶対に腰に力が入らないせいだ。
へっぴり腰で進んでいけば、やっと周囲の雰囲気に見合った木造の橋へと辿り着く。僅かにアーチ型になっているその一番高い場所へと立ち、川を見下ろした。
「ここにも鮎が泳いでいるんでしょうか」
「多分な。知識では知っているが、実際に泳いでいる場を見たことがないんだ」
「一緒ですね! 待ってたら見られるかな……昨日食べた背越し、美味しかったな」
骨ごと薄くスライスされた生の鮎の、焼いたときとは全く異なる味わいを思い出し、うっとりと水面を見つめる。
「なんだ、気に入ったのか。なら今度は東京で食べられるところに行こうか」
「いいんですか? 嬉しいな」
「鮎を取り扱う店が見つかったらな」
「はい!」
嬉しさに笑いかければ、一瞬だけ真顔になった耀一郞が、またすぐに蕩けたような笑みを浮かべた。それを目にして、樟は慌てて視線を逸らす。
その表情がいつもベッドの中で向けてくるものだから。
見てしまうと昨夜まで続いた淫らな感覚を思い出してしまう。
振り切るようにまた水面に目をやれば、澄んだ水の流れに積もった雪が映し出される。重さに堪えかねて葉に乗った雪が川に落ち、さらさらと消えてしまう。
「雪が溶けた……川の水も冷たいのに……」
「水の温度はきっと外気よりも高いだろう。だからといって指を突っ込もうと思うなよ。外よりは高いと言うだけで、冷たいことには変わりないからな」
思わず伸ばそうとした手を慌てて引っ込める。代わりに欄干に積もった雪に触れてみた。初日に触れたときよりも柔らかい感触だ。
「雪ってこんなに気持ちいいんだ……」
すぐに裸の指先が濡れる。その手を耀一郞が取り、冷たくなった先を掌で包んで温め始めた。
「思った以上に雪が気に入ったみたいだな。これから毎年、冬の休みは雪のあるところに行こうか。スキーをするなら雪山もいい」
なんてことない会話のはずなのに、樟の心が震えた。
それは、ずっと続く約束だから。
当たり前のように来年もその先も一緒に居ると告げていて、「今」しか見えなかった樟の眼前に輝かしく幸福な「その先」を見せてくれる。
二人の未来があることを教えてくれている。
きっと耀一郞にとっては他愛ない話だろうが、胸の震えと一緒に涙腺までも震えて、涙が溢れ出し零れ落ちそうになる。樟は唇を噛み締め堪えようとしたが、昔のように上手くできない。
どうしてだろう。
あんなに泣くのを堪えるのが上手だったはずなのに。
泣くたびに殴られて蹴られて、だから泣かないように自分を抑えることは当たり前だったのに。
耀一郞の傍にいると、自分がどんどんと弱くなっていく気がした。
甘えて寄りかかって、感情をただ漏れにして。
こんな自分じゃ面倒だと思われるとわかっていても止めることが難しくなった。
「ん? どうしたんだ」
指先を温めていた手が、盛り上がる涙を、流れるよりも先に親指で拭った。
「嫌だったのか?」
違う、その逆だ。
樟は首を振って否定しながら涙を散らした。耀一郞の肩に額を押しつける。綿が入ったコートから温かい空気が頬を掠めた。
まるでこの人のようだ。表面は冷たいのにその中に温かいものを孕んでいる。だから、強張った心が溶けて、強くあろうとしていたのに、ドロドロになってしまう。
「……嬉しいです。来年もその先も耀一郞さんと一緒に居られるのが……」
逞しい腕が樟を包み込む。
「当たり前だろう。死ぬまで私の隣にいてもらうために発情させようとしているんだ。来年どころか死ぬまで一緒だ」
当たり前のように告げる、幸せな未来のビジョン。
この人を好きになって良かった。
この人が結婚相手で良かった。
オメガで、良かった。
「早く……発情したいです……」
第二性で嫌な事がたくさんあった。辛いことも山のようにあった。でも、この人に出会うためだったんだと、今は過去をすべて受け入れることができる。
きっとオメガでなかったら耀一郞と出会えなかったし、結婚もできなかった。こんなにも愛されることを知らないままだった。
樟は初めて、不幸の象徴でしかなかった第二性に感謝した。そして、発情したいと強く願う。
耀一郞だけの自分になって、彼だけを見続ける未来を切望する。
自分では掴むことのできなかった優しい未来が手を伸ばせば届くことの幸せを、じっくりと噛み締める。希望に満ち溢れた約束をギュッと手の中に握り絞めて。
「発情して……耀一郞さんに噛んで貰って…………早く、番になりたいです」
ほろりほろりと落ちる涙を撥水効果があるコートに擦りつける。
「そんなことを言ったら、また部屋に戻る羽目になって雪遊びはできなくなるぞ」
笑いを含んだ声音の中に優しさと愛おしさが染み込んでいた。結婚式のときには想像もできないくらいの温かさに包まれている。この温もりを手放すことなど考えられない。
「……来年も、できますから……」
耀一郎に倣って二人が一緒に居る未来を口にしてみる。
胸に熱いものが込み上げて、血潮とともに指先まで広がった。
ただ包み込んでいた腕に力がこもり、僅かな痛みを感じたが、それすらも嬉しかった。彼もまた何かしら感情が揺さぶっているから。
もっと強く抱き締めて欲しくて、ギュッとコートの裾を握る。いつものように。
「違う、こうだろ」
控えめな仕草はすぐさま修正され、両腕は耀一郞の首へと移動し、願ったきつさで抱き締められる。
肺からゆっくりと空気を吐き出して、唇だけを動かす。
『愛してます』
自分から口にするのがいつも恥ずかしくて伝えられずにいる言葉を温習していれば、いつかは気負うことなく彼に伝えることができるのではないか。
素直に想いを届けたいのにできない樟を、耀一郞はいつものように抱き上げると、積もった雪などなかったように歩き出した。
部屋までの距離を、その肩に顔を埋めて期待に身体を熱くした。
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