DREAM EATER

大秦頼太

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DREAM EATER 21

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 最初は誰もが驚いていたが、冷静になってみるとシーアンたちのやりたいことはすぐに理解できた。連合戦闘によって他の戦闘を回避しようとしたのだ。シーアンたちとの素手による連合戦闘が始まり、霧の外に出ると塔の入り口が見えた。そこを塞いでいたのはアビスたちのPTとその後ろに傭兵たちを出して待ち構えている別の集団だった。
 やけくそになって霧の外に出ていたら、傭兵を出すことも出来ずにプレイヤーは集中攻撃の末に殺されていただろう。
「良い案だったんだけどな。破られちまったなぁ、アビスちん」
 にかっと屈託のない笑顔を見せる幼女の頭上にはデトロアという名前があった。アビスたちとは違う抗争屋デトロアだった。
 戦闘を続けながらアビスの名前を捜す。アビスたちのPTも傭兵を呼び出していた。その中に最初の村付近であったキツネ目の男がいた。名前が見えない。
「まあね。古い手を使うよね。つまんないの」
 名前の見えないキツネ目が言った。
「あいつがアビスか」
 誰かが言った。
 アビスとデトロアのPTが連合を取り囲む。連合戦闘は続けられるが、前にも後ろにも進めなくなった。
「打つ手が無いか!」
 ズカルが言った。顔には焦りの色が見える。そばにいたソトミネが軽く笑った。
「大丈夫。目立ちたがり屋はどこにでも出てくるものです」
 ソトミネの言葉通り、霧の中からビアストリーノのPTが飛び出してきた。たった6人しかいない。出てきたばかりで傭兵もすぐには呼び出せない。
「まったくどいつもこいつも。俺は忙しいんだよ!」
 ズカルが怒鳴った。
「連合戦闘終了後、防御体制を維持しつつ、敵を分断しろ! 一人きりになるなよ!」
 抗争屋たちがビアストリーノたちに襲いかかる。が、ビアストリーノたちはまだこちらの連合にいる。別の戦闘中には攻撃はできない。
「なんだ?」
 抗争屋が戸惑う。一瞬の隙を突いて、連合戦闘を終了させる。するとすぐさま僕らと抗争屋たちの戦闘が始まる。シーアンたちは逃げるように塔へと雪崩れ込んでいった。
 ビアストリーノPTは防戦一方だった。だが、霧の中から回復魔法が飛んで来るおかげで被害は最小限だった。
 敵プレイヤーを狙い撃ちにする。相手側も同じ戦法だ。傭兵がいる分、抗争屋たちが有利だ。だが、挟み撃ちの形になっている。ビアストリーノたちを追えば、霧の中に隠れ傭兵を出している彼らは入れず、こちらに襲いかかれば、ビアストリーノたちがその背中に襲い掛かってくる。
「アビスちん! こりゃダメだね!」
「俺もそう思う!」
 戦闘に興味をなくしたのか抗争屋は前後に挟まれた戦場を横に移動し始めた。僕らは追わない。追えば戦闘が継続されるからだ。やがて、互いが一定の距離まで離れると僕らとの戦闘が終了する。
 その瞬間、抗争屋たちを魔法の光が襲うのだった。
「ムグルの魔術師!」
 シーアンたちが傭兵を伴いアビスとデトロアの側面を突いたのだ。それはもう一方的な殺戮だった。度重なる攻撃魔法の嵐によって抗争屋たちの魔法防御は削られ、逃げることも進むことも出来ずに倒されていった。
 気がつけば、もはやそこに残っている者はいなかった。どの名前も確認できなかった。
 全員がロストだ。

 戦闘が終わると、僕らは傭兵を出して塔に入る準備をした。
 シーアンを連合に誘う。が、拒否された。
「我々はここから別行動をします。ですが、あなた方に敵対することはありません」
 そう言うとムグルの魔術師たちは塔の中に入っていった。
「俺たちも別行動と行こう」
 そう言うとビアストリーノも連合を離脱した。
「しょうがないか」
 と、ズカル。
「しょうがなくないよ。せっかくここまで来たんだから最後まで協力すればいいのに」
「それは違うな。屋内戦闘だと大連合は不利だよ。さっきみたいに攻撃できないことがあると間に別の連合をかませることでこちらの攻撃を封じることができるからね。当然、そういうことを仕掛けてくることも考えておかなくちゃ」
 ソトミネが言った。
「言ってる意味がわかんないんだよね」
「まぁ、そういう戦闘になったら説明するよ」
「大連合じゃなくなっただろ。そういう戦闘が起こらないかもしれないじゃないか」
「まあね」
 僕らは塔から流れてくる重苦しい空気を意識しないように明るく振舞っていた。
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