夏の嵐

宝楓カチカ🌹

文字の大きさ
199 / 227
透愛と樹李

20.

しおりを挟む
 今度はねっとりと、そして舌で一気に深くまで。姫宮は俺の一挙手一投足を見逃さないとばかりに、ギラギラと目を開けている。
 そのまま舌で翻弄してくる姫宮を前にすると、ぎゅうっとまぶたを閉じてしまった。
 やっぱり直視できない。頬が、痛いぐらいに熱くて、熱くて。

「ん……は……ぁ」
「どうして目を逸らすの?」
「だ、だって」
「さっきは漢らしく、君の方からキスしてくれたのにね」

 こつんと額を合わせられて、ふ、と姫宮の熱い吐息が唇に触れて──表現しがたい羞恥は最高潮に達した。ぎゅううっと、肩に添えていた手に力がこもり、姫宮の服に爪を立ててしまう。
 
「そう、恥ずかしいんだね……照れてるの? 可愛い、このまま舌の先から食べてしまいたいな……」
「~~~っも、いうな、そーゆーことを!」

 もう、きっと100度以上に達しているであろう頬が溶けないようにすることで、必死だった。

「どうして? だって、君が僕の気持ちが信じられないっていうから伝えてるのに」
「し、信じた!」
「本当に?」
「信じたってばぁ!」

 声を張り上げる。それなのにこの男は、くつりと喉を震わせて笑うから。

「そう、よかった」
「~~ッ、おっ、おまえホント、性格悪い! さいってい!」
「君にだけだ」
「……っ、」

 腰の位置も足の長さも腕の長さも、そして最後にまるめこまれてしまうところも、こいつには叶わないだなんて。

「君にだけだよ……好きだから」

 ゆるゆると、唾液に濡れた唇を人差し指の腹で撫でられる。

「ただ、君が好きなだけなんだ……どうしたらいいんだろうね。君と夢にまで見たこういう関係になれて、感情がずっと昂ぶっていて治まらないんだ……」

 どうしたらって──そんなの。

「そんなの、簡単じゃん」
「え?」

 これだけ翻弄されたんだ。俺だってずっと口に出来なかった一言を、言ってやる。

「今度からは煙草じゃなくてさ……俺のくちびる、吸えばいーだろ?」

 慣れない誘い文句とやらを乗せた唇が、甘ったるくとんがってしまった。姫宮はしばし表情を変えないままだったのだが──突然、がばっと肩を、痛いぐらいに掴まれた。

「あたたたっ、力強いって!」
「──頼むから僕以外の生き物の前で今の顔はしないでくれ」
「へ? いや、なんでだよ」
「僕の心臓が持たない」

 怒ったような顔をしている。
 突然の奇行に目を白黒させ──はっとして、慌てて自分の頬を押さえた。
 いや……確かにドヤ顔で、「俺の唇、吸えよ」とか……改めて考えるとちょっと気障ったらしいというか、あれだな、キモいよな? こんなセリフが許されるのは少女漫画のイケメンヒーローまでだ。
 気恥ずかしさもあって、汗もダラダラで見るに堪えない顔になってしまっていただろうし。
 熱を冷やすためにぱたぱたと頬を手で扇ぐ。

「だ、だよな、変な顔になっちまってたよな。でも違ぇんだって、なんか顔がずっとあっちィし、このままじゃほっぺ溶けちまうと思って……落ちてねぇ?」

 今にも垂れそうな自分の頬っぺたをむに、と押さえて姫宮をちらりと見れば、何故か舌打ちをされた。

「は? バカで可愛いな」
「……あ?」
「頬が溶けるわけないだろう」
「わかってるわそんなこと! 比喩だ比喩っ」
「頬が落ちるってことを言いたいんだろうけどそれ自体が使い方間違ってるよ。驚きだな、どうしてそれで大学に入れたんだ? どうしてそんなにバカなのにいちいち仕草が可愛さの大渋滞なんだ? 君は一体僕をどうするつもりなんだ? いい加減にしろ」
「うん、どうかしてんのはおまえの頭だ」

 なんかちょっと頬も冷めたわ。
 こいつは俺をディスりたいのか褒めたいのかどっちなんだ。

「──駄目だ、やっぱりどこかに閉じ込めておかないとマズいな……第一候補は海外か、どこかアマゾンの奥地、いやサバンナの奥地にでも……ああ、そういえば開発前の土地であれば、確かいいのが一つ……」
「な、なんの話だよ」

しおりを挟む
感想 142

あなたにおすすめの小説

幼馴染みが屈折している

サトー
BL
「どの女もみんな最低だったよ。俺がちょっと優しくしただけで、全員簡単に俺なんかと寝てさ」 大学生の早川 ルイは、幼馴染みのヒカルに何をやっても勝てないといつも劣等感を感じていた。 勉強やスポーツはもちろんヒカルの方ができる、合コンはヒカルのオマケで呼ばれるし、好みの女子がいても皆ヒカルの方にとられてしまう。 コンプレックスを拗らせる日々だったが、ある日ヒカルの恋愛事情に口を挟んだことから急速に二人の関係は変化していく。 ※レオとルイが結ばれるIFエピソードについては「IF ROOT」という作品で独立させました。今後レオとのエピソードはそちらに投稿します。 ※この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

イケメン幼馴染に執着されるSub

ひな
BL
normalだと思ってた俺がまさかの… 支配されたくない 俺がSubなんかじゃない 逃げたい 愛されたくない  こんなの俺じゃない。

短編集

ミカン
BL
一話完結のBL小説の短編集です

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

双獄譚 (烏間冥×櫻井乃、伊織×櫻井乃)

朝比奈*文字書き
BL
【あらすじ】 「逃げたって無駄だよ。僕の“人”になるって、そういうことなんだから」 ヤクザの養子として育てられた少年・櫻井乃は、 組織の若頭・烏間冥からの異常な執着と所有欲に日々縛られていた。 しかし、ある日彼は組を飛び出し、人外専門の裏組織《紅蓮の檻》の地へと逃げ込む。 そこで出会ったのは、冷静で強面な頭領・伊織。 己の正義と“獣の理”の狭間で生きる伊織は、乃をかくまうことに決める。 だが、その選択は、冥の狂気を呼び起こすものだった。 「壊れてても、血まみれでも……僕は欲しいって思ったら手に入れる」 血と執着のぶつかり合い。 牙を剥く二つの“檻”と、ただ一人、その狭間に立たされる少年。 心を奪うのは、守る者か、囚える者か――。

仕方なく配信してただけなのに恋人にお仕置される話

カイン
BL
ドSなお仕置をされる配信者のお話

こわがりオメガは溺愛アルファ様と毎日おいかけっこ♡

なお
BL
政略結婚(?)したアルファの旦那様をこわがってるオメガ。 あまり近付かないようにしようと逃げ回っている。発情期も結婚してから来ないし、番になってない。このままじゃ離婚になるかもしれない…。 ♡♡♡ 恐いけど、きっと旦那様のことは好いてるのかな?なオメガ受けちゃん。ちゃんとアルファ旦那攻め様に甘々どろどろに溺愛されて、たまに垣間見えるアルファの執着も楽しめるように書きたいところだけ書くみたいになるかもしれないのでストーリーは面白くないかもです!!!ごめんなさい!!!

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

処理中です...