夏の嵐

宝楓カチカ🌹

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透愛と樹李

20.

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 今度はねっとりと、そして舌で一気に深くまで。姫宮は俺の一挙手一投足を見逃さないとばかりに、ギラギラと目を開けている。
 そのまま舌で翻弄してくる姫宮を前にすると、ぎゅうっとまぶたを閉じてしまった。
 やっぱり直視できない。頬が、痛いぐらいに熱くて、熱くて。

「ん……は……ぁ」
「どうして目を逸らすの?」
「だ、だって」
「さっきは漢らしく、君の方からキスしてくれたのにね」

 こつんと額を合わせられて、ふ、と姫宮の熱い吐息が唇に触れて──表現しがたい羞恥は最高潮に達した。ぎゅううっと、肩に添えていた手に力がこもり、姫宮の服に爪を立ててしまう。
 
「そう、恥ずかしいんだね……照れてるの? 可愛い、このまま舌の先から食べてしまいたいな……」
「~~~っも、いうな、そーゆーことを!」

 もう、きっと100度以上に達しているであろう頬が溶けないようにすることで、必死だった。

「どうして? だって、君が僕の気持ちが信じられないっていうから伝えてるのに」
「し、信じた!」
「本当に?」
「信じたってばぁ!」

 声を張り上げる。それなのにこの男は、くつりと喉を震わせて笑うから。

「そう、よかった」
「~~ッ、おっ、おまえホント、性格悪い! さいってい!」
「君にだけだ」
「……っ、」

 腰の位置も足の長さも腕の長さも、そして最後にまるめこまれてしまうところも、こいつには叶わないだなんて。

「君にだけだよ……好きだから」

 ゆるゆると、唾液に濡れた唇を人差し指の腹で撫でられる。

「ただ、君が好きなだけなんだ……どうしたらいいんだろうね。君と夢にまで見たこういう関係になれて、感情がずっと昂ぶっていて治まらないんだ……」

 どうしたらって──そんなの。

「そんなの、簡単じゃん」
「え?」

 これだけ翻弄されたんだ。俺だってずっと口に出来なかった一言を、言ってやる。

「今度からは煙草じゃなくてさ……俺のくちびる、吸えばいーだろ?」

 慣れない誘い文句とやらを乗せた唇が、甘ったるくとんがってしまった。姫宮はしばし表情を変えないままだったのだが──突然、がばっと肩を、痛いぐらいに掴まれた。

「あたたたっ、力強いって!」
「──頼むから僕以外の生き物の前で今の顔はしないでくれ」
「へ? いや、なんでだよ」
「僕の心臓が持たない」

 怒ったような顔をしている。
 突然の奇行に目を白黒させ──はっとして、慌てて自分の頬を押さえた。
 いや……確かにドヤ顔で、「俺の唇、吸えよ」とか……改めて考えるとちょっと気障ったらしいというか、あれだな、キモいよな? こんなセリフが許されるのは少女漫画のイケメンヒーローまでだ。
 気恥ずかしさもあって、汗もダラダラで見るに堪えない顔になってしまっていただろうし。
 熱を冷やすためにぱたぱたと頬を手で扇ぐ。

「だ、だよな、変な顔になっちまってたよな。でも違ぇんだって、なんか顔がずっとあっちィし、このままじゃほっぺ溶けちまうと思って……落ちてねぇ?」

 今にも垂れそうな自分の頬っぺたをむに、と押さえて姫宮をちらりと見れば、何故か舌打ちをされた。

「は? バカで可愛いな」
「……あ?」
「頬が溶けるわけないだろう」
「わかってるわそんなこと! 比喩だ比喩っ」
「頬が落ちるってことを言いたいんだろうけどそれ自体が使い方間違ってるよ。驚きだな、どうしてそれで大学に入れたんだ? どうしてそんなにバカなのにいちいち仕草が可愛さの大渋滞なんだ? 君は一体僕をどうするつもりなんだ? いい加減にしろ」
「うん、どうかしてんのはおまえの頭だ」

 なんかちょっと頬も冷めたわ。
 こいつは俺をディスりたいのか褒めたいのかどっちなんだ。

「──駄目だ、やっぱりどこかに閉じ込めておかないとマズいな……第一候補は海外か、どこかアマゾンの奥地、いやサバンナの奥地にでも……ああ、そういえば開発前の土地であれば、確かいいのが一つ……」
「な、なんの話だよ」

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