森の呼び声

第五章: 変わり果てた姿

第五章: 変わり果てた姿
「見てしまったか……」
藤田の声は震えていた。その瞳は、恐怖に満ち、今にも何かを告げようとしているようだった。しかし、綾乃はその時、足元がふらつき、何かに引き寄せられるように森の奥へと進んでいってしまった。
狼の姿が、どんどんと鮮明になっていく。まるで人間と狼が合わさったような不気味な姿。それは、二足歩行をし、狼のような目をしている。獣のように牙をむき出しにしているが、どこか人間の悲しみが滲んでいるような――
その姿を目の当たりにした瞬間、綾乃の胸は締め付けられるように痛み、頭の中で何かが崩れ落ちた。彼女は知っていた――それがただの動物ではないこと、そしてその狼が、失踪した村人たちの一部だということを。