クラスでバカにされてるオタクなぼくが、気づいたら不良たちから崇拝されててガクブル

諏訪錦

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続、青春×グラフィティ

3裏ー1

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「ねえ石神。あんたどうする? このあと小内さんの誘いでクラブイベント参加するんだけど」
冗談でしょ? 
クラブなんて絶対に行かないわよ。
もう二度と不良に誘拐されるなんて怖い思いしたくない。
それに、間久辺はこのあと用事があるみたいで、オタク仲間たちと一緒に帰るらしい。だったらここに残る理由もないわ。
そう思ったウチは、すぐに誘いを辞退した。
「えー、あんたの友達、参加するって言ってるのよ。どうするわけ?」
「別にウチがいなくたって大丈夫じゃないですか。沢渡さんたち、さっきのカラオケで、もうすっかり仲良くなったみたいだし」
「はあ? 石神っていう共通の知り合いがいるから成り立ってたんじゃん。初対面の女子とかマジ勘弁。気ぃ遣うのタルいんだけど」
男女でのコミュニケーションの頑張り方に偏りがありすぎだ、この人。
「さっきの合コンでは、男性陣にすごい媚びうってたじゃないですか。あの半分でもいいいから二人に向ければすぐ友達になれますよ」
「そう見えた? 別に、メンズ全員に媚びうってたつもりはなかったんだけど」
確かに、そうかもしれない。
男子全員に媚びをうっているように見えたが、その中でも小内という人に対してだけは特別意識しているように感じられた。
「沢渡さんの狙いは小内さんですか? あの人、なんかしゃべり方とかおかしくないですか?」
「もしかして石神、知らないの?」
その言葉に首をひねったウチを見て、
「うわ、マジか。あの人ファッション界ではかなり有名人なのよ。気に入られたら色々得じゃない」と沢渡さんは言った。
「え、そんな理由であんなに密着してたんですか?」
カラオケボックスで、沢渡さんは常に小内さんに腕を絡めていた。ウチにはとても真似できない芸当だわ。
「なに言ってるの、小内さん目当てじゃなきゃ、このあたしがあんなショボい合コンに参加するわけないでしょう?」
そうか、今日の合コンの目的はつまり、小内さんに気に入らることだったのか。そうすれば仕事がやりやすくなるという理由で、沢渡さんは彼に取り入ろうとしていた。相変わらず、すごい行動力だわ。

「だから石神、安心して。あの地味なオタクくんにはちょっかい出さないから」

いきなり沢渡さんがそんなことを言ってくるものだから、ウチは思わず口をあんぐり開けてしまう。
「まさか、気づいてないと思った? あんた、あの地味なオタクくんのこと見すぎだから。名前なんだっけ?確か、ま、ま、間抜け?」
「間久辺よ!」
前を歩く安住と坂崎が声に驚いて振り返る。
ウチは声をしぼって、言った。
「ウチ、そんなにわかりやすかったですか?」
「どうだろう。気にして見なきゃ気づかないレベルだと思うけど、あたしの目は誤魔化せないよ」
さすが、自称恋愛マスターを名乗るだけのことはある。欠陥があるとすれば、相談される同性の友人がいないということだ。異性の場合、相談に乗っているうちに自分のものにしてしまうためもっと問題だ。
「ひとつ聞きたいんですけど、沢渡さんは、ああいうタイプって付き合ったことありますか?」
「あたしがオタクと? はは、あるわけないじゃん。やめてよ石神、マジウケる」
別に冗談を言ったつもりなんてないのに、お腹を抱えて笑い出す沢渡さん。
「そんなにおかしいことですか?」
思わずムスッとして食ってかかると、沢渡さんは急に笑顔を消し、「おかしいよ」と言い放った。
「あのね石神。人間関係にはどうしたってカーストが存在するものよ。あたしやあなたは言うまでもなく上位で、あのオタクくんは下位。うまくいくわけない」
「そんなの、わからないじゃなですか」
「わかるよ。断言してもいい。もしあのオタクくんと付き合ったとして、石神は必ず後悔することになるよ。それは誰のせいでもない。住む世界が違うのだから、価値観だって当然違う。それは異性に限らず、他人と関わり合う上で致命的なことだわ」
自分のことを棚にあげてよくもぬけぬけと人間関係について語れるものだ。
間久辺のことなにも知らないくせに、好き勝手言って、ふざけるな………と、彼女の言葉を一蹴することが、ウチにはできなかった。
オタクなんてキモいだけだとバカにして、下に見てたのはウチも同じ。無意識に自分より格下だと決めつけていたことを今さらなかったことにはできない。
それでも、頑張ると決めた。
百合がそう言って、応援してくれたから。
ウチの決意にも似た言葉に、沢渡さんは一言、

「ーー頑張る必要なんてないでしょう?」

そう、言ってのけた。
「あのレベルの男落とすのに努力とかバカバカしいって。というか、あんた撮影でさんざん良い男見てるでしょ? ああいうのよ、努力する対象って。それに、ビジュアル的にもそのほうがおさまりいいし。あんたに似合うのは、一緒に雑誌のページを飾るような相手なの、わかる? それが結果的にお互いにのためになるのよ」
「わかりません。沢渡さんの言ってることが、ウチにはぜんぜん」
「想像してみて。仮にあなたとあのオタクくんが付き合ったとして、石神はそれでいいかもしれない。だけど、相手は? きっとあなたとの違いを感じて苦しむことになるよ。だって、雑誌で彼女の隣に自分よりもお似合いな男が並んで写るんだよ。劣等感を抱かない方がおかしいでしょう」

そんな思いをさせてまで、あなたは自分の思いを通せるの? 

沢渡さんの言葉は、心に深く突き刺さった気がした。
ウチは、どうしたらいいんだろう。
間久辺の思いを知りながらーーー
百合に真実を隠しながらーーー

自分の思いを貫くことが許されるの?

悩みが表情に出ていたのか、
「そんな顔しないで。別に、石神を追い詰めるつもりで言ってるわけじゃないんだから」
そう言って笑顔をつくった沢渡さんは、ケータイ電話を取り出すと、笑顔のまま操作し始めた。
少し遅れて、ウチのケータイにメールが届いた。
差出人は目の前にいる沢渡さんで、内容を確認すると、そこには知らない番号とアドレスが書かれていた。
「ねえ石神、この間あなたが撮影で一緒になったメンズモデル覚えてるでしょう?」
それはつまり、一番最近雑誌に掲載された撮影のことだろうか。
ウチは頷いて、「覚えてます」と答えた。
「良かった。あのモデルがあなたに興味あるらしくって、連絡先を聞いてきたのよ」
そういえば心当たりがある。確か撮影の合間や、終わった後もしつこく連絡先を聞いてきたのよね、あのメンズモデル。ウザかったから後半無視したらもう話しかけてこなくなったし、諦めたと思っていたのに。
「まさか、教えてませんよね?」
「当たり前じゃん。さすがに勝手に教えたりしないよ。だから、逆に連絡先を渡しておいてくれって頼まれたの。その番号が連絡先だから、暇な時は連絡してだってさ」

はあ、面倒くさいな。
ウチは適当に相づちを打ちながら、連絡先をすぐに削除した。そうとも知らずに、ニヤついた笑みのまま近づいてきた沢渡さんは、耳元で小さくこう言った。
「あんたの友達もあのオタクたちもダサすぎ。ガキのお遊びに付き合わされてマジたるかったわぁ。ねえ石神、そこに連絡してメンズ揃えてもらってよ。あんたが来るなら合コン、やってもいいって言ってくれてるんだよね。今日みたいなお遊びじゃなくて、今度は本当の合コンやろうよ」

パン、と破裂したような乾いた音がした。ウチが振り上げた掌が、沢渡さんの頬を思い切り叩いた音だ。
彼女は痛みよりも、驚きに心が支配されたような、そんな呆けた顔を向ける。
「前言撤回。沢渡さん、あんたに友達なんてできないよ」
「は、はぁ? ちょっと、意味わかんないんだど! どうして叩かれなきゃいけないわけ?」
「それがわからないくせに、よくウチと間久辺の事とやかく言えましたよね」
この人がこういう人間だということはわかっていたつもりだった。だけど、さすがに許せない。
沢渡さんはつまり、メンズモデルとの合コンをセッティングしたかったから、間久辺との仲を否定し、ウチが貰った番号に連絡するように仕向けたのだろう。
そんな下らないことのために彼女は、間久辺やウチの友達のことを貶めたんだ。
「沢渡さん。あなたのこと、軽蔑します」
そうしてウチは、彼女に背中を向けた。
状況を遠くから見ていた安住と坂崎は、口出しするべきではないと感じ取ったのか、追いかけて来なかった。
二人には明日、謝っておこう。
今はとにかく、沢渡さんの顔を見ていたくなくて、その場を離れた。

夜風に当たっている内に少しずつだけど気持ちが落ち着いてきた。

ふと視界の隅で、見覚えのある顔がチラと見えて、ウチは振り向いた。そこにはなにか大きな包みのような物を抱えて走り去る、江津の姿があった。
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