20 / 25
色欲も良いことばかりでは無い
《十九之罪》兎にも角にも決勝戦
しおりを挟む
戦いは、私の優勢である。
刀VS双剣。明らかに部が悪いのは私にある。
だが私は、弱点となる『手数の多い攻撃』を克服しているため、武装の数はハンデにならなかった。
左右から次々に、多方向から迫ってくる斬撃を、刀の刀身すべてを以てはじき、男の身体に浅い傷をつけた。
与える傷は深くなくてもよい。この分だといずれはあちらが音を上げる筈だ。
遂に男は果敢に攻めることを止め、跳んで距離を離し、体制を整える。
私はそれを逃がさない。全速力で間合いを詰める。
「...まだ早いか...」
男はそう漏らした。
瞬間、私の周囲の景色がぼやけて来た。
「っ...目くらましか...。」
そのぼやけ、いや、くもりは徐々に濃くなっていき、次第には一寸先すら見えないという状態となってしまった。
「これは...霧か!?」
魔法の属性は、火、水、風、雷、土、毒、聖、闇の八属性に分類され、一人一属性が基本だ。
だが稀に、それを二属性、三属性など、複数の属性を操る者が存在するが、それらは属性を合成して作られた魔法、「複合魔法」を使う者がいる。
私が今目の前にしているのは、火属性と水属性を複合して作られた、霧だ。
二属性持ちかそれ以上は魔法使いとして重宝される。なのにどうして、彼は剣士となったのだろう。
そんな考えをしている間に、彼はその霧の中に紛れてしまった。
霧の魔力のせいか、足音や気配までもが完全に隠れてしまっている。
この中で下手に暴れても、逆に体力が奪われるだけで無駄になる。
私はそっと目を閉じ、意識を集中させた。
...だめだ、何も分かんない。
「こうなったら、仕方ない。あまり使いたく無かったんだが...。」
私は目を閉じたまま、オドを練り右手に集め始めた。
そしてそれを握り、自分の心臓部にあてがう。
すると心臓の拍が一拍だけ大きく鳴り、それと同時に薄い光の波紋が周囲に広がっていく。
探知。 自分の心臓の音を拡散させた反響定位だ。
音の反響に耳を澄ませる。
「......えっ?」
反応が、無かった。
自慢ではないが反響定位は得意である。
このような失敗は滅多になく、霧が晴れるとそこには、誰もいなかった。
兵士が法螺を吹く。
試合中の途中退場は棄権とみなされるらしく、わたしは流れで不戦勝となった。
ここまで来て棄権など、あまり考えられない事だ。だが勝てたのなら良い。
私はあまり満足感の無いまま、庭を後にした。
最後の戦いまでは時間が有り余っている。暫くは暇を持て余しそうだ。
この試合、決勝まで行う必要はない。
決勝まで駒を進めただけで、選抜に選ばれるのは決まっているのだ。
私は次の試合まで、寝ることにした。
体調は万全で無くてはならない。
...。
※※※※※
決勝のステージは、いつもの庭では無かった。城の王室、つまり、王の目の前で戦う事になる。
兵士に案内された私は感動の溜息を漏らす。
大理石で作られた白く、そしてとても大きな王室には、沢山の見物人がいた。そしてその中に、ルシフとエーシュの姿もあった。
そして私は、その光景に驚いた。
誰も、エーシュに注目していない。
珍しい事もあるものだ。
試合が始まっているのならいざ知らず...
と、私の視線は別の方向へと向いた。
その視線は観客の中央に行き...
「おー、お前さんも上がって来たか。」
声の主である男は私を見つけると、大きく手を振って出迎えてきた。
「えっと......」
「俺だよ俺!...ってあれ?自己紹介してなかったっけか?」
男は「ははは!」と笑う。
男の目にかかる茶髪には見覚えがあった。そう言えばあの時は名前を聞いてなかったな。
「俺の名前はリフレ。よろしくな!」
そう言ってリフレは握手をしようと右手を差し出してくる。
そんな彼の身体には、傷の一つもついていなかった...。
───────────────
刀VS双剣。明らかに部が悪いのは私にある。
だが私は、弱点となる『手数の多い攻撃』を克服しているため、武装の数はハンデにならなかった。
左右から次々に、多方向から迫ってくる斬撃を、刀の刀身すべてを以てはじき、男の身体に浅い傷をつけた。
与える傷は深くなくてもよい。この分だといずれはあちらが音を上げる筈だ。
遂に男は果敢に攻めることを止め、跳んで距離を離し、体制を整える。
私はそれを逃がさない。全速力で間合いを詰める。
「...まだ早いか...」
男はそう漏らした。
瞬間、私の周囲の景色がぼやけて来た。
「っ...目くらましか...。」
そのぼやけ、いや、くもりは徐々に濃くなっていき、次第には一寸先すら見えないという状態となってしまった。
「これは...霧か!?」
魔法の属性は、火、水、風、雷、土、毒、聖、闇の八属性に分類され、一人一属性が基本だ。
だが稀に、それを二属性、三属性など、複数の属性を操る者が存在するが、それらは属性を合成して作られた魔法、「複合魔法」を使う者がいる。
私が今目の前にしているのは、火属性と水属性を複合して作られた、霧だ。
二属性持ちかそれ以上は魔法使いとして重宝される。なのにどうして、彼は剣士となったのだろう。
そんな考えをしている間に、彼はその霧の中に紛れてしまった。
霧の魔力のせいか、足音や気配までもが完全に隠れてしまっている。
この中で下手に暴れても、逆に体力が奪われるだけで無駄になる。
私はそっと目を閉じ、意識を集中させた。
...だめだ、何も分かんない。
「こうなったら、仕方ない。あまり使いたく無かったんだが...。」
私は目を閉じたまま、オドを練り右手に集め始めた。
そしてそれを握り、自分の心臓部にあてがう。
すると心臓の拍が一拍だけ大きく鳴り、それと同時に薄い光の波紋が周囲に広がっていく。
探知。 自分の心臓の音を拡散させた反響定位だ。
音の反響に耳を澄ませる。
「......えっ?」
反応が、無かった。
自慢ではないが反響定位は得意である。
このような失敗は滅多になく、霧が晴れるとそこには、誰もいなかった。
兵士が法螺を吹く。
試合中の途中退場は棄権とみなされるらしく、わたしは流れで不戦勝となった。
ここまで来て棄権など、あまり考えられない事だ。だが勝てたのなら良い。
私はあまり満足感の無いまま、庭を後にした。
最後の戦いまでは時間が有り余っている。暫くは暇を持て余しそうだ。
この試合、決勝まで行う必要はない。
決勝まで駒を進めただけで、選抜に選ばれるのは決まっているのだ。
私は次の試合まで、寝ることにした。
体調は万全で無くてはならない。
...。
※※※※※
決勝のステージは、いつもの庭では無かった。城の王室、つまり、王の目の前で戦う事になる。
兵士に案内された私は感動の溜息を漏らす。
大理石で作られた白く、そしてとても大きな王室には、沢山の見物人がいた。そしてその中に、ルシフとエーシュの姿もあった。
そして私は、その光景に驚いた。
誰も、エーシュに注目していない。
珍しい事もあるものだ。
試合が始まっているのならいざ知らず...
と、私の視線は別の方向へと向いた。
その視線は観客の中央に行き...
「おー、お前さんも上がって来たか。」
声の主である男は私を見つけると、大きく手を振って出迎えてきた。
「えっと......」
「俺だよ俺!...ってあれ?自己紹介してなかったっけか?」
男は「ははは!」と笑う。
男の目にかかる茶髪には見覚えがあった。そう言えばあの時は名前を聞いてなかったな。
「俺の名前はリフレ。よろしくな!」
そう言ってリフレは握手をしようと右手を差し出してくる。
そんな彼の身体には、傷の一つもついていなかった...。
───────────────
0
あなたにおすすめの小説
私たちの離婚幸福論
桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。
しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。
彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。
信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。
だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。
それは救済か、あるいは——
真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
拾われ子のスイ
蒼居 夜燈
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞】
記憶にあるのは、自分を見下ろす紅い眼の男と、母親の「出ていきなさい」という怒声。
幼いスイは故郷から遠く離れた西大陸の果てに、ドラゴンと共に墜落した。
老夫婦に拾われたスイは墜落から七年後、二人の逝去をきっかけに養祖父と同じハンターとして生きていく為に旅に出る。
――紅い眼の男は誰なのか、母は自分を本当に捨てたのか。
スイは、故郷を探す事を決める。真実を知る為に。
出会いと別れを繰り返し、命懸けの戦いを繰り返し、喜びと悲しみを繰り返す。
清濁が混在する世界に、スイは何を見て何を思い、何を選ぶのか。
これは、ひとりの少女が世界と己を知りながら成長していく物語。
※週2回(木・日)更新。
※誤字脱字報告に関しては感想とは異なる為、修正が済み次第削除致します。ご容赦ください。
※カクヨム様にて先行公開(登場人物紹介はアルファポリス様でのみ掲載)
※表紙画像、その他キャラクターのイメージ画像はAIイラストアプリで作成したものです。再現不足で色彩の一部が作中描写とは異なります。
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる