この虚空の地で

ハコニワ

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Ⅵ 魂と真実を〜23歳〜

第85話 アカネ、目覚め

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 夜。生徒が行き交う廊下はしんと静まり返っていた。誰かの喝采も聞こえない教室は不気味で、ぶるっと震える。
 寝静まった時間帯、必ず、いやこの世界で絶対的に現れる邪鬼が外の世界で暴れまわっているだろう。
 騒音もないのは、アルカ理事長のおかげだと不本意ながらに感謝した。
 時計の針がカチコチと少しずつ時を刻む。その音が室内にただ反響していた。隣りから寝息が聞こえる。小等部からこいつとは寮の部屋が一緒だった。こいつは寝るのが早い。
 どんなにヤバイ状況でもころっと寝ちまいそうな神経してる。
 俺は一人で天井を見つめていた。この頃寝付けにくいな。
 昨日も寝付けなくて外に行って――あぁ、やっぱり記憶がない。昨日から何かが曖昧だ。何か大事な針を引き抜かれた気分。

 眠れない理由は、一つ気がかりがある。アカネちゃんのことだ。アカネちゃんは頑固者で強気な性格。そんなアカネちゃんが今日「諦めたわけじゃないから! 覚悟しなさい」と宣戦布告してきた。

 アカネちゃんのことだ。宣戦布告して、今日夜這いにでもくるのかもしれない。万が一のため、ジンは結界を二重に張ってくれてる。
 だが、術をかけた張本人が隣でぐうすか寝ている。当然、術者が眠ると術は無効。さっきまで、気を踏んばって起きてたのに今は疲れて寝息たててる。
 結界なしで俺はどうしろと。いや、万が一来ても追い返せる。だが、下の息子のほうは耐久がないだろう。摂取に関しては四年もやってないのだから。
 頭ではだめと思ってても、誘惑されてきたら、下の息子が反応しちまう。どうか来ませんように。

 時計の針の音がカチコチ鳴っている。深夜を廻った時間帯。俺は深い夢へと意識が落ちていた。そんなとき――
 ガチャリと扉が開いたきがした。そうして、黒い影がそろりそろりとやってくる。なんだが、覆う布が剥がされた気が、でも眠いからそんなのいいや。
「……寒っ……え?」
 ほんとに寒い。布団を剥がされただげじゃない。よく見ると、ズボンも脱がされている。下半身の息子がギンギンに勃っていた。
「やっと起きた、でもこっちのほうは起きてるけど」
 アカネちゃんの声がした。ギンギンに勃った息子の近くに座っていた。息がかかるほど近い。
「あ、アカネちゃん!?」
「ふふん。宣戦布告通り来てやったのよ」
 やっぱり来た。アカネちゃんなら来ると思ったけど、やっぱり来た。
 どうして息子がはち切れそうなほど勃っているのか、それは、アカネちゃんが無自覚に息を吐いているから。股の間に座って、顔が近ければ吐息が当たってギンギンになってるんだ。
 四年もご無沙汰してる息子が反応してる。
「ねぇ、これ」
「待って、そこで話さないで!」
「は?」
 上体を起き上がり、とりあえず離れるとアカネちゃんはムスとした。俺の息子を指で指差し
「ねぇ、それ、すごい膨らんでるけど痛くないの? ミラノが貸してくれた同人誌で、それを口とかおっ……おっぱい、とかに挟んで沈めるんでしょ? やりたい。ねぇ、やりたい」
 ぐいぐいと詰め寄ってきて、俺の背後は壁にまで後退した。おっぱいの台詞に恥ずかしがるんだったら、今してる行動を恥らえ。
 息子の先っぽからツゥ、と濁った液体が出てきた。反応し過ぎだ。アカネちゃんは液体が出てきたことにびっくりして、目をぱちくりしている。
 無知なところと理解している境目が分からない。
「ジンが隣にいるだろ!」
「そんなの3Pすればいいじゃない。同人誌であったわ!」
 自信満々な表情で言う。もうほんとに、ばれたら小夏先輩の一喝だけじゃ済まされない。学園中から変態呼ばわり、牢獄行きだ。
 でも、ふいにアカネちゃんの表情が変わった。目が虚ろになっている。
「でも、これ、デジャヴ感がある。初めてなのに。違う……初めてじゃない、保健室……そうだ、初めてじゃない、どうして?」
 後半、ぶつぶつと呟いているので全く聞こえなかった。我慢汁がポタポタと垂れ、俺の体は快感を求めて疼いていた。
 挿れたい、どうしても。でも、少しある理性がそれを止めた。
「こういうのは、好きな人とやるものだろ」
「好きな……人」
 アカネちゃんは、大きく目を見開きそして、ジンのほうにゆっくりと振り向いた。途端。

「いやあああああああああ!! 痛いっ! お腹、刺さってる! 痛い痛い熱い熱い熱いよぉ! いやだ、やだやだやだやだやだ好きだって、好きだって言ってないのに――ごぅっ」 

 頭を振り回し、断末魔を切ったように叫びだしたアカネちゃん。そして、最後には白目を向いて吸い付くように地面に倒れた。

 この叫び声に教師陣は一目散とこちらにはしってきた。同室のジンも飛び起きて倒れているアカネちゃんにびっくりしている。

 すぐに小夏先輩がきて、ここで診察した。保健室には、怪我した生徒が満員にいるそうだ。アカネちゃんはぐったりと横になっている。
 小夏先輩がくるまでにズボンをはいたものの、ジンはしっかりと見ていた。息子を勃起させ下半身露出していた男の姿を。
 小夏先輩によれば、気を失っているとのこと。二~三時間安静に寝てればいいと。良かった。ほんとに良かった。突然発狂して倒れて、死んだかと思った。
 小夏先輩は、どうしてここにアカネちゃんがいるのか起きたら詳しく話を聞かないと、とアカネちゃんを背中におぶって、文句を言った。
 小夏先輩がアカネちゃんをおぶって部屋を出た直後、ジンがじーと横顔を凝視してきた。
「俺も詳しく話を聞きたい。下半身露出していたことについて」
 ギクッ。
 ジンの目は鋭く、言い逃れできそうにない。俺はしどろもどろになりながらも、すべてを打ち明けた。
 すべてを打ち明けたときジンは、妙に怪訝な表情になった。まだ疑っている顔。
「でも、それだけで『お腹刺さってる、痛い、熱い』て言うかな?」
「それは俺も聞きたい」
 あのとき、アカネちゃんは何を視たのだろう。目の前には俺しかいなかった。視界のはしにはジンもいたけど。別の何か。まるで、別の世界の悲惨な光景を見てきたような発狂ぶりだった。
 まずはアカネちゃんが無事に起きてくれることを願う。

§

 アカネちゃんが目を覚ましたのは、割と早かった。あれから一時間後してから目が覚めた。
 そのとき、アカネちゃんは保健室のベットに眠っていた。今は戦闘も終わり、保健室はがら空きになっている。
 気を失って眠ってるアカネちゃんの側にいた俺たちは、目が覚めたアカネちゃんに駆け寄る。
 目が虚ろでぼんやりしている。天井を暫く見つめ、ゆっくりとこちらに顔を向けた。そして、第一発生がこちら。

「ジン、その眼帯何?」

 アカネちゃんは「痛たた」と頭をおさえ、上体を起き上がらせる。
「なんか、長い夢見てたような? それより、なんでウチ保健室にいるの?」
「無理しないで、他に痛いところはない?」
 小夏先輩が優しく背中をさする。アカネちゃんは、目を見開き手を振り払った。
「子ども扱いしないで! それと、あんた誰!?」
 俺たちは固まった。
 アカネちゃんが何を言ってるのか、理解できなかった。冗談だと思っていても、アカネちゃんから注ぐ俺たちの視線は、畏怖、恐怖、警戒、だった。

 話しでは、十六歳の俺たちと同期だった、と語る。しかも、俺たちと小さいころから一緒で美樹を中心とした美樹班に所属していたと、まるで、知らない世界をペラペラと語る。
 小夏先輩によれば、転生前の記憶が蘇ったと推測した。信じられない。
「それはこっちの台詞。何忘れてんのよ」
 ジンの頬を突っ張る。「痛たた」とジンが涙目になって顔を振る。なんだか距離感が近い。まるで昔馴染みの会話だ。

 今のアカネちゃんは、体は小学六年生だけども、心は思春期真っ只中の十六歳。俺たちの知ってるアカネちゃんは、目の前にいない。アカネちゃんのほうも、俺たちを知ってるようだけど、知らない部分もある。
 ジンをひと目でわかったけど、小夏先輩と俺は、暫くしてからアカネちゃんのほうから気がついた。
「えぇ!? カイ、すごい焼けたわね。玉手箱を開けたお爺ちゃんみたい。小夏先輩、教師になったの!? なんかその面みると納得」
 目をぱちくりした。
 嬉しさと驚きが混じって、顔の表情がごっちゃ混ぜになっている。
「それじゃ、ルイは? ルイは何処にいるの? きっと島を出てるんでしょうけど」
「ルイ……?」
 俺はオウム返しに訊ねた。
 それは人の名か? 物の名か? アカネちゃんはだんまりしてる俺たちに首をかしげた。刹那、胸の前でパン、と両手を合わせた。
「そっか、強力な記憶操作で忘れてるだ。忘れたんだ……そっか」
 肩をおとし、目の色が半ば絶望色になる。小夏先輩は、ずっと考え込んでてやっと口を開いた。
「このことは黙っておきましょう。アカネちゃんが転生前の記憶を蘇った、とならば学園側は邪魔な対象者よ。必ず消しにくる」
「四人だけの秘密」
「守ってよね」
 この話は、四人だけの秘密。そして、アカネちゃんにはこれから危険な日常となる。
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