異世界からの友好的侵略者にバカ惚れしたのでひたすら口説く

浦門

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二 最上霞は沈んでいる

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 裏側の異世界人はいつどこに現れるかわからないが、表側の連中だって普段どこにいるのかわからない。ニュースやネットの動画で見かけることはある。そういうのは大抵、各国首脳との対談だとかなんだとかで、どうもおれのような一般市民には現実味がない。かと思えばその辺を普通に歩き回っているときもある。そもそもこっちに来ている数が少ないから、実物を見るのは稀だ。――稀だった。少なくとも地球上では奴らはあまり群れないらしいから、その辺に居たとしても案外目立たなかったりする。
 で結局奴らが日頃どこにいるのかというと、然るべき持ち場に引きこもっているというのが正解のようだ。
 地球にいるのは言ってしまえば外国に出稼ぎに来てる状態なわけだし、こっちの文化に興味もなければ外を出歩くことも少ないんだろう。
 で、うちの隊長は普段どこにいるのかというと、例にもれず持ち場に引きこもっている。持ち場は、つまり第二十一緋連雀隊の拠点である市内の小さなビルだ。
 結構年季の入ったビルで外観はボロボロだ。ビルの建っている市街地もそれなりに古い街だから、街に違和感なく溶け込んでいるとも言える。周囲にコンビニやドラッグストアもあって非常に便利な立地。
 というか実際のところ、元々そこに建っていた古い雑居ビルを事務所として使ってるってだけだ。流石に現在は隊の拠点の他に、一般のテナントは入っていないが。
 それにしても外観は古く、中も古い。その上狭い。フロアごとに治療室や会議室が置いてあり、異世界の技術によって整備されているので見た目の古さに反して設備としては最新鋭である。……かどうかは、正直わからない。そういう技術はおれのような一般人類には理解し難い。
 エレベーターが使えないので最上階まで階段で登る。ないわけではない。乗るたびにいつロープが切れるのか不安になるような揺れで出迎えてくれる三人乗りぐらいの小さなエレベーターがビルに備え付けられてはいるが、勤務日には乗ることができない。そんな不安定なものに乗っている間に出動の呼び出しが出たら面倒だからだ。これは上から――つまり表側の連中から禁止されているわけではなく、同じ隊の五人で「古いエレベーターが怖い」という議題で話し合った結果、乗らないほうがいいだろうという結論に落ち着いただけでである。呼び出しのない休日は別に乗ってもいい。揺れが不安だが。
 最上階は五階。初めて登ったときにはそれなりに疲れて面倒に感じたが、ここ一ヶ月の訓練と血液に移植された未知の機械のおかげでその程度なんでもなくなった。
 しかし人類を侵略者から守る華々しい仕事を任されてる割には、市街地の片隅で空調も窓もないカビ臭い階段を地道に上り下りしていることを考えると、どうにも妙な気分になる。人生ってそんなもんだろうか。
 最上階。なんとかと煙は高いところが好きだと言うが、異世界人はどっちだ? 煙の方か。
 大抵いつも、隊長はここに引きこもっている。住んでいるのかもしれない。まだよくわからない。
「西川カイ」
 部屋の高い位置で二つの目がツ、と動いておれを見た。
 天井の高い薄暗い部屋、ぼんやり光るキューブ型の端末を両手に持って、今日は珍しく髪を頭の後ろで結んでいる。金属質の髪は見た目以上に金属的らしく、静電気を帯びて空中に丸く弧を描いて浮かんでいた。
 でおれはその目を見上げる。つまり浮いている。身体全部が部屋の中央にある。まるで天井に吊るされた椅子に座っているかのようにも見えた。
「ここ鍵とか掛けねえの?」
「必要性を感じたことはない」
 上から声が降ってくる。
 そう、異世界人ってのは飛べるのだ。人類とは身体の作りが違うわけだし、まあそういうこともある。しかしこの飛び方はおれが知ってるやり方じゃないな。
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