短き者達

雨彩 色時

文字の大きさ
2 / 58

朝の君は

しおりを挟む
 僕のいつもの朝は君の声から始まる。それは朝が弱い僕にとって、目覚ましよりも心地の良いものだ。それが毎日となれば僕は幸せ者だろう。

「早く起きてー! ご飯冷めちゃうから!」


 まだ寝足りない僕は朝食のいい匂いで起きる。君の声に君の作った美味しい朝食の匂いが目覚まし代わりだ。
 君はいつも玄関先まで来て、いってらっしゃいと言う。時々、僕はネクタイをわざと曲げる。

「ちょっと待って! ネクタイ曲がってる。はい、お仕事頑張ってね」


 絶対に呼び止めて、ネクタイを整えてくれるからだ。
 ほんの少しでも君が僕を見ていると言うことが知りたい。ほんの少しでも君と一緒の時間が欲しい。僕が朝に出来る唯一の抵抗だろう。

____________
_____
_


 僕の朝は変わった。うるさい目覚ましから始まる。それは朝が弱い僕にとって、不愉快でしかない音。寝ていればきっと夢の中でまた君に会える。あの日から…夢の中でしか君に会えない僕は不幸者だろう。

「また遅刻だ…」


 冷蔵庫を開けると中に何もない。目覚ましの音に空腹感、いつも始まらなくていい朝が関係なく僕に来る。
 最近、遅刻ばかりで上司に怒られたばかりだ。小さなミスも増えて会社での肩身が狭くなる。ネクタイの結び方を忘れていくのを日に日に感じていく。仕事を頑張る意味を自問自答する毎日だ。

 玄関に着くと僕の心を表しているように革靴が乱雑している。ドアノブに手をかけても、見送る挨拶も聞こえない。僕は呼び止められてもいないのに意味もなく誰もいない廊下を振り向く。君が今、夢の中で何をしているのか気になって仕方ないよ。
 いつの間にかスーツを脱ぎ捨て、僕は布団へ寝そべっていた。睡眠薬を片手いっぱいに乗せて口へ放り込み、水で無理矢理に飲み込んでやった。


 これでようやく…ようやく君とまたずっと一緒にいられると思うと僕はだ。突然と僕の元へ離れて遠くに行くなんて、君らしくない。また君が起こしてくれることを信じて僕は
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...