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第二章
婚約
しおりを挟む「それでは早速、お父様?婚約者とは一体どういうことですの?」
ソフィと再会出来たのはとても嬉しい
でもいきなり婚約なんてそんなの聞いてない!
「あぁ、正確には婚約者候補という段階だがな」
「候補?」
お父様の言葉に首を傾げる
お父様は一度私の隣に座るソフィに目を向けてから私に目線を戻して重々しく言った
「殿下には申し訳ないが、俺はお前の気持ちを聞いてから決めたいと思う」
お父様の言葉に目を見張る
だって…そんなことあるわけないって昔から分かってたから
行動とか言動とかに難ありの(素の)私だけど無知ではない
後数年したら私は否応なしに政略結婚させられる、そこに私の意思はない。幼い時からずっとそう覚悟してきた
でも…今、お父様は私の気持ちを優先すると言ってくれている、しかも相手はこの国の王子なのにだ
……いくら公爵家の中でも地位が突出して高いお父様でも王家の縁談を断ったりなんかしたら只で済むはずがない、そんなことは子どもの私でもすぐに分かるのにお父様が分からないわけがない……だけど、それでもお父様は私に"選ぶ"という選択肢をくれた
私はその気持ちだけで号泣してしまいそうだった
手に力を込めて握ったら片手を握られてるのを忘れてたから必然的にソフィの手も強く握ることになってしまった
それに気づいて慌てて力を緩めようとしたら逆にソフィに手を強く握り返された
手を見てソフィを見れば、ソフィはふんわりと笑った
「僕もセツに無理強いはしたくない。だから、セツの気持ちを聞かせてくれる?」
ソフィの優しい声で気持ちが落ち着いていった
もし、本当に許されるのなら…
「私は…ソフィのことは好きよ」
「じゃあ!」
「でも、それは異性としてではないわ」
嬉しそうな顔をしたソフィの言葉を遮るのは心苦しかったけどちゃんと言わないと
「私は今日二年ぶりにソフィに会えてとても嬉しかったわ。ソフィが男の子だって知ってもソフィのことは変わらず好きよ、でもそれは友達として。私は基本順応するのが早いタイプだけど、それでも今までずっと女の子だと思ってきた子をいきなり婚約者として思え、だなんてさすがにちょっと無理があるわ。だから、その」
「分かった」
言い淀んでいるうちにソフィが私の言葉を遮った
ちゃんと言わなきゃって決めた手前お恥ずかしい限りなんですが、ちょっとソフィの顔を見るのが怖い
もし怒ってたら?ううん、私が嫌なのはソフィが悲しむことだ
本当に何様のつもりだって話なんですけどね?…嫌なもんは嫌なんだよ……
顔を少し俯かせていた私の手にソフィのもう片方の手が重なる
その優しすぎる手つきについパッと顔を上げてしまった
てっきり暗い顔をしてるのかと思ったらソフィは変わらず笑みを浮かべていた
あ、あれえ?!ぜ、全然落ち込んでない、ですね
い、いや!落ち込んでないに越したことはないんだけどね!うん!……なんかただあれっすね!うん!…自意識過剰すんっませんっしたあ!!
心の中でスライディング土下座をかましながらソフィの顔を見つめる
「セツ、一つだけ聞いてもいい?」
「も、もちろん」
一つどころかソフィが知りたいことなら私で答えられる範囲だったらなんでも答えちゃうよ!
「セツは好きな人はいる?」
「……ヒェ!?」
た、確かになんでも答えるって言ったけど(心の中で)、す、好きな人ですか!?
「…いるの?」
「いやいやいやないないない!!」
そんな!この歳で好きな人が出来るほどマセてはいませんよ!!(ただの偏見です)
吹っ飛びそうなくらい首を激しく横に振る
「本当に?」
「本当に!誓っていないわ!」
だからそんな捨てられた子犬みたいな目で見ないでえ!!
はっきりとそう言えばソフィは花が咲いたように顔を綻ばせた
私の手を胸の前まで持っていきギュッと握った…うっ、なんだその萌え仕草やばい心臓持たん!
「それじゃあ、僕にもまだチャンスはあるね!」
「…なんですと?」
怪訝な顔をする私を見てもソフィはドン引きせずニッコリと笑った
「セツには今好きな人はいない、そして僕のことを嫌ってもいない。むしろ好きと言ってくれている。それならこれからいくらだってセツに僕を好きにさせるチャンスがあるってことじゃないか!ね?」
いや、そんなかわいく、ね?って聞かれても私はどう答えればいいんだよ、うん!って言えばいいのか?いやいいわけあるかあ!調子こくなって自分にアッパー仕掛けるわ!
ていうかマジソフィがポジティブすぎてびっくりなんですけど
待って、かわい子ちゃんにはめっぽう弱いから私は何も言えねえわ!ちょっとお父様とかに助けを!
向かいに座っているお父様に顔を向けて助けを求めれば、それが伝わったのか一つ咳払いをして口を開こうとしたその瞬間
「ヴァーシス卿、婚約はまだ保留のままでいいか?」
まさかのソフィが先手を打ってきた
「ですが殿下、王子であるあなた様の婚約を保留にするなど、そのような無礼な真似は」
あっ、お父様が珍しく焦ってる…!ごめん、ごめん父よ!だが頑張って説得して!
「いいんだ、気にしないでくれ。僕がそうさせて欲しいんだ。……このままセツを諦められるほど僕の想いは弱くないよ」
「……セツィーリア、あまり殿下のことを待たせるなよ?」
おい親父いいいいいいい!!!!それはねえだろー!!!なんっだそのいきなりすぎる手の平返し!!
もういい!もうお父様には頼らん!この…この愛妻家め!!…あっ、褒めちったよ
「ル、ルーク様」
「私はただの護衛ですので殿下の決めたことに口出しは一切いたしません」
バ、バッサリ切られた…困る素振りすら見せてはくれなかったなこの騎士
や、やっぱ自分でどうにかするしかねえのか!?
「ソ、ソフィ?あのね」
「セツ、今すぐ僕を好きになってとは言わないよ。だけど、時間をくれないか?約束したでしょ?新しく生まれ変わるって。だからこれからの時間を使って君に今の僕のことを知ってほしいんだ。一緒に過ごしてお互いのことを知ってから、いつかもう一度返事を聞かせてくれないか?」
「で、でも」
「お願いだ…!君のことが本当に好きなんだ…!チャンスを、与えてくれないか?」
「!!……す、、、好き、、、、って………」
す、すすすすすすすす……好きって……好きって……!!!
「セツ?」
ちょっちょっちょっ!!!待っ待っ待っ!!!
キャパオーバーする!!パンクするってば!!
「わ、分かった!分かったから!!……少し離れて……か、顔が近いですわ…」
お、おかしい
さっきまで全然平気だったのに、むしろ天使の顔近くで拝めてマジ感動!っていうレベルで癒されてたのに、な、なんでいきなりこんな恥ずかしく…!!
「ふふ、赤くなったセツもかわいい」
「か、からかわないで!!」
「からかってなんかない、全部本心さ。…ありがとうセツ、僕にチャンスを与えてくれて。必ず君を、振り向かせて見せるよ」
出会い頭と同じように笑って私の手の甲にキスを落としたソフィだったけど、私の反応は最初とは180°変わっていた
まずソフィの笑顔をただかわいいと感じられなくなった
……なんでよ、なんでいきなりそんな大人びた笑顔をするの…!あれか!?ギャップか!?ギャップ狙いか!?チクショーまんまとはまったぜ…!!……ついドキッてしちゃったじゃんかもう…!!
それに頬にキスされた時だってこんなことにならなかったのに…どうしてこんなにも手の甲が熱いのかしら……それだけじゃない…さっきから顔も茹で釜の中にいるみたいに熱いわ…本当にどうしちゃったのかしら
「良かった、まずは男だっていうことを意識してもらわなきゃ何も始まらないもんね」
顔を覆って真っ赤になってる私を見てソフィが嬉しそうに言った言葉は私の耳に入ることはなく
その代わり、それを聞いたほか三人の心中はそれぞれ複雑なものがあったもののただ一つ一致している部分があった
「「「(これは両方一筋縄じゃいかないな/いきませんね)」」」
全員一斉に目を瞑った瞬間だった
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