DREAM EATER

DREAM EATER 11

　ズカルと落ち会う約束をした後、ワールドアナウンスに流れてきたことが衝撃だった。
　ワールドアナウンスとは、運営がプレイヤーにシステムメッセージを伝えるときに使うものである。
「The Varkをお楽しみの皆さん。はじめまして、運営代行です。今日からシステムの一部が変更され、皆さんの持っているbcが現金化出来るようになります。そうなっちゃうと逃げ出そうとする人も増えちゃうので、そんな多額の倍賞を抱えている方の故意のロストを防ぐために、ロストしちゃった人の口座は無限開放しちゃいます。貯金がない人にもテスト期間終了後にきちんと請求が行くので安心してね。大丈夫。ここで沢山の人を狩って大金を手にすればいいんだからさ。んで、じゃなかった。そこで本日のレートを発表いたします。本日のレートは1bc＝5円です。レート発表は毎日お昼ごろにするかな。冒険者ギルドのNPCをご利用ください。無限開放となった口座は現在百十四口座で、NPCに販売したりクエストで得たbcに充てます。対人が苦手な人はモンスターを狩ってアイテムを売りまくってください。それでは引き続きThe Varkをお楽しみください」
　なんということだろう。このワールドアナウンスにより、この世界はより殺伐とした方向へと向かいだした。少人数やソロで町の外をうろつくものは皆無となり、連合パーティー単位で行動をするようになった。だが、そうなることで、より賠償額は大きくなり既に数と金を持つ強盗プレイヤーたちに優位に働いていた。
　一方で、支配力の小さい集団は瓦解し、より強い集団の糧になった。
　有力連合たちの多くが、初心者のエリアを離れ、より強力なアイテムや敵を求めて旅だったことは賢者の塔を目指す僕たちには良い流れだった。

　青い長髪のビアストリーノはまだ健在だった。それどころか彼は連合の長となり、初心者エリアの護衛まで買って出ている。その御蔭で、チラホラと町へやって来るソロプレイヤーが増えてきている。

「面白いことになってきたな」
　ズカルはビアストリーノ連合に時々参加する形で傭兵の数を既に二十人揃えていた。
「強盗プレイヤーの連合は、大きなところで五つくらいかな。アビス、デトロア、にこにこにっこり、いや、ふざけてないこんな名前なんだ。ポー、それと、シーアン。連合の長の名前だが、こいつらは時々抗争するが共闘もする。アビスとデトロアは同じ仲間だと見てもいいだろう。レベルアップとアイテム強化をメインにしている。時々、プレイヤーを狩りに来る。ポーは傭兵を使った戦いを好み、この辺りにもよく出る。シーアンたちは何を考えているかわからん。一番たちが悪いのは、にこにこにっこりかな。こいつらは裏切り者を送り込んできたりする。戦闘中に敵と戦わずに、味方の逃げ道を塞ぐっていう話だ。ただ、名前が割れちまえば怖くないからそのうち終わるだろうがな」
　程なくして、SPエミナの元で再び連合が組まれた。多くは前回の参加者だった。彼らも手にした賠償金で装備や傭兵を新たに雇い入れ、強さを増していた。
　ズカルをSPエミナたちに紹介し、彼の連れてきた数人を新たに連合に加え、更にビアストリーノ連合に護衛を頼み、僕らは魔術師の最初の町ルフルスを目指すことにした。