3 / 20
第3章:凍った足音
しおりを挟む
第3章:凍った足音
夜が明けた。
外の吹雪は少しだけ収まり、灰色の空の下に薄日が差し込んでいた。
「…今日、下山できそうかな」
亮介がぽつりとつぶやくと、美月は窓の外をじっと見つめたまま首を横に振った。
「まだ無理。雪が深すぎる。無理に動くと逆に危ないよ」
「……そうか」
足元には、濡れた靴と靴下が並んで乾かされていた。
昨夜、気付けば亮介の足の指はうっすら紫色に変色していた。
「少し、凍傷になってるかも。感覚ある?」
「……あんまり、ない」
美月はためらいなく亮介の足を取ると、ポケットから小さな保温パックを取り出して優しく当てた。
「がまんして。これ以上進行すると、ヤバいから」
冷たくなった足を、美月の温もりが包み込んでいく。
亮介は、心のどこかがじんわりと溶けていくのを感じた。
「どうしてそんなに慣れてるんだよ……まるで救助隊みたいだ」
「……昔ね、私も遭難したことがあるの。一人じゃなかった。けど……その人は帰ってこなかった」
言葉の温度が、一瞬だけ変わった。
亮介は、それ以上聞けなかった。
ただ、彼女の指が震えていたことだけは、しっかりと覚えている。
夜が明けた。
外の吹雪は少しだけ収まり、灰色の空の下に薄日が差し込んでいた。
「…今日、下山できそうかな」
亮介がぽつりとつぶやくと、美月は窓の外をじっと見つめたまま首を横に振った。
「まだ無理。雪が深すぎる。無理に動くと逆に危ないよ」
「……そうか」
足元には、濡れた靴と靴下が並んで乾かされていた。
昨夜、気付けば亮介の足の指はうっすら紫色に変色していた。
「少し、凍傷になってるかも。感覚ある?」
「……あんまり、ない」
美月はためらいなく亮介の足を取ると、ポケットから小さな保温パックを取り出して優しく当てた。
「がまんして。これ以上進行すると、ヤバいから」
冷たくなった足を、美月の温もりが包み込んでいく。
亮介は、心のどこかがじんわりと溶けていくのを感じた。
「どうしてそんなに慣れてるんだよ……まるで救助隊みたいだ」
「……昔ね、私も遭難したことがあるの。一人じゃなかった。けど……その人は帰ってこなかった」
言葉の温度が、一瞬だけ変わった。
亮介は、それ以上聞けなかった。
ただ、彼女の指が震えていたことだけは、しっかりと覚えている。
0
あなたにおすすめの小説
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる