魔王は勝手に生まれない

雨彩 色時

文字の大きさ
4 / 4

完結 涙と命が落ちる

しおりを挟む
 焼け野原になった街にもやはりいた。勇者と呼ばれる者だ。殺してあげなければならない。彼と同じように救ってあげなければいけない。

「君は勇者だね」
「そうだ。お前を討ち倒す者だ」
「それは出来る者が言う言葉だよ。君はただ立ち向かうことが出来る。勇気が周りの人達より少しあるだけだ。弱いのは変わらない」


 いつもそうだ。焼け野原にした街々に彼らはいる。そして、僕は救ってあげた。ここは最後の街になる。目の前の彼が最後の勇者と言う訳だ。

「人間を殺し終わったら、どうするんだ?」
「これから死ぬ君に知る必要はないよ」
「ツレないじゃないか。最後なんだぜ? 冥土の土産ってヤツで頼むよ」


 他の勇者とは、ほんの少し違和感を感じた。彼は死に急がず、死を恐れていない。笑っている。

「魔物だよ。魔物を全て殺す」
「おいおい、魔王が魔物を? そいつは驚きだ。それが終わったら?」
「僕自身を殺す。それで全てが終わる」
「それはお前の中で終わってるだけだ」


 僕を諭すように彼は真っ直ぐ剣を僕に突き付ける。彼はただ正面から斬りかかる勇者とは違うようだ。

「人間も魔物もこの世にいたら、ダメなんだ。だから、僕が殺してあげないといけないんだ。彼らは人間に近づき過ぎた。これが終わったら、僕の手で救う責任がある」
「勝手に俺らの命をお前で決めつけるな。それは神様ですら許されないのことだ」


 剣先を後ろへやるとこちらへ距離を詰めて来た。結局彼もただ正面から斬りかかるだけかと残念に思う。

「別れの挨拶すら惜しいな」


 僕は魔術を放ち彼を殺してあげた。これで人類は全滅だ。天国か地獄か? はたまたお星様なんかになったりするのかは分からないけど、生きているよりはマシだろう。後は魔物を一ヶ所に集合させて魔術を放てば終わる。世界平和の完成だ。

「おいおい。油断ってヤツは戦闘中にするもんじゃーないぜ」


 僕の心臓に剣が突き刺さっている。自分の血なんて久しぶりに見た。そして、人間をやめて正解だった様だ。

「勇気なんて出すもんじゃないよ」


 柄を離さない彼の心臓を僕は右手で貫いた。僕の耳元では彼の血を吐き出す音が聞こえる。僕が人間だったら死んでいただろう。そして、君は人間だから死ぬんだ。

「な…んで…」
「弱いからさ」


 彼の手は柄を握りれなくなり、一緒に地に着いた。代わりに僕が柄を握る。しかし、僕が握ろうとすると反発した。聞いたことがある。これは聖剣と言う罪深い武器だ。

「これが処分出来るのなら右腕なんて安いな」


 反発しながらも無理矢理に柄を握って聖剣に魔力流してけがす。聖剣はヒビが入り、折れて、塵となる。同時に僕の右腕も聖力に触れ過ぎたせいで失った。


 人類を滅ぼした僕は魔物を一ヶ所へと集めた。彼らはよく働いてくれた。慈しんできた彼らは苦しまず殺そう。知能がある者はいずれ感情を抱き、また負の連鎖を生んでしまう。彼らにはそんな醜い者になって欲しくない。僕はありったけの魔力で魔術を放つ。

 彼らを一匹も苦しませることなく殺せた事に僕はホっとした。彼の誓いまでもう少しだ。後は僕が死ねば誓いが果たせる。そして、彼が最初に願っていた世界平和も叶う。
 死ぬ覚悟なんていらない。この世界にもう未練なんて無い。なのにどうしたことか。涙が流れる。

「何なんだよこれ…。意味が分からないよ」


 この世に何もいない更地で僕だけが、頭を抱える。全て殺したじゃないか。彼の為にいっぱい殺したんだ。僕は間違ってなんかいない。
 彼は喜び、褒めてくれるはずだ。もし、間違っていたら…? 頭の底に埋もれていたモノが僕に襲いかかる。

「彼から嫌われ……」


 僕は僕自身の思考を止める為に首を斬り落とす。正解であるべき為に命を絶った。最後に悔いがあると言えば、これから彼に会いに行くのだから……涙くらいは拭いとけば良かった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

【完結】精霊に選ばれなかった私は…

まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。 しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。 選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。 選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。 貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…? ☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

冷遇妃マリアベルの監視報告書

Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。 第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。 そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。 王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。 (小説家になろう様にも投稿しています)

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

処理中です...