短き者達

雨彩 色時

文字の大きさ
34 / 58

不老不死

しおりを挟む
  不死の力は決して知られてはならない。この力を用いて悪事に利用する者がいるからである。私は幼い頃に自分自身が不死である事を自覚した。それはなぜか?単純だ。自殺をしたからである。しかし、不死だからそれは叶わなかった。時間が経つと蘇生する。
 正直言うとこの不死の力を呪った。死にたい程に私の人生は脆く弱いモノだったからだ。

「何で…そんな…っざけんなっ!!!!」


 その力を理解しても自身の人生を受け入れられなかった。私は死に覚悟を持って立ち向かったからである。神と言う者の悪戯にしか思えない。死にたい程の感情が芽生えている人間風情に不死を与えるなんて、それ以外に無いだろう。私はその大きな力に成す術なく泣いた。自分の体なのに自分が大きな壁となるのだから。

「また…またダメだった」


 私でも分かる程に単純だ。どんなに試行錯誤しようとも死は不可能。こんな不要で不幸な力を何故この私が所持しているのか分からない。今後この不死とは一生付き合っていかなければならない。


_____________________
________
_


 私はあれから新たな事を知った。不老不死だったようだ。二十歳前半で老化が止まることを知る。その為、私は居場所を転々とした。その行く先々で出会いと別れを繰り返す。痛覚が鈍くなったが、まだ慣れないことがある。飢餓きがである。荒れた地で行き倒れた時は死を諦めた私に再び、死を望む程の苦行であった。
 そんな中、一人の旅人が助けてくれる。水と食料を恵んでもらい、次の街まで馬車に乗せてもらった。彼とは意気投合して、一緒に旅をすることになった。いずれ彼とはどんな別れ方にしろ私の前から消えてしまう。

「なぁ、次はどこに行きたい!?」
「そうだな。久しぶりに珍しい鉱石が手に入ったし、次の街で高値で売ろう」


 先の街は鉱石が盛んで珍しい鉱石なら高値で買い取ってくれるはずだ。私は同意して街へ向かう。売った後は二人で久しぶりに豪華な食事でもと思っていた。

「だ、旦那…これは一体どこでっ!?」
「この街に向かう途中でな」
「高価過ぎてウチでは買い取れないな」


 どこの店に行っても買い取って貰えなかった。珍し過ぎても困る。どんなに高値の石でも、美味しくないし空腹は満たされない。

「お前ら珍しい石持ってんだってな。大人しく渡せ」
「アンタらに渡すなら粉々にした方がマシだ」
「可哀想に…お前のせいで連れが死ぬんだぜ?」


 目の前の盗賊がそう言い終えると銃声が響く。盗賊から何度殺されて金品や食料を奪われた事か…もう銃殺は慣れている。彼の目の前で生き返ったら、お別れしないといけない。痛覚が鈍くなったせいで身体のどこを撃たれたのか分からず、手探るが生温かい血を感じなかった。
 目を開けると血だらけの彼が倒れている。

「庇ってもらえて良かったな。お前も死にたくないだろ? 石を渡せ」
「持ってけ…。石を持って消えろっ!!!!」
「やれやれ。そいつはもう助からねーよ。一緒にそいつと逝きたいなら、手伝うぞ? 石のお礼だ」
「聞こえなかったのか? 消えろと言ったはずだ。出来ないのなら死ねっ!!!」


 私は彼の腰にある銃を手に取り、盗賊を撃ち殺した。死はこんなにも軽い。私の死だけが重たい。そして、思い出す。不老不死の血を飲んだ者は同じ力を得る。試した事は一度もない。そんな恐ろしいことは出来なかった。
 手首を切って無理矢理にでも、彼に血を飲ませれば間に合うかも知れない。しかし、この力を一番知っている私にそれは出来なかった。失敗しても成功しても不幸でしかない。

「私は…後何回、こんな悲しい死を見なければならないんだ」


 涙と血が混ざる。混ざらない為に私は独りになることを決めた。悲しい死が少しでも無くなる為にを隠して背負う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

まなの秘密日記

到冠
大衆娯楽
胸の大きな〇学生の一日を描いた物語です。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...