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告白
159.
しおりを挟む「おか、犯せって、なんだよ……簡単だって、なんだよ……そんなこと、出来るわけないだろ」
やり返せばいいとソンリェンは言った。さも気軽なことのように。
けれどもトイにはそんなことは出来ない。出来るわけがない。
「散々、オレを玩具にしたのはどこのどいつだよ……オレは、犯されてきたんだ、アンタたちを受け入れさせられてきたんだ、今更……今更、誰を抱けっていうんだ……ッ!」
ソンリェンが恐くて、ソンリェンを犯すことが出来ないわけじゃない。
ただ抱きたいと思えないのだ。相手が男性であれ女性であれ、トイが誰かを組み敷いて突っ込むだなんてあり得ない。
身体を、男しか受け入れられないように調教され続けた。
あの短くない期間で、心も身体もそう躾られた。男としての矜持を完膚無きまでに破壊され、受け入れる穴として再構築させられた。
今更戻れない。トイとソンリェンの進む道が交わることなど、ありえない。
あってはいけない。そんなの間違ってる。
「わか、わかんねえだろ、オレ、もう普通に、自慰したって……奥が、切なくて、苦しくて……普通に出せないんだよ……!」
ソンリェンになんかわかるはずがない。
性的なことをこんなにも恐れているはずのに、薬漬けにされた身体が時折どうしようもないほど苦しくなって、冷水を浴び続けても治らなくて、泣きながら一人で自慰をしたことだってある。
それでも陰茎を弄っただけではいくら射精しても熱が治まらなくて、足りなくて、結局濡れた膣壁と窄まったもう一つの穴を弄って、奥を掻き回して、胸の尖りを弄って、身体を慰めた。
そうすることでしか身体の快楽を高められない自分に、何度も嫌悪感を抱いて、屈辱感を噛みしめて絶望した。
それでも、男として生きて来たくせに女のように欲情することを止められない。
トイはもう歪な身体になってしまった。男性と女性の二つの性を持っているくせに、受け入れる側にしかなれない。
目の前にいる男のせいで。
それなのに、声変わりをしたから気持ち悪い、散々突っ込んだから飽きた、緩くなったから遊び辛くなった、反応が鈍くなってつまらなくなった、だなんて。
散々苦しめたくせに、そんな最悪な理由で最後の最後に壊されて、惨めに捨てられて。
どれだけトイが苦しみ抜いてこの1年間を過ごしてきたか、知らないくせに。
「オレもう、ふつうじゃ……普通の男なんか、もどれねえんだよ……なのに、なのに!」
「……トイ」
「トイって、呼ぶな!」
身体の奥底からどんどんと毒のような感情が溢れてくる。
今トイはありえないことを考えている。
自惚れであってほしかった。けれども諦めろと心の中は叫んでいる。本当はとうの昔に気が付いていたのかもしれない。
ソンリェンが、再びトイの前に現れた本当の理由を。
『月が、とても綺麗ですね』
『そうですね、死にたくなるほどに』
一人、狭い部屋の中で読んだ本。主人公の放った一言に同じ月を見上げていた人物はそう答えた。あの不思議な返答に込められていた、意味は。
『そ、そんりぇんは、キレイだって、思わ、ねえの?』
『そうだな、死んでもいい……死んでも、いいな』
──わからない。ソンリェンがトイに何を求めていたのか。
わかりたくなんか、ない。
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