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第四章
不注意
しおりを挟むあの後、どのようにして教室に戻ったのかは覚えていないが
気づけば私は今日一日の授業を終えていた
コレットに声を掛けられ肩を揺すられるまで全然意識がなかった自分に驚く
聞けば、五時間目が終わった際に声を掛けても
「うん」
「ああ」
「そうだね」
「あはは」
としか言っていなかったらしい
これは普通にノワール家の人間としても失態だと言えるし、まず人として機能できてなかったことが分かる
「セッちゃん大丈夫?お昼休みからずっと心ここにあらずって感じだけど、何かあった?」
コレットの心配が身に沁みる
「ううん、大丈夫だよ!心配かけてごめんね!」
これ以上の失態を犯すことは許されない
それに、コレットに心配をかけないためにもしっかりしないと!
笑顔を向ければ少しホッとしたような顔になるコレット
そのまま一緒に帰ろうとすればコレットが少し申し訳なさそうな顔で私の袖を引いた
「セッちゃん、ごめんね、今日の委員のことで、一度教員室に向かわないといけなくて…」
「あっ、そうなの?でもすぐに終わるなら私待ってるよ?」
「いいの?ありがとう!多分すぐに終わると思う!」
嬉しそうに笑うコレットの笑顔を見ただけで私は何年でも待てると本気で思った
「それじゃあ私は教室で」
「皆!この後アーレス先生がここで歴史学を教えてくれると約束してくれたのだが、共に学びたいと言う方はぜひとも参加してくれ!」
「じゃなくて!!一緒に教員室まで行って扉の外で待ってるよ!!」
いかにも委員長をやっているような感じのクラス委員がよく通る声でみんなに呼びかけた声を聞いた瞬間、コレットに詰め寄る勢いで一緒に教員室まで行くと告げた
それと同時にとてつもない数の生徒が私と同じようにクラス委員に詰め寄っている姿が横目で見えた
流石の人気っぷりだ
シェリーのどこが怖いって、女も男も無意識のうちに誑し込んでるとこだよな
って、そんなことを考えてる暇じゃないな!
「さっ!さっ!早く行こ!」
コレットの背を押して教員室までの道を急ぐ
流石にさっきの今でシェリーにどんな顔して会えばいいのか分からない
ていうか……
どう考えても暫くはまともに顔を合わせられないって分かるよね!?あんなこと言われたら!!
気を抜けばフラッシュバックしそうなシェリーの声を慌てて頭を振ることでかき消す
そして、それが仇となった
コレットを急かしていた罰が当たったのだろう
前をよく見ていなかったせいで前から歩いて来ていた他生徒にぶつかりそうになったのだ
そして、それを慌てて避けたせいで足首から嫌な音がした瞬間、私の身体は傾いた
横目でぶつかりそうになった生徒とコレットの驚いた顔が見える
いやあ、これは焦る
ここで派手に転んだらコレットも心配するし、私の不注意のせいで何も悪くないこの方に罪悪感を与えることにも繋がるかもしれない
何より、私が、ノワールというブランドを背負ってる私がそんな無様な姿をこんな公衆の面前で晒すわけにはいかない
だから、なんとしてでも立て直さなきゃ…!!
足首の痛みも無視してなんとか倒れるのを防ごうと片足を前に出して踏み留まろうとした時だった
私が足を踏み出す前にポスッと何かに抱き留められた
周りから微かに無理やり抑えたけど漏れ出ているような小さな黄色い悲鳴が聞こえた
それと同時に嗅いだことのある匂いが鼻をくすぐった
待て、この匂い
待て、まさかのまさかだよな
待て、いやいやそんなそんな
恐る恐ると言った感じで顔を上げれば
私を受け止めてくれた人はふわっと花が咲き誇るような笑顔を至近距離で私に向けてきた
「間に合ったみたいで良かったです」
正直
「…助けていただき感謝しております。ありがとうございました…アーレス先生」
この人は私を殺しにかかってきてるんじゃないかと本気で思った
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