「永遠の雪原 ―遭難が紡いだ恋―」

夕暮れ狼

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第6章:壊れたスマホ

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第6章:壊れたスマホ
亮介は寝袋の脇に置いてあったスマートフォンを手に取った。
少しだけ電波を探そうと、何度か画面をタップしてみる。
しかし、画面はうっすらとヒビが入り、フリーズしたままだった。
「……動かない」
「それ、昨日落としてたでしょ。たぶん、バッテリーも凍ってるし、水も入ったかもね」
美月がカップにお湯を注ぎながら言う。
彼女の声は落ち着いていたが、亮介の心には焦りが広がっていた。
「もう完全に通信手段はゼロってことか……」
「そうだね。自力で下山できなかったら、数日以内に誰かが来てくれるのを待つしかない」
「数日以内、か……」
いつもなら、「数日」なんて一瞬で過ぎる。
けれど、この雪と沈黙の中では、一時間すら重たく感じる。
「怖い?」
美月の問いに、亮介は少しだけ黙った後、正直にうなずいた。
「正直……怖い。死ぬって、もっと遠い話だと思ってた」
「うん、わかる。でもね、怖いって思えるのは、生きようとしてる証拠だよ」
その言葉に、亮介の胸に何かがじんわりとしみ込んだ。
美月の目は、過去に一度すべてを失ってなお、それでも生きようとする意志に満ちていた。
「俺さ……東京戻ったら、ちゃんと変わろうと思う」
「何を変えるの?」
「……全部。仕事ばっかで逃げてたこと、誰かとちゃんと向き合わなかったこと。……本当の意味で、生きたいって思ったから」
美月は静かに笑った。
「それ、帰れたら聞かせてね。変わった“あなた”に、また会えるの楽しみにしてる」
吹雪の中で見失っていた“自分”を、今、少しずつ取り戻し始めていた。
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