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第二章
心配
しおりを挟む扉から顔を覗かせたのは今さっき私が思い浮かべていた三人の中の一人であるユーリだった
私と目が合った瞬間少し目を見開いたかと思ったらすごい勢いでこっちに駆け寄って来た
顔がマジだった
鬼気迫るものを感じた
ギョッとしている間にユーリはもうすぐ側に来ていて、私が口を開く前にこれまたすごい勢いで詰め寄って来た
「セツ姉大丈夫!?もう起きて平気なの!?熱は?身体だるくない?気持ち悪いとかない?喉渇いてるよね、水飲む?あっ、でもそれより何か食べた方がいいよね?ちょっと待ってて、今何か食べやすい物を」
「ドウドウ、落ち着いてユーリ」
取り乱しているユーリのほっぺを両側から挟んで目を真っ直ぐと見つめる
そうしてようやくユーリも冷静になったのか、無意識に詰めていた息が漏れたのを感じた
頬を挟んでいた手を離してフッと笑う
だって、あのツンデレユーリがこんなに取り乱して私の心配をしてくれてるんだもん、なんだかくすぐったい気持ちになるよね
ニヤニヤ笑ってる私を見てユーリも自分がらしくもなく慌てた事実に照れたのかちょっと赤くなってそっぽを向いた
やだ、義弟がかわいすぎて変態になりそう
え?何?元から変態だから大丈夫?あっ、それもそっかー!ってやかましわ!!……って、なんで私一人ボケツッコミやってるのかしら…熱ね、きっと熱のせいね…うん!
自分で自分に呆れていると、一つ咳払いをして落ち着きを取り戻したユーリが優しく聞いてきた
「セツ姉、大丈夫?何かしてほしいことない?」
おお、これは本当に珍しい、久しぶりにこんなに優しくしてもらえたぞ!?
偶には体調崩すのもいいもんだな!
「大丈夫、まだちょっとだるさはあるけど熱は多分もうないと思うわ」
ほら、と言ってユーリの手を取って自分の額に触れさせる
直接確かめてやっと安心したのかユーリの顔に安堵の表情が見て取れた
「心配してくれてありがとうね、ユーリ」
「べ、別に、お礼言われるほどのことしてないし」
「んもう~、そこは素直にどういたしましてって言うところだよ~?このこの~」
そんな素直じゃない返事をしても、内心喜んでることは知ってるんだから~!
ベッドの端に座ってるユーリの頭をワシャワシャとかき乱す
あっ、そう言えば
「ねえユーリ、私どれくらい寝込んでた?」
ソフィと会った後の記憶が完璧に途切れちゃってるから多分別れた直後に倒れたんだろうな
「丸一日だよ。驚いたよ、セツ姉が応接室に行ったのは知ってたけどまさかエドさんに抱えられて出てくるなんて!そのまますぐに部屋に運ばれて今日のお昼までずっと高熱でうなされてたんだって。主な原因は疲労って聞いたけど風邪の可能性も捨てきれないから僕は部屋にも近づかせてもらえなくって…本当に心配したんだから…」
辛そうに顔をしかめるユーリの頭を今度は優しく撫でる
この顔は必死に泣くのを我慢している顔だということくらい知ってる
さっきは心の中で悪くないなんて思っちゃったけど…反省だな…
ユーリにこんな顔をさせるくらいなら優しく接してもらわなくていい、いつもの素直じゃない憎まれ口で接してもらうので充分!だっていくらうちの子が捻くれで毒舌でツンデレでも、私の最愛の弟だということには変わりないから
「ごめんね、お姉ちゃん普段めちゃくちゃ身体丈夫だけど、今回はちょっとオーバーヒートしちゃったみたい。でも安心して!一回熱出しちゃえばもう早々寝込むことないから!だから、もうユーリに心配かけるようなことも起きないよ、絶対!」
「…絶対なんて言い切れないでしょ?」
「言い切れるわよ」
「なんで?」
なんでって、そりゃ
「このセツィーリア・ノワール様に不可能はないからよ!」
トンッと胸を叩いて頼もしさを強調させようとニカッと笑えば
「……あーそっか分かった、バカだから病気にはかからないって言いたいんだねセツ姉は、分かった分かった、めちゃくちゃ理解した」
「ねえやめよ?その棒読みほんとやめよ?心が抉られる」
おかしくない?私君を安心させようとしただけなのにダメージ受けてんの私になってんじゃんなんでやねん!
胸を押さえてダメージを受けたフリを大げさにユーリに見せ付けてもユーリはそのかわいい顔で笑うだけ
クソ、かわいいだけに強く言えない!
悔しそうにしながらも内心ユーリのかわいい笑顔が見れたことにラッキーと感じていたのは秘密だ
「あっ、ねえセツ姉、僕も一つ聞いていい?」
「何?」
「応接室にいたの、結局誰だったの?」
「へ?」
「僕、一目見たけど、僕たちとそう変わらない歳のはずなのに、なんか雰囲気が独特だったっていうか、父様のことヴァーシス卿って呼んでたし…ねえ、あの子って何者?」
「何者って、それは」
あれ?ソフィのことって言っちゃっていいのかな?いずれ知ることにはなると思うけど…あー、でもやっぱりまずはお父様に聞いてからにしなきゃよね…軽々と話せるような内容じゃないし
それに弟に婚約の話をするって…………婚約……………そ、そうだ…私……ソフィに告白され…!
う、うわあああああああああああ!!!!お、思い出したら身体がまた沸騰してきた!!
「セツ姉?」
ユーリの声すら耳に入らない
せめて赤くなった顔を見られないように、赤みが引くまで俯いてやり過ごそうと思ったけど
その間私はまたしても頭がパンクするようなことを考え始めていた
ソフィは私のこと、す、すすすすすすす…好きって……そう言ってくれたけど
それじゃヒロインちゃんとはどうなるの??
いやね?ソフィの気持ちを疑うような、そんな踏みにじるようなことは絶対にしないって誓えるけど、でもソフィは原作でもヒロインちゃんと一番ラブラブだったのよね?……ってことは、やっぱり友人の言ったとおり、ヒロインちゃんとの出会いが真実の愛の始まりってこと……?
そっか……やっぱりそうだよね…いくら今の私が意地悪じゃない(と思いたい)とは言え、こんなアホなあんぽんたんよりヒロインちゃんの方が魅力的に決まってるものね!
今は本当に私のことが好きだとしてもきっとソフィはヒロインちゃんに会ったら、なんて言うの?そのー、打たれるっていうか?まあとにかく、運命の人だって感じるはずよ!
でもそこで問題になってくる私、ソフィは優しいからきっと自分からは言い出せない……でも大丈夫!私は素敵でお似合いの二人の邪魔なんかしない!もしそうなった場合、全力で応援&祝福するから安心してねソフィ!!
いつの間にか告白された照れより、応援するという熱意で顔を赤くさせていた私を見て
ユーリが勘違いして大慌てでドクターを呼んでくる十秒前だった
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