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第五章
王宮からの使者
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父に会って母の死の真相を確かめるということが、王都に来た目的だった。
リクベルトをどうやってレオンハルトが追い払ったのか、王室がなぜレオンハルトを連れ去ろうとしたのかという新たな謎が増えてしまったが、元々のレオンハルトの目的は達成された。……となると、
「……帰るか? 南部に」
部屋で編み物をしているルーナにそう聞いてみると、「えぇっ?!」と残念そうな声が返って来た。
「せっかく王都に来たのに、私何も見ていないわ! 外にもろくに出ていないし!」
やはりそう言うと思った。
レオンハルトはうーんと首をひねり悩んだ。
王都の街を見せてやりたいのは山々だが、王都は女神信仰が強い。南部よりも“魔女”の噂は多くの人間に広まっているし、魔女に対する嫌悪感や忌避感もその分強い。
さらにレオンハルトの顔もある程度知られていて、その妻が魔女であることも知られている。
万が一街中でルーナが“魔女”だと気付かれたら……。
そう思うとなかなか気軽に「街へ遊びに行こう!」とは言えないのだ。
「おねがいよぉ、こんなにずっと引きこもっているとジメジメしてきのこが生えちゃうわ」
「…………」
「レオン~~おねがいぃい! きのこだけじゃなくてカビまで生えちゃうわよ?!」
「……それは困ったな」
はぁ、とレオンハルトはため息をついた。対照的に、ルーナの顔がぱぁと明るく輝いた。
「いいの?! 」
「あぁ、けど僕の言うことを聞くんだぞ。昨日のような勝手なことはしないでくれ」
「分かったわ! 久しぶりのデートね!」
たしかに危険はあるが、用心していれば大丈夫だろう。
あまり過保護にしすぎて、ルーナに窮屈な思いをさせたくない。それにいざとなれば、レオンハルトが守ればいい。
「じゃあ、明日出かけよう。デートのプランは僕が立てるよ」
「まぁ素敵! とっても楽しみ!」
ありがとうレオン!
ルーナはそう言って嬉しそうにレオンハルトに抱き着いた。レオンハルトもまんざらでもない顔でルーナを受け止めて、ふふんと鼻を鳴らしたのだった。
*
そしてその翌日、レオンハルトはルーナを連れて、街へ出かけた。
馬車に乗って大通りを進むだけでも、ルーナは外を見て楽しそうにはしゃいでいた。
「とーっても人がたくさんいるのね」
「たしかに南部に比べると、かなり人が密集しているな」
「すごいわ。お祭りでもないのにこんなに人がたくさん……」
キラキラ目を輝かせて外を見るルーナ。その麗しい容姿は洗練されていて、王都で暮らしていると言われて疑う者は誰もいないだろう。しかし実際のところは、生まれてから一度も田舎を出たことがない箱入り令嬢なのだ。
馬車が乗り付けたのは劇場で、レオンハルトは帽子を深く被って顔を隠したルーナをエスコートしながら中に入った。
父が劇場に所有しているボックス席を、昨日慌てて貸してくださいと頼みに行ったのだ。
ボックス席なら人目を気にせず観劇に集中できる。暗い劇場内では顔も分かりづらいし、帽子を被っていてはもっとだろう。これならルーナを安全に楽しませられると考えたのだった。
「すごい、ボックス席なのね……! 私オペラを観るの、とってもとっても久しぶりよ! まだ私が3……4歳? のときに一度お父様が連れて行ってくださって……また観たいとずっと思っていたのよ! ありがとうレオン」
「分かった分かった。そんなにはしゃいでいたら開演前から疲れてしまうぞ」
ルーナの喜びように内心安堵しながら、抱き着いてくるルーナをいなして舞台へと目を向ける。
オペラが開演すると、ルーナはさっきまでのはしゃぎっぷりが嘘のように、静かに舞台に熱中していた。
*
幕が下りて、観客の拍手も鳴りやんだ頃。
「とぉっても感動したわ……」
「楽しめた?」
「すっごく! とくに主演の女優さんがとても綺麗で素敵だったわ。そう思わない?」
「うん、そうだな。歌声がとても素晴らしかった」
「あら、綺麗だと思ったの? よくも妻を目の前にしてそんなことが言えるわね」
「同意を求めてきたのは君だろう……」
「そこは『ルーナの方が綺麗だよ』というのがお決まりよ」
めちゃくちゃな理論を振りかざすルーナにレオンハルトは呆れながら「ルーナの方が綺麗だよ」と言った。自分で言わせたにも関わらず、ルーナは満足そうにしていた。
ほぅ、とうっとりとした様子でため息をこぼしたルーナがレオンハルトの腕に抱き着いてくる。
「レオン、ありがとう。レオンと2人でデートできてとっても嬉しいわ」
ぎゅう、と腕を強く抱きしめられて、レオンハルトは心臓を跳ねさせながらルーナの頭を撫でた。
「そんなに気に入ったのならまた来よう」
「本当?!」
「あぁ」
キラキラ輝くルーナの瞳を見つめ返したその時、ボックス席の出入り口の扉がコンコンとノックされる。続いて「アイレンブルク様」と声が掛けられた。
なんだ……?
退場を促されるにはまだ早いだろうとレオンハルトは不思議に思いながら席を立った。
「はい……」
扉の前に立っていたのは劇場の支配人で、現れたレオンハルトにすっと一通の手紙を差し出した。
「王宮からの急ぎの手紙です」
「王宮から……?」
「すぐに目を通すようにとのことです」
支配人の後ろに王宮からの使者が2人立っているのが見えた。
何事かとその場で封を切って手紙を読む。中には王女の字で緊急で伝えたいことがあるから一刻も早く王宮に来るようにと書かれてあった。
手紙から顔を上げると、支配人の後ろから王宮からの使者と思しき男が2人、レオンハルトに向かって歩いてきた。
「お迎えに上がりました」
「……これからまだ予定があるのだが」
「すぐにお連れするようにと王女様からの命令です」
どうやら拒否権はないようだ。
レオンハルトはちらりと後ろにいるルーナを見た。
「妻を見送ったらすぐに行く。逃げたりはしないから離れたところで待っていてくれ」
「しかし……」
「必ず行くと言っているだろう」
レオンハルトは強引に扉を閉めた。
ルーナは不思議そうな顔をしてレオンハルトを出迎える。
「長かったわね? なんだったのかしら?」
「清掃に入るから、そろそろ退席しなくてはいけないそうだ」
「あら、そうなのね。じゃあ行きましょうか」
「あぁ……ルーナ、ごめん」
「? なにが……」
「この後の買い物とお茶だけど、また後日にしてもいいだろうか。急ぎの仕事があったのを思い出してしまって」
「えぇっ? この後はアフタヌーンティーをして……私が見たいブティックへいっしょに行こうと言ってくれたじゃない……。そんな急に……ひどいわ」
「本当にごめん。だけど、どうしても今日中に終わらせなくてはいけなくて……必ず埋め合わせならするから」
「…………分かったわ」
口ではそう言いながらも、拗ねたように口を尖らせたルーナの頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめん、ルーナ」
「……お仕事なら仕方ないわ。私一人で出歩くのはもちろんダメなんでしょう?」
「ごめん……」
「いいの、分かってるから。昨日みたいな勝手なこともしないし、心配しないで」
沈み込んだ様子のルーナであったが、それ以上の文句は言わなかった。
久しぶりに外へ出かけられると喜んでいたのに、また部屋の中へ閉じ込めてしまう。
馬車へ乗り込んだルーナの暗い表情を見て、レオンハルトはいろいろと言葉をかけたが、ルーナの表情が明るくなることはなかった。
ルーナの乗った馬車が遠ざかっていくのを見ていると、背後から先ほどの男たちが現れた。
「我々といっしょに来ていただきます」
「…………」
武装した男たちにそう告げられて、レオンハルトは嫌な胸騒ぎを感じずにはいられなかった。
リクベルトをどうやってレオンハルトが追い払ったのか、王室がなぜレオンハルトを連れ去ろうとしたのかという新たな謎が増えてしまったが、元々のレオンハルトの目的は達成された。……となると、
「……帰るか? 南部に」
部屋で編み物をしているルーナにそう聞いてみると、「えぇっ?!」と残念そうな声が返って来た。
「せっかく王都に来たのに、私何も見ていないわ! 外にもろくに出ていないし!」
やはりそう言うと思った。
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さらにレオンハルトの顔もある程度知られていて、その妻が魔女であることも知られている。
万が一街中でルーナが“魔女”だと気付かれたら……。
そう思うとなかなか気軽に「街へ遊びに行こう!」とは言えないのだ。
「おねがいよぉ、こんなにずっと引きこもっているとジメジメしてきのこが生えちゃうわ」
「…………」
「レオン~~おねがいぃい! きのこだけじゃなくてカビまで生えちゃうわよ?!」
「……それは困ったな」
はぁ、とレオンハルトはため息をついた。対照的に、ルーナの顔がぱぁと明るく輝いた。
「いいの?! 」
「あぁ、けど僕の言うことを聞くんだぞ。昨日のような勝手なことはしないでくれ」
「分かったわ! 久しぶりのデートね!」
たしかに危険はあるが、用心していれば大丈夫だろう。
あまり過保護にしすぎて、ルーナに窮屈な思いをさせたくない。それにいざとなれば、レオンハルトが守ればいい。
「じゃあ、明日出かけよう。デートのプランは僕が立てるよ」
「まぁ素敵! とっても楽しみ!」
ありがとうレオン!
ルーナはそう言って嬉しそうにレオンハルトに抱き着いた。レオンハルトもまんざらでもない顔でルーナを受け止めて、ふふんと鼻を鳴らしたのだった。
*
そしてその翌日、レオンハルトはルーナを連れて、街へ出かけた。
馬車に乗って大通りを進むだけでも、ルーナは外を見て楽しそうにはしゃいでいた。
「とーっても人がたくさんいるのね」
「たしかに南部に比べると、かなり人が密集しているな」
「すごいわ。お祭りでもないのにこんなに人がたくさん……」
キラキラ目を輝かせて外を見るルーナ。その麗しい容姿は洗練されていて、王都で暮らしていると言われて疑う者は誰もいないだろう。しかし実際のところは、生まれてから一度も田舎を出たことがない箱入り令嬢なのだ。
馬車が乗り付けたのは劇場で、レオンハルトは帽子を深く被って顔を隠したルーナをエスコートしながら中に入った。
父が劇場に所有しているボックス席を、昨日慌てて貸してくださいと頼みに行ったのだ。
ボックス席なら人目を気にせず観劇に集中できる。暗い劇場内では顔も分かりづらいし、帽子を被っていてはもっとだろう。これならルーナを安全に楽しませられると考えたのだった。
「すごい、ボックス席なのね……! 私オペラを観るの、とってもとっても久しぶりよ! まだ私が3……4歳? のときに一度お父様が連れて行ってくださって……また観たいとずっと思っていたのよ! ありがとうレオン」
「分かった分かった。そんなにはしゃいでいたら開演前から疲れてしまうぞ」
ルーナの喜びように内心安堵しながら、抱き着いてくるルーナをいなして舞台へと目を向ける。
オペラが開演すると、ルーナはさっきまでのはしゃぎっぷりが嘘のように、静かに舞台に熱中していた。
*
幕が下りて、観客の拍手も鳴りやんだ頃。
「とぉっても感動したわ……」
「楽しめた?」
「すっごく! とくに主演の女優さんがとても綺麗で素敵だったわ。そう思わない?」
「うん、そうだな。歌声がとても素晴らしかった」
「あら、綺麗だと思ったの? よくも妻を目の前にしてそんなことが言えるわね」
「同意を求めてきたのは君だろう……」
「そこは『ルーナの方が綺麗だよ』というのがお決まりよ」
めちゃくちゃな理論を振りかざすルーナにレオンハルトは呆れながら「ルーナの方が綺麗だよ」と言った。自分で言わせたにも関わらず、ルーナは満足そうにしていた。
ほぅ、とうっとりとした様子でため息をこぼしたルーナがレオンハルトの腕に抱き着いてくる。
「レオン、ありがとう。レオンと2人でデートできてとっても嬉しいわ」
ぎゅう、と腕を強く抱きしめられて、レオンハルトは心臓を跳ねさせながらルーナの頭を撫でた。
「そんなに気に入ったのならまた来よう」
「本当?!」
「あぁ」
キラキラ輝くルーナの瞳を見つめ返したその時、ボックス席の出入り口の扉がコンコンとノックされる。続いて「アイレンブルク様」と声が掛けられた。
なんだ……?
退場を促されるにはまだ早いだろうとレオンハルトは不思議に思いながら席を立った。
「はい……」
扉の前に立っていたのは劇場の支配人で、現れたレオンハルトにすっと一通の手紙を差し出した。
「王宮からの急ぎの手紙です」
「王宮から……?」
「すぐに目を通すようにとのことです」
支配人の後ろに王宮からの使者が2人立っているのが見えた。
何事かとその場で封を切って手紙を読む。中には王女の字で緊急で伝えたいことがあるから一刻も早く王宮に来るようにと書かれてあった。
手紙から顔を上げると、支配人の後ろから王宮からの使者と思しき男が2人、レオンハルトに向かって歩いてきた。
「お迎えに上がりました」
「……これからまだ予定があるのだが」
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どうやら拒否権はないようだ。
レオンハルトはちらりと後ろにいるルーナを見た。
「妻を見送ったらすぐに行く。逃げたりはしないから離れたところで待っていてくれ」
「しかし……」
「必ず行くと言っているだろう」
レオンハルトは強引に扉を閉めた。
ルーナは不思議そうな顔をしてレオンハルトを出迎える。
「長かったわね? なんだったのかしら?」
「清掃に入るから、そろそろ退席しなくてはいけないそうだ」
「あら、そうなのね。じゃあ行きましょうか」
「あぁ……ルーナ、ごめん」
「? なにが……」
「この後の買い物とお茶だけど、また後日にしてもいいだろうか。急ぎの仕事があったのを思い出してしまって」
「えぇっ? この後はアフタヌーンティーをして……私が見たいブティックへいっしょに行こうと言ってくれたじゃない……。そんな急に……ひどいわ」
「本当にごめん。だけど、どうしても今日中に終わらせなくてはいけなくて……必ず埋め合わせならするから」
「…………分かったわ」
口ではそう言いながらも、拗ねたように口を尖らせたルーナの頭をぽんぽんと撫でた。
「ごめん、ルーナ」
「……お仕事なら仕方ないわ。私一人で出歩くのはもちろんダメなんでしょう?」
「ごめん……」
「いいの、分かってるから。昨日みたいな勝手なこともしないし、心配しないで」
沈み込んだ様子のルーナであったが、それ以上の文句は言わなかった。
久しぶりに外へ出かけられると喜んでいたのに、また部屋の中へ閉じ込めてしまう。
馬車へ乗り込んだルーナの暗い表情を見て、レオンハルトはいろいろと言葉をかけたが、ルーナの表情が明るくなることはなかった。
ルーナの乗った馬車が遠ざかっていくのを見ていると、背後から先ほどの男たちが現れた。
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