ラジオの恋路-こいじ-

祝木田 吉可

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第8話:キューピッド

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その夜、男の姿は、駅前の代官町にある行きつけの焼き鳥屋「つくね」で、いつも通り、ひとり、ボトルキープした酒を嗜んでいた。

「健吾さん、今週もお疲れ様。何しましょう。」

最初の一杯の緑ハイ(焼酎の緑茶割り)を飲み干すといつも通りに注文した。

「ねぎま、手羽先、イカダ、ギンナンを2本ずつお願いします。」

「今日は、軟骨と鶏皮食べないんですね。」

「今日は、止めときます。」

「分かりました、お待ち下さい。」

店員が注文を通すのを確認すると、二杯目を作って飲みだした。

(携帯のバイブ音が鳴る。)

男は携帯を手に取り、LINEを確認する。

LINEは、女からだった。

「今日はお疲れ様、来週もよろしくね。ミカ」

そのLINEに男も直ぐに、「来週も一緒に頑張ろうね」と送り、再び一人、酒を楽しんだ。

頼んだ焼き鳥が無くなり、男は会計を済ませる。

「お会計、1800円です。」

「電子マネーで。」

(「シャリーン」と電子マネーの音が鳴る)

「ありがとうございます。このあと、あっち、寄られるんですか。」

「そうだね。明日、休みだから行こうかな。」

「楽しんでください。また、お待ちしてます。」

焼き鳥を出た男は、そのまま、代官町出口の所にあるスナックに入った。スナック「あっちこっち」、隔週に一回、男が「つくね」の帰りに通っている店だ。


(「カランカラン」と店の扉のベルが鳴る)

「健ちゃん、いらっしゃい。」

「サクラさん、こんばんは。」

「団体のお客さん、ちょうど帰られたから、いつも通り、サクちゃんで良いよ。」

「それは、流石にマズイよ。従姉妹の姉ちゃんとはいえ、ここ、お店だし。」

「そう?お姉ちゃんは気にしないよ。ここにいるの、民度の良い常連さんばかりだし、皆、私のことサクちゃんって呼んでるんだから。」

「そうなの?でも、なんか、外だと恥ずかしいよ。」

「そう?別に良いけど。」

男が、ここに通う理由、それは、男の従姉妹の姉ちゃん、サクラが、ここでママをしているからだ。男の10歳上のサクラは、小さい頃から男の面倒を見てくれ、悩み事や相談事も気軽に話せる、頼りになる存在なのだ。


(店の奥から女が、出てくる。)

「いらっしゃいませ~って、健吾くん!?」

「ど、どうも。」

「ここ、よく来るの?」

「時々かな。ミカさんは?」

「時々、ママのお手伝いしてるの。ママ、私のお姉ちゃんと中高同じの幼なじみで、私もお世話になったから、私からお願いして手伝わさせてもらってるの。」

(サクラが話に入ってきた。)

「二人とも知り合い?」

「同じ町内の仲の良い幼なじみだよ。」

(「仲の良い」って言ってくれた、、。)

(女は、男の言っていることに嬉しくなった。)

(サクラが話を続ける)

「じゃあ、二人は同じ町内だから、小さい頃から知ってるのね。私とミナミより長いってことだね。」

「でも、ママとお姉ちゃんみたいに高校まで一緒じゃないし、中学で途切れたからな。」

「でも、こうして今、また会えてるから良いんじゃない?」

(サクラは、男の表情を覗いて言った。その様子を見た女は、サクラに聴いてみた。)

「ママ、それってどういう?」

「さあ、どうだろうね。でも、これからもっと仲良く出来るってことだよね。」

(サクラは、そう言って、女にウインクした。)

(男は、恥ずかしくなって、ちょっとアウェーを感じて、席を立った。)

「、、、、今日はこれで、帰るよ。」

「うん。また、おいで。3500円ね。」

「はい。またね。」

(男は代金を置いて店を出た。)

「ありがとうございました。」

男の姿が見えなくなると、サクラは女に、言った。

「ミカちゃん、健吾をよろしくね。応援してるよ。」

そう言うと、お店に戻っていった。

女は深々と一礼すると、自然とガッツポーズが出た。


-続く-



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