再会した愛する人には番がいた

無味無臭(不定期更新)

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壊された日常

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廉との再会の翌週。



「徹いってらっしゃい、晩御飯待ってるね。」


毎朝出勤前、光の愛らしい笑顔が俺を送り出す。
今日も普段通りだと思っていた。

マンションを出てすぐに黒塗りの車に押し込められるまでは。


─────


気を失っていたのか、目を覚ますと見知らぬ部屋でベッドに仰向けで寝そべっていた。
手に金属の音がして見ると、左右の手首には手錠がつけてあり、それぞれベッド脇にくくりつけられた状態で身動きがとれない。


「は…?」


困惑していると、部屋の一角にある扉が開く。



「目が覚めたね。」



そこには怖いくらい笑顔な廉の姿があった。


「廉…どういうことだ?」


「俺から奪われた徹を取り戻すんだ。
また昔のように一緒に過ごそう。」


「は…?」


壊れてる。
俺は直感でそう思った。


「なに言ってるんだよ、いいからこれ外せ。
冷静に話し合おう。」


「無理に決まってるでしょ?
離れていた5年間、俺がどれだけ徹を恋しく思っていたか知ってる?
帰国したら、また復縁しようと思ってたんだ。
徹も同じ気持ちだと思ってたから。」


「そんなの…」


無理だろ。
俺達はもう別れて終わったんだから。



「でも再会したら番がいるし…
しかも俺と別れてすぐだった?
ふざけてんの?それって浮気と変わんないよね?」


「確かに配慮にかけてた、俺が悪かった。」


「そう、徹が悪いんだよ?
だから代償は払ってもらうよ。」


「代償って…」



「昔みたいに体を重ねあえば、元通りになれるよね。
徹の気持ちも戻ってくるでしょ?」


「俺には番がいて、廉を愛していない。
それはこれからも変わらない。」


「…知ってる、徹ってドライだもんね。
昔好きでも飽きたら捨てちゃうんだから。
でも徹はまた俺を好きになるよ。」


は…?

俺が呆気にとられている間に廉が俺の前まで迫り、唇が触れた。


「は…おい、廉!」


なんとか抵抗すると、それを押さえ付けるかのようにキスは深くなっていく。


「あ…お、い!
や、めろッ」


廉の手が俺の服の下へと伸びる。
拘束されていて身をよじることしかできない俺を、弄ぶように廉の指が這う。


「れ、ん!
たの、むから…もうやめてくれッ!」



「やめないよ。
また一緒に気持ちよくなろうね。
徹の気持ちいいとこは覚えてるよ。
ほらこことか…」



「う、あッ?!
あ…うッ…」


乳首への刺激が快感となって俺の体を襲う。


「もう大きくなってる。
やっぱり気持ちいいでしょ?
もっももっとよくしてあげるから、早く俺のとこへ戻っておいで。」


廉の行為はエスカレートする。
俺のズボンへと手を掛ける。


「キツい、ここは5年前のままだね。」


「う、あ…」


久しぶりの感触に、俺は逃げ出したくなる。
こんなの嫌だ。

俺には…愛しい番がいるのに。
こんなことで快感を拾う俺の体が憎らしい。


「ふ…ッ…うぅ!」


悲しくて悔しくて涙が頬を伝う。



「泣かないでよ…」


廉が指で俺の涙を受け止める。



「だったら抜け、よ!
こんなことッするな…!」


「…それは無理。」







「ふ…う、あッ!
んッ…あ!」


廉の指がすんなりと俺の中を出し入れする。



「そろそろいいよね。
入れるよ。」


正面から抱き締められながら、廉のモノが入ってくる。
焦らされ続けた体は、その刺激を敏感に拾う。


「んあッ…!」


そして呆気なく果てる。



「入れてすぐ逝けて偉いね。」


連が褒めるように俺の頭を撫でる。
俺は、無力感に襲われる。
快楽で埋め尽くされる自分が汚らわしい。

光…俺の愛しい番。


廉に与えられる激しい快楽に苛まれながら、心の中では必死にその名を呼ぶ。

それが俺ができた唯一の抵抗だった。

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