短き者達

雨彩 色時

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見えない君の顔は

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 僕は視力が悪い。眼鏡やコンタクトをしなければ私生活に支障が出る。しかし、コンタクトはあまりしない。眼鏡の重みが無いと少しだけ、鼻と耳に違和感がある。そんなくだらない理由だ。

「ねぇ、視力そんなに悪いの?」
「うん、外したら君の顔がボヤけて、この距離でも分からなくなる」


 そんな話をしてから、僕の彼女はよく眼鏡を取り上げる。何が面白いのか分からないけど、君の笑い声がするなら悪くない。贅沢を言えば笑顔は見たいが。

「はい、ここだよ」
「絶対に君が持っていただろ」
「だって、探す姿が可愛いんだもん」


 眼鏡はどんどん僕の必要な物になっていく。でも、これが無ければ彼女の顔が見えなくなる。君の喜怒哀楽は四季よりも僕の楽しみでもあり、この先もずっと見続けたい。


________________
_______
_


 ある休日の朝である。隣で寝ていた君の様子が少しおかしいのに気が付く。どうしたの?と聞いても君は強く、無言で僕を抱きしめてくるだけだ。眼鏡を手に取り、かけようとする。

「ダメ…。眼鏡かけちゃダメ」
「分かったよ。で、どうしたの?」
「あなたと別れる夢…見ちゃった」
「そっか。でも、それは夢だから大丈夫さ」


 僕も抱きしめて、頭を優しく撫でる。頭から頬へと手をやり、唇の位置を指で確認して僕はゆっくりと君の唇に重ねた。眼鏡なんてかけなくても、君の表情だけは良く見える。

「…もう眼鏡かけていいよ」


 いつもより小さく震えた声で彼女は言う。僕は眼鏡をかけた。君の目は少し赤みが残っていたが、笑顔を僕に向ける。
 泣き顔の君だけ、僕はまだ目で触れたことがない。
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