短き者達

雨彩 色時

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たい焼き

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 僕は甘いのが苦手だけど、時々少し食べたくなる。頭を使い過ぎたせいなのか、身体を動かし過ぎたせいなのかは分からない。無性に食べたくなる時がある。
 寒い冬の日。僕は帰り道で、たい焼きを買って公園で食べようとベンチに座ると彼女に出会った。

「あそこのたい焼きでしょ? 美味しいよね」
「え? あー、うん」

 クラスではそんなに喋ったことがないのに話をかけられて困惑する。それに僕はまだ彼女の言うたい焼きを食べたことがない。そんな有名な店舗だったのかは知らずに買った。でも、美味しいのなら悪くない話だ。
 彼女はいつの間にか隣に座っており、僕のたい焼きをジッと見つめる。見つめる程に美味しいのだろう。

「えーっと…半分、食べますか?」
「えっ!? いいの!?」


 彼女は白い息に言葉を乗せて喜ぶ。彼女の反応を見る度に目の前のたい焼きへの期待が高まる。半分個にして彼女へ渡す。

「あなたは頭が好きなんだね」
「え? いや、そんなことはないですけど…頭あげますよ?」
「いいの。私は尻尾が好きだから」


 彼女はクスリと笑う。手袋を外し、たい焼きの尻尾を受け取ってそう言う。僕はたい焼きをどこから食べるなんて気にした事がない。無意識的には頭から食べるから好きなのだろうか。

「あー、美味しかった。ご馳走様っ! またあそこのたい焼きが食べたいなぁ」
「また買えばいいじゃないですか」
「…そうね。そうする」


 翌日、甘いのが苦手なのに別に食べたくないのにたい焼きを持って公園にいた。半分が食べ終わろうとするが彼女の姿はない。昨日は温かくて美味しかったのに…冷たい尻尾を無理矢理に口へ運んだ。
 そして、次の朝礼の時に先生から彼女が転校したことが知らされた。どうりで待っても来ない訳だ。



 翌年の冬。あそこのたい焼きは有名になっていた。なかなか買うことが難しくなっていたが、甘いのが食べたくなった今日は何とか買えた。高校の受験で頭を使うからなのか、急に脳が甘いのを欲する。

「隣、いいかな?」
「ああ、大丈夫ですよ」
「あそこのたい焼き、美味しいのがバレっちゃったみたいだね。久しぶり食べようと思ったのに買えなかった」
「それは残念です」
「あなたがまた買えばいいって言ったのよ? 買えなかったから、責任は取るもんでしょ?」


 僕は尻尾を彼女に渡す。彼女は笑顔で受け取って食べた。食べ終えた彼女に僕は志望校を聞く。彼女の志望校はレベルが高いようだ。

「また、たい焼きが食べたいからここの近くにしたの。あなたは?」
「僕も同じだよ」
「一緒で良かった。絶対に受かろうね。それと尻尾は私のだから」
「たい焼き以外も君と食べたいな」
「ふふっ。そうね。じゃあ、連絡交換しましょ?」


 僕は甘いのが苦手だけど、もっと頭を使わないといけないようだ。たい焼きを食べる頻度が増す未来が見える。二人で食べるたい焼きは温かかった。
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