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狼の群れ
08.
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「ねぇみんな、御両親はお元気? 聞こえてるよね」
姫宮が、地に伏している面々をぐるりと見まわした。
「僕のお友達がお世話になったみたいだから、一度きちんとご挨拶に伺いたいな。西園寺くんのお父様は整形外科クリニックの院長さんだったよね。明日にでも直接伺おうか。金子くんのお父様は政治家……だったっけ。よくお父様を夜の街でお見かけするよ。随分と面白い店に入り浸っているみたいだけど、金子くんも連れてってもらったことある? 早乙女くんのお父様は雅山学園の理事長だったっけ、懐かしいなぁ……一度、それぞれのお家にお邪魔させてもらったよね。忘れられないな、君たちのご両親が、『自慢の息子なんです』って誇らしげに笑っていらっしゃって……そんなご自慢のご子息が集団暴行事件の犯人になっちゃうなんて大変だな。世も末だ」
姫宮が乱れた浴衣をぱん、と整えた。
「開業医はつぶれやすいよね。ちなみに雅山学園とは僕も随分と深いお付き合いをしていてね。理事長ともお話しする機会が随分と多いんだ。親が政治家……ときたらいいゴシップネタだな。マスコミも報道各社も大きな家にぶわっと群がるだろうね。ああそういえば金子くんは妹さんもいたね……可愛いらしい子だったのを覚えてるよ。お兄ちゃんのことが大好きって言ってたっけ。金子くんもずいぶんと可愛がってたみたいだけど、妹さんは元気? 名前は確か、陽菜子ちゃんだったっけ。この前聖心女学校に入学したんだよね、おめでとう。大好きなお兄ちゃんのしていることが明るみ出たらお友達にどんな目で見られるんだろうね」
姫宮の口は一切止まらなかった。
「陽菜子ちゃん可愛らしい子だったから、ネットですぐに有名人になっちゃうね。顔も年齢も所属高校も部活も家族構成も全てが割れる」
「姫宮、せんぱ……」
「もしかしたら正義感溢れる人たちが陽菜子ちゃんを捕まえて同じ目にあわせてしまうかもしれないな、そうなったら可哀想だね、心配だよ」
「せ、せんぱい……!」
「うん、なに?」
「……」
何も言えないでいる金子の代わりに、折れた鼻を押えながら肩を震わせた西園寺だったが。
結局彼も、口を閉ざして俯いた。
鼻から溢れた血が、地面に小さな池を作っている。
「で、北条くんはいつまで寝てるの? 君とはこの中で一番、お話したいことがあるんだけどな」
姫宮が、木の幹に身体を預けて悶えている北条という男に近づいていった。
口の端から涎を垂らし続ける北条の顔をひょいと覗き込む。
「さっさと起きてくれないかな。中が破裂した感覚はなかったから大丈夫だろ?」
ここからでは姫宮の顔は見えない。けれども、姫宮を虚ろに見上げる北条の恐怖に染まり切った瞳を見れば、姫宮がどんな顔をしているのかはだいたい想像できる。
姫宮が、北条の前髪を掴んでゆっくりと持ち上げた。
「……ぅ゛」
そして彼の耳元に口を近づけ、囁いた。
「北条くんのお家は確か……老舗の旅館だったっけ。優しいお婆様が大切に守ってらっしゃる旅館だったね。一度遊びに行った時もすごく素敵なところだなって思ってね、今でも少しだけ支援させていただいているんだ。いつもありがとうございますって、君のお婆様から菓子折りだって頂くんだけど……ああ、そういえば君、子どもの頃は忙しい両親に代わってお婆さんが母親代わりだったんだっけ。奢らない、本当に心根の優しい真面目そうな方だった。そんな方が、大事に大事に育てたお孫さんが今こうして僕に叱られている理由を知ったらどう思うんだろうね。試してみようか? 君が幼少期を過ごした大事な旅館が……ふふ、廃墟になっちゃうかも。レイプ犯が育った場所だって有名になってね」
姫宮が、北条の下半身に足をがっと乗せた。
突然蹴り飛ばされたのでズボンを履き直す暇もなかったのだろう、剥き出しの彼の局部に。
俺の中に入りかけた、それに。
「ぐ、……ッ」
「どっちを選ぶ? 選択肢をあげる」
下駄の前の歯の部分が、陰茎にどんどん食い込んでいく。
「この汚いブツを今2つに分断されるのと、君の大好きなお婆様に全てがバレてお婆様が責任を取って首をくくるのと」
「……ぁ、き」
「10秒以内にこたえてくれる? 綺麗な庭園だったけど、あそこに君のお婆様はぶら下がるのかな」
ぶちゅりと音が聞こえてきそうなくらい、彼の急所が平たくなった。
「──姫宮」
声をかければ、姫宮の動きがぴたりと止まった。
「もう、いい。やめろ」
浴衣の前をかきあつめて、いろいろな人間の血が飛び散った地面を見つめる。
このままだと大事件に発展してしまう。
「……なに、可哀想だからやめろって? 相変わらずお人好しだな君は。そんなんだからこんな目にあうんだよ」
「違う。でももう、いいから……そこまでしてくれなくて、いい。そいつらもわかったろ」
姫宮は俺に視線をよこさず吐き捨てた。
「君、さっきこの男に何をされそうになったかわかってる?」
「わかってる」
「わかってない。だからそんなことが言えるんだよ」
「──違う、そういうつもりで言ってんじゃねぇよっ」
別に、そこにいる北条とかいう男を助けたいわけじゃない。
こんな男共、正直どうにでもなれって思ってる。
「確かに、こいつら性根、腐りきってると思うよ……ぶっ飛ばされちまえって思ってる。でも、でも」
でも、それ以上に。
「これ以上やったら、おまえの手が汚れるつってんだよ!」
姫宮が、地に伏している面々をぐるりと見まわした。
「僕のお友達がお世話になったみたいだから、一度きちんとご挨拶に伺いたいな。西園寺くんのお父様は整形外科クリニックの院長さんだったよね。明日にでも直接伺おうか。金子くんのお父様は政治家……だったっけ。よくお父様を夜の街でお見かけするよ。随分と面白い店に入り浸っているみたいだけど、金子くんも連れてってもらったことある? 早乙女くんのお父様は雅山学園の理事長だったっけ、懐かしいなぁ……一度、それぞれのお家にお邪魔させてもらったよね。忘れられないな、君たちのご両親が、『自慢の息子なんです』って誇らしげに笑っていらっしゃって……そんなご自慢のご子息が集団暴行事件の犯人になっちゃうなんて大変だな。世も末だ」
姫宮が乱れた浴衣をぱん、と整えた。
「開業医はつぶれやすいよね。ちなみに雅山学園とは僕も随分と深いお付き合いをしていてね。理事長ともお話しする機会が随分と多いんだ。親が政治家……ときたらいいゴシップネタだな。マスコミも報道各社も大きな家にぶわっと群がるだろうね。ああそういえば金子くんは妹さんもいたね……可愛いらしい子だったのを覚えてるよ。お兄ちゃんのことが大好きって言ってたっけ。金子くんもずいぶんと可愛がってたみたいだけど、妹さんは元気? 名前は確か、陽菜子ちゃんだったっけ。この前聖心女学校に入学したんだよね、おめでとう。大好きなお兄ちゃんのしていることが明るみ出たらお友達にどんな目で見られるんだろうね」
姫宮の口は一切止まらなかった。
「陽菜子ちゃん可愛らしい子だったから、ネットですぐに有名人になっちゃうね。顔も年齢も所属高校も部活も家族構成も全てが割れる」
「姫宮、せんぱ……」
「もしかしたら正義感溢れる人たちが陽菜子ちゃんを捕まえて同じ目にあわせてしまうかもしれないな、そうなったら可哀想だね、心配だよ」
「せ、せんぱい……!」
「うん、なに?」
「……」
何も言えないでいる金子の代わりに、折れた鼻を押えながら肩を震わせた西園寺だったが。
結局彼も、口を閉ざして俯いた。
鼻から溢れた血が、地面に小さな池を作っている。
「で、北条くんはいつまで寝てるの? 君とはこの中で一番、お話したいことがあるんだけどな」
姫宮が、木の幹に身体を預けて悶えている北条という男に近づいていった。
口の端から涎を垂らし続ける北条の顔をひょいと覗き込む。
「さっさと起きてくれないかな。中が破裂した感覚はなかったから大丈夫だろ?」
ここからでは姫宮の顔は見えない。けれども、姫宮を虚ろに見上げる北条の恐怖に染まり切った瞳を見れば、姫宮がどんな顔をしているのかはだいたい想像できる。
姫宮が、北条の前髪を掴んでゆっくりと持ち上げた。
「……ぅ゛」
そして彼の耳元に口を近づけ、囁いた。
「北条くんのお家は確か……老舗の旅館だったっけ。優しいお婆様が大切に守ってらっしゃる旅館だったね。一度遊びに行った時もすごく素敵なところだなって思ってね、今でも少しだけ支援させていただいているんだ。いつもありがとうございますって、君のお婆様から菓子折りだって頂くんだけど……ああ、そういえば君、子どもの頃は忙しい両親に代わってお婆さんが母親代わりだったんだっけ。奢らない、本当に心根の優しい真面目そうな方だった。そんな方が、大事に大事に育てたお孫さんが今こうして僕に叱られている理由を知ったらどう思うんだろうね。試してみようか? 君が幼少期を過ごした大事な旅館が……ふふ、廃墟になっちゃうかも。レイプ犯が育った場所だって有名になってね」
姫宮が、北条の下半身に足をがっと乗せた。
突然蹴り飛ばされたのでズボンを履き直す暇もなかったのだろう、剥き出しの彼の局部に。
俺の中に入りかけた、それに。
「ぐ、……ッ」
「どっちを選ぶ? 選択肢をあげる」
下駄の前の歯の部分が、陰茎にどんどん食い込んでいく。
「この汚いブツを今2つに分断されるのと、君の大好きなお婆様に全てがバレてお婆様が責任を取って首をくくるのと」
「……ぁ、き」
「10秒以内にこたえてくれる? 綺麗な庭園だったけど、あそこに君のお婆様はぶら下がるのかな」
ぶちゅりと音が聞こえてきそうなくらい、彼の急所が平たくなった。
「──姫宮」
声をかければ、姫宮の動きがぴたりと止まった。
「もう、いい。やめろ」
浴衣の前をかきあつめて、いろいろな人間の血が飛び散った地面を見つめる。
このままだと大事件に発展してしまう。
「……なに、可哀想だからやめろって? 相変わらずお人好しだな君は。そんなんだからこんな目にあうんだよ」
「違う。でももう、いいから……そこまでしてくれなくて、いい。そいつらもわかったろ」
姫宮は俺に視線をよこさず吐き捨てた。
「君、さっきこの男に何をされそうになったかわかってる?」
「わかってる」
「わかってない。だからそんなことが言えるんだよ」
「──違う、そういうつもりで言ってんじゃねぇよっ」
別に、そこにいる北条とかいう男を助けたいわけじゃない。
こんな男共、正直どうにでもなれって思ってる。
「確かに、こいつら性根、腐りきってると思うよ……ぶっ飛ばされちまえって思ってる。でも、でも」
でも、それ以上に。
「これ以上やったら、おまえの手が汚れるつってんだよ!」
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