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はじめに
オーバートゥルー
しおりを挟むわかってはいた。
そこに映るのが自分であるか否かそもそも何故、自分が映っているだなんてそう思ったのかすらわからないが、わかってはいた。
もう手遅れであることくらいは、わかっていた。
一昔前に流行ったビデオが呪われている的なホラー映画や、ドラマが、正直レトロなんて持て囃されて、その良さもわからなかったけれど、まさか自分すらレトロになっていくだなんて思いもしなかった。
未田蒼助 は テレビに映る自分の同姓同名の男を見て目を疑っていた。目を疑続けて硬直していた。
四十年前に撮られたであろうこのVHS作品は、亡き父の遺品の中にあったものと同タイトルだ。それも処分してしまったわけだが、数年経った今現在、ビデオブームが到来し、あの頃は棄てたはずの同タイトルのホラービデオが気になり高額払って今手元にある満足感に浸っていたのが十五分ほど前の話である。
買う前から口コミで自分の名前が出ていることは知っていた。
だが実際観てみると気味が悪い。君が悪いと指を指したくなるくらいだ。指を指をと繰り返す文章も気味が、悪い。
四十年も昔、すなわち 未田が生まれてない頃に作られたビデオに同姓同名が登場していて、父の書斎にそのビデオがあったという事実もそうだが、
それよりも登場するクリーチャー役の赤い女…その女の顔が隣の部屋の女の顔にそっくりなのが一番君が悪かった。
そんなことをふと思っていると1ヶ月は鳴ってはいないであろう玄関のチャイムが鳴る。
礼儀がなっていないのかドアノブをガチャガチャと上げ下げする。
その音が怖いのであって別にその動作が怖いわけではないと自分の心情を推察する。
すみませーん という声が聞こえる。
隣の女だろう。
わかってはいた。 引っ越してきた時とゴミを捨てた時以外には滅多に会わない女が声をかけてくるなんてまず無い。
世にも珍しく奇妙な展開だとは思ってはいるが、全くの偶然だとも思える。
だが、わかってはいる。
今起きてるこの偶然は、全く関係ないなんてことは、無いことくらいわかってはいる。
午前二時五十四分。深夜真っ只中、
未田 蒼助は、今自分が置かれている状況を理解ていた。
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