ビデヲはあなた。

ヨコシマキンチョウダイ

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視界には銀灰色の靄。消え入りそうな蝉の声、四輪の排気と通りすがる人間の声が全く黒い塗料の瓦礫の絨毯に吸い込まれ、蜃気楼として吐露される様が写し出されていた。肌を伝う熱気が渇きを呼ぶ割には湿り気の多い気がして皮膚一枚下の生命の礎が際限なく、流れる川。
そのように思える流動はいつの日か聴いた嗚呼、川の流れように。
蝉の目覚まし時計に感化された私の頬には
粒。
首筋を流れたそれは即ち水滴。

汗。
水分を奪う熱は水っぽく、水分を吐く私の体は一時の寒色を憶える。
それは夏の気まぐれかはたまた通常営業の季節的信号とも呼べる性格の切れっ端か。

小さな頃見た短い石橋。
こんなところに信号なんて作って何の意味があるのかと同義な疑問を浮かべた石橋の下には申し訳程度の小川が流れていた。
私の皮膚一枚下にもその懐古の川が流れている。

ふと空を見上げると元気な太陽が未だ広いフレームの中に。
ジジジ。
蝉の声では無い。
脳裏の奥にジジジ。
ジィ…
懐古のビデオだ。
映し出されたテレビの砂嵐色のモノクロームが空を覆った気がした。

眩い陽光に目を瞑り空から目を逸らすと何も変わりの無い蜃気楼が私の水分を奪おうと佇んでいた。
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