未プレイの乙女ゲーの悪役令嬢に転生したみたいだけど、これってフラグ回避方法分かんなくね?

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第二章

お別れ

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完全に吹っ切れたであろうシェリーの笑顔を見て顔が綻ぶのが止められない

笑みを通り越して変態並みにニヤけそうな顔を必死に引き締める
だめだ、ここで究極に変な顔になったらこの良い雰囲気がぶち壊しだ
一回椅子に座って落ち着こう、うんそうしよう

そう思って一度自分の席に戻ろうとしたら私の手を握るシェリーの手に力が僅かに込められた
それが暗に私が離れるのを引きとめようとした行動だと気づいた

首を傾げながらとりあえずもう一度シェリーに向き直る
シェリーは一度目を伏せてから真っ直ぐと私の目を見つめて


「今日は、もう一つお話したいことがあるんです」

「なぁに?」







「セツィーリア様…私、もうすぐここを離れることになったんです」

「…え?」








「だから……もうお別れになっちゃいます」


別れの言葉を告げた






「えっと…」

こういう時一体どう言えば…いきなりのことすぎてどう反応すればいいのか分からない


「その…どうしてそうなったか、って聞いてもいい?」


いきなりのことで驚いたし色々と追いついていない
でも、よく考えたりしなくても、シェリーがここを離れる…つまりこうして簡単に会えなくなるということは私にとって物凄く寂しくなることは確かだ

だけど……シェリーの顔つきや目を見ればその決断は決して悲しむようなことじゃないと読み取れる
だから、私がただ悲しんだり寂しがったりするのは筋違いってもんでしょ!


「実は、どういう経緯で、なのかは私も詳しくは知らないんですけど、ソフィール殿下が私にもう一度学び直して本当の意味で教師にならないか?と聞いてきたんです」

「ソフィが!!?」

「?…はい…えっと、セツィーリア様はソフィール殿下のことをご存知で?」

「あっ!いや、なんでもない、続けて続けて」


慌てて首を振ってごまかす
いや、関係を知られちゃいけないとかそういうわけじゃないけど、なんつうか、その、こ、こっ恥ずかしいじゃんか!!

少し不思議そうにしながらもシェリーは話を続けた

「最初はキュアラや今の教え子たちのことを考えてお断りしようと思ったんです。でも…キュアラに"夢をそんな簡単に諦めるな!"って叱られて、教え子たちにも背中を押されちゃって…もう一度勉強し直す為には側を離れなきゃいけないって分かってるのにあの子達みんな私のことすごい応援してくれるんです、そんな姿見ちゃったら私自身寂しいなんて言ってられないですよね」

へらっと笑うシェリーの笑顔にドキッとする
う、美しい人のこういう見慣れない笑顔ってのは心臓に悪いもんだなおい

「それはそうだよ、キュアラちゃんも、他の子たちもシェリーの幸せを願ってるんだから、シェリーもそれに応えてあげるってのが兄であり、先生の役目なんじゃないの?寂しいのはきっとお互い様!キュアラちゃんたちがそれに耐えて笑顔でいるんだからシェリーもかっこいい所見せてあげないと!」

「…そうですよね!応援してくれたあの子たちのためにもしっかりしないとですよね!」

「そうそう!それでこそシスコンシェリーだよ!」

「一言余計ですね」

「アハッ」

笑顔(私からしたら良い笑顔ではない)でピシャリと言葉が落とされとぼけた風に笑う
こういう時こそ子供っぽく笑うのが一番無難に済ませられるよね!

ジーッと見てくるシェリーにとぼけた笑顔(決してまぬけ面ではない)を向け続けていたら


「セツィーリア様は?」

「ん?何が?」

「セツィーリア様は、寂しいですか?私が居なくなったら」

おぅっとぉ……なぜかいきなり色気フェロモンが出たように感じるぞおぅ…


「あっと、そ、そりゃ寂しいよ、シェリーとは折角仲良くなれたんだし……でも、私もキュアラちゃんたちと同じ気持ちだよ。寂しいけど、それと同時にシェリーが自分の夢に一歩近づくことがとっても嬉しいの!」

「セツィーリア様…」

「シェリー、シェリーならきっと世界一、ううん、宇宙一の超絶美人先生になるよ!」

「……超絶美人はちょっといらなかったですね」

「えー、褒めてるのにー」

苦笑いを浮かべるシェリーの態度に顔をしかめ唇を尖がらせる
シェリーはもっと自分の美しさを自慢してもいいと思うんだよね!もったいないよ!国宝級の美しさなのに!

子供みたいに(いやまあ実際子供なんですけどね)ぶーぶーと膨れる私を見てクスッと笑みを零すシェリー
おいおい、こっちはあんさんのことで膨れてんだぜ?美しさって罪って言葉がぴったりだなシェリーは

いつの間にか離されていた手で腕を組む
そしてシェリーは空いた右手を私の頬へと伸ばした

白くて長い指が遠慮がちに頬に触れる
そしてそのままそっと左頬を温かい手が包む


「でも…セツィーリア様の太鼓判の効き目は凄そうですね」

「あったりまえよー!シェリーには私がついてる!だから安心して自分の道を突き進んじゃえ!!」

右手で拳を握ってシェリーの肩にトンッとぶつける
あっ!今私いいこと言ったんじゃない?今すごい青春っぽいことしたんじゃない!?


片方は頬を包んで片方は拳を肩にぶつけてる、なんて変な絵面だけど私は超真面目だから!
だから


「だから…いってらっしゃいシェリー、大変だと思うけど私もみんなもあなたのことを信じてるわ」


ニカッと笑えばシェリーははにかんだ笑顔を見せてくれた
心なしか頬が色づいているように見えたのは恐らく気のせいだろう


そのはにかんだ笑顔のかわいさにやられていたから


「……適わないな…ほんと」


俯いて小さく零れ落ちたシェリーの呟きには気づかなかった







帰り際


「セツィーリア様、あなたに誓って、私は絶対に夢を叶えます」


改まって真面目に宣言するシェリーがなんだかおかしくってついクスクスと笑ってしまった


「もう、シェリーってば、そういうのは神様か、もしくはシェリーが一番大切な人に誓わなきゃ」

私に誓ってどうすんの、と笑い飛ばしてやろうと思った


そう思ったけど


「ええ、だからあなたに誓うんですよ」


甘さを含んだ、いやむしろ甘さしか感じさせないような声が私のそれを停止させた
ついでに思考も停止した


固まる私にふっと柔らかく微笑んだシェリー


そして、止めと言わんばかりに

「最後に、おまじないを頂いてもいいですか?」

シェリーは私に最後の爆弾を落とした


「お、おま、じない?」


辛うじて出せた声も直後に失われた


チュッ


「おまじない、確かに頂きました」

「!!??…あぅ………ぁっ…の…ぉぅ…??!!」

「それじゃあセツィーリア様、行って来ます…!」


私の額にキスを落としてシェリーは清清しい顔をさせながら去って行った



色々言ってやりたいことはある

まずキュアラちゃんに多分いつもやっているであろうこういうことを安易に他の子にもしちゃだめっていうこととか
おまじないって言うんだから普通私がしてあげるほうなのになんでシェリーが勝手にしちゃってんの!?しかも、キキキキキキス!!とか!!
あっ、いや別に私の方からキスがしたかったことじゃないよ?私が言いたいのは私なりのおまじないの仕方をしてあげたかったっていうね!そういうことだからね!?って私はどこの誰に弁解してんだ…!


とにかく!!文句はいっぱいある!
だけど今は


「シェリー!!」

既に遠くに見える小さな背中に呼びかけた
半身だけこっちに向けるシェリーに再度叫ぶ


「帰ってきたら一回だけ!シェイルス先生ってちゃんと言ってあげるから、私がこの約束を忘れないうちに立派になって帰って来るんだよー!!」


顔は多分まだ少し赤い
でもそれはきっと叫んでるせい

だって今の私の行動って多分実家を出る息子を見送る母ちゃんそのものだから赤くなる要素なんて……いや、そこそこあるなそれはそれで

まあ、何はともあれ
人間誰しもご褒美や期限があった方が燃えるものだからね!
シェリーも、貴重な私の"シェイルス先生"が聞きたかったらいーっぱい頑張らなきゃね!!


ピョンピョン跳ねながら両手を挙げて大きく手を振る


遠くで同じように片手を挙げて大きく手を振ってくれたシェリーの表情は良く見えなかったけど


でもきっと



笑顔だったと私は信じている





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