強者がただ強いだけとは限らない

あるみな

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色欲も良いことばかりでは無い

《十九之罪》兎にも角にも決勝戦

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戦いは、私の優勢である。

刀VS双剣。明らかに部が悪いのは私にある。
だが私は、弱点となる『手数の多い攻撃』を克服しているため、武装の数はハンデにならなかった。
左右から次々に、多方向から迫ってくる斬撃を、刀の刀身すべてを以てはじき、男の身体に浅い傷をつけた。
与える傷は深くなくてもよい。この分だといずれはあちらが音を上げる筈だ。

遂に男は果敢に攻めることを止め、跳んで距離を離し、体制を整える。
私はそれを逃がさない。全速力で間合いを詰める。

「...まだ早いか...」

男はそう漏らした。

瞬間、私の周囲の景色がぼやけて来た。

「っ...目くらましか...。」

そのぼやけ、いや、くもりは徐々に濃くなっていき、次第には一寸先すら見えないという状態となってしまった。

「これは...霧か!?」

魔法の属性は、火、水、風、雷、土、毒、聖、闇の八属性に分類され、一人一属性が基本だ。
だが稀に、それを二属性、三属性など、複数の属性を操る者が存在するが、それらは属性を合成して作られた魔法、「複合魔法」を使う者がいる。

私が今目の前にしているのは、火属性と水属性を複合して作られた、霧だ。

二属性持ちかそれ以上は魔法使いとして重宝される。なのにどうして、彼は剣士となったのだろう。

そんな考えをしている間に、彼はその霧の中に紛れてしまった。
霧の魔力のせいか、足音や気配までもが完全に隠れてしまっている。
この中で下手に暴れても、逆に体力が奪われるだけで無駄になる。
私はそっと目を閉じ、意識を集中させた。

...だめだ、何も分かんない。

「こうなったら、仕方ない。あまり使いたく無かったんだが...。」

私は目を閉じたまま、オドを練り右手に集め始めた。
そしてそれを握り、自分の心臓部にあてがう。
すると心臓の拍が一拍だけ大きく鳴り、それと同時に薄い光の波紋が周囲に広がっていく。
探知シーク。 自分の心臓の音を拡散させた反響定位エコーロケーションだ。

音の反響に耳を澄ませる。


「......えっ?」


反応が、無かった。

自慢ではないが反響定位エコーロケーションは得意である。
このような失敗は滅多になく、霧が晴れるとそこには、誰もいなかった。

兵士が法螺を吹く。
試合中の途中退場は棄権とみなされるらしく、わたしは流れで不戦勝となった。

ここまで来て棄権など、あまり考えられない事だ。だが勝てたのなら良い。
私はあまり満足感の無いまま、庭を後にした。

最後の戦いまでは時間が有り余っている。暫くは暇を持て余しそうだ。

この試合、決勝まで行う必要はない。
決勝まで駒を進めただけで、選抜に選ばれるのは決まっているのだ。

私は次の試合まで、寝ることにした。
体調は万全で無くてはならない。


...。



※※※※※



決勝のステージは、いつもの庭では無かった。城の王室、つまり、王の目の前で戦う事になる。

兵士に案内された私は感動の溜息を漏らす。
大理石で作られた白く、そしてとても大きな王室には、沢山の見物人がいた。そしてその中に、ルシフとエーシュの姿もあった。
そして私は、その光景に驚いた。

誰も、エーシュに注目していない。

珍しい事もあるものだ。
試合が始まっているのならいざ知らず...

と、私の視線は別の方向へと向いた。
その視線は観客の中央に行き...

「おー、お前さんも上がって来たか。」

声の主である男は私を見つけると、大きく手を振って出迎えてきた。

「えっと......」
「俺だよ俺!...ってあれ?自己紹介してなかったっけか?」

男は「ははは!」と笑う。
男の目にかかる茶髪には見覚えがあった。そう言えばあの時は名前を聞いてなかったな。

「俺の名前はリフレ。よろしくな!」

そう言ってリフレは握手をしようと右手を差し出してくる。

そんな彼の身体には、傷の一つもついていなかった...。


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