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第7章:近づく影
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第7章:近づく影
その夜、風の音がやけに静かだった。
いつもなら唸るような吹雪の音が、まるで何かを警戒しているかのように収まっていた。
「変だな……静かすぎる」
亮介は寝袋の中で、ぴくりと体を起こした。
美月もすでに目を覚ましており、耳を澄ませている。
「……聞こえた?」
「うん、なんか……足音、みたいな」
ガリ、ガリ――と、何かが雪を踏みしめるような音。
それは、小屋のすぐ外を回るように、ゆっくりと、確かに近づいてきていた。
「動物……? でも、ここまで来る?」
美月は小声でつぶやき、ランタンの明かりを弱めた。
「クマじゃなきゃいいけど……」
外から、小屋の木の壁をかすかに引っかくような音が聞こえる。
ガリ……ゴリ……ピシ。
二人とも、息を呑んだまま動けなかった。
「……亮介、もしものために、音立てずにこれ持って」
美月がそっと差し出したのは、小さな登山用のナイフだった。
彼女の目には、かすかに怯えが浮かんでいたが、それでも芯の強さを失っていなかった。
やがて、外の音はふっと消えた。
代わりに、風が再び強くなり、雪が小屋を打ち始める。
「……行った、かな」
二人は、静かに深呼吸をした。
何だったのかはわからない。だが、自然の中で“人間”がどれほど無力かを、改めて突きつけられた瞬間だった。
「……早く帰ろう、絶対に」
亮介の言葉に、美月は小さくうなずいた。
「うん、生きて帰ろう」
それは初めて、二人が「一緒に生きること」を誓った夜だった。
その夜、風の音がやけに静かだった。
いつもなら唸るような吹雪の音が、まるで何かを警戒しているかのように収まっていた。
「変だな……静かすぎる」
亮介は寝袋の中で、ぴくりと体を起こした。
美月もすでに目を覚ましており、耳を澄ませている。
「……聞こえた?」
「うん、なんか……足音、みたいな」
ガリ、ガリ――と、何かが雪を踏みしめるような音。
それは、小屋のすぐ外を回るように、ゆっくりと、確かに近づいてきていた。
「動物……? でも、ここまで来る?」
美月は小声でつぶやき、ランタンの明かりを弱めた。
「クマじゃなきゃいいけど……」
外から、小屋の木の壁をかすかに引っかくような音が聞こえる。
ガリ……ゴリ……ピシ。
二人とも、息を呑んだまま動けなかった。
「……亮介、もしものために、音立てずにこれ持って」
美月がそっと差し出したのは、小さな登山用のナイフだった。
彼女の目には、かすかに怯えが浮かんでいたが、それでも芯の強さを失っていなかった。
やがて、外の音はふっと消えた。
代わりに、風が再び強くなり、雪が小屋を打ち始める。
「……行った、かな」
二人は、静かに深呼吸をした。
何だったのかはわからない。だが、自然の中で“人間”がどれほど無力かを、改めて突きつけられた瞬間だった。
「……早く帰ろう、絶対に」
亮介の言葉に、美月は小さくうなずいた。
「うん、生きて帰ろう」
それは初めて、二人が「一緒に生きること」を誓った夜だった。
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