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第三章
筋
しおりを挟むその言葉を発した瞬間
ハルの雰囲気が一瞬で変わった
笑顔は消え去り、細められた目からはなんの感情も読み取れない
底冷えするような目を向けられるけど、これがハルの本当の顔だって思えば、あの胡散臭い笑顔よりはマシだな
「あら、もう装わなくていいの?」
「……」
「黙って睨んでも私はエスパーじゃないから分からないわよ?」
「……セツィーリアちゃんならエスパーって言っても俺は信じちゃうけどね~」
ここで漸く口を開いたかと思ったら、核心をつくような言葉は未だに出ない
「俺が近づくなって言ったら、セツィーリアちゃんはフィーから離れてくれるの?」
と思ったら……やっと出ましたな
「まずなんで私とソフィが仲良くしてるのが嫌なのか教えてくれない?」
「俺の質問に先に答えてからにしてよ」
おお、珍しく棘を隠さないような言い方じゃん
「それじゃあ答えるけど、それは無理よ。ソフィは私の大事な友達だもの」
「はは、大事なお友達ね、はは!」
「…何がおかしいの?」
嫌な笑い方だ
人を心底馬鹿にしたような、軽蔑してるような笑い方
「友達だと思ってるのは君だけ。そのことは君もずっと前から分かってるよな?それなのにずっとフィーを縛り付けてる。大事な友達だって聞こえはいいけどフィーに好かれてるっていう優越感に浸ってたいだけなんじゃないの?だからいつまでもフィーと近い位置に居てあいつを利用してるだけなんじゃないの?」
一言一言言うたびに一歩一歩私に近づき、言い終わる頃には目の前にハルの顔があった
息と息が触れ合うくらい近い距離に居るのに、ハルの目からは軽蔑と憎悪しか感じられない
こんな真正面からこんな感情を向けられるのはアイシャ以来だけど…ハルのそれはあれの非じゃないな
私だって人間だし、傷ついたり怖いって思うことはある
今だって一方的にこんなことを言われて密かに傷ついてるし怒ってるんだから
「そんなこと思ったことないしありえない」
「それを俺にどう信じろって?」
「明確にそれを示す術なんてないってことはあんたも分かってるよね?頭を切ってどんなことを考えてるのか見せてあげられたら良かったね」
「そうしてくれるなら是非やってもらいたいね」
にこっと笑ってそう吐き捨てるハル
ほんっと…こいついい性格してるわ
「…あんたがなんで私とソフィが一緒にいるのが嫌なのかは分かった。じゃあ私からの質問を変えるわ。なんでそんなにもフィーのことを?ただの友達を心配するような人間じゃないでしょ?あんたは」
「なんで俺がそれをセツィーリアちゃんに話すと思うかな~?」
「私はあんたの質問に答えた。だったらあんたも私の質問に一個答えるっていうのが筋じゃない?」
「セツィーリアちゃんは俺がそういう筋を通すようなやつに見える?」
「……」
「あはは、黙っちゃった。正直者だね~」
正直者だって言うなら私のさっきの言葉も信じろよコノヤロー
「まあ、いつかセツィーリアちゃんのことを本気で信じられる日が来たら教えてあげてもいいけど、今は君の事これっぽっちも信じてないからね~」
「はっきり言ってくれるじゃん、私が傷つかないとでも思ってる?」
「まさか!俺としてはセツィーリアちゃんにどんどん傷ついて欲しいだけ」
「清々しいくらいのクソ野郎だな」
「ありがとう」
語尾に音符でもつきそうなくらいのノリで言われて危うくこの至近距離にある顔面に頭突きしてやりたい衝動に駆られた
ていうか?なんで私は会って間もない奴にこんなこと言われないといけないわけ?
うわ、なんか段々腹立ってきた
考えれば考えるほど私悪くなくない!?
勝手に誤解して勝手にイメージ付けされて、好き勝手に私の人間性を侮辱したんだよ?
完全なる被害者じゃねえか
このまま言われっぱなしなんて私のプライドが許さないわ
「おいハル、質問の答えはもういい、ただ私も言いたいことは言わせてもらうわ」
「どうぞ~?」
「んじゃ、とりあえず」
手をハルの後頭部に添えて
「なぁに?セツィーリアちゃんは俺と」
「フンッッ!!!」
ゴンッ!!
「いっ!!!??ッつッッッ…!!!」
思いっきり額と額をぶつけてやった
避ける暇もなくまともに入った私の頭突きはかなり聞いてるのかハルは見たことないような顔で痛みに悶えている
ふはははは!!こちとらクロスのデコピンに何年も何年も鍛えられてんだ!柔な額してないんだからな!
痛がっているハルの後頭部に手を添え額が離れないように固定する
額と額をくっつけたままニヤッと笑えばハルは痛みによって潤んだ目で睨んできた
涙目で睨まれても怖くないもんねー!
「私には明確にあんたに信用してもらえるものは持ってない。ただ、これだけは言わせて貰う。ソフィはあんただけの友達じゃない、私にとっても小さい頃からの大事な大事な友達なんだ。数少ない心を開ける友達を大して親しくもない奴に言われたからってほいほい手放せるほど弱い絆はしてないんだよ」
「…フィーを傷つける可能性のある奴の言うことは信じられない」
「だったらお前が判断しろ。私の行動を見て私が本当にソフィに害を仇あだなす存在なのかお前の目で見て決めればいい。私は逃げも隠れもしないし、後ろめたいこともないからな、好きなように監視してもらって構わない」
「…へえ、自分から監視していいなんて、自由を捨ててるようなもんじゃない?」
「そう?私はそうは思わないよ。だって、別に誰に見られたって恥ずかしくない生き方をしてるつもりだもの。私は誰かに見られているくらいじゃ生き方を変えるつもりはない、ていうかノワール家の令嬢なんて常に人の目に触れてるようなもんよ、今更その目の中にあんたみたいな奴が1人増えたところで痛くも痒くもないわ」
「ヒュ~、言うねえ」
「ただし……何か文句あるなら突っかかってくる人間は私だけにして。私の大事な人たちに手を出すなら…」
後頭部にある手に力を込めくっつけている額をグリグリと押し圧をかける
「…そん時は潰す。…例えソフィの友達だとしても…私はお前を許さないから。……それだけは覚えておいてね?」
最後に私渾身のかわいらしい笑顔を浮かべてハルから離れた
漸くまともな距離に戻って見たハルの額は、その整ってる顔とは不釣合いな赤い跡が残っていた
「ふはっ!いいじゃんその顔、私の好み」
「…セツィーリアちゃんもなかなか恐ろしい子だね~」
「今更気づいたの?」
だから、私にソフィの友達を傷つけさせるような状況を作らせないでね?
手加減出来ないと思うから
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