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第四章
すんなりと
しおりを挟む至近距離で顔を見れないため、シェリーの胸元を見ながら小さくお礼を言う
自分の心臓がうるさいくらいにバクバクと鳴っているのが分かる
この音がシェリーに聞こえるんじゃないかと気が気じゃないし、そう考えれば考えるほど頭に血が上っているような感覚に陥った
と、とにかく早く離れてくれないかな
このままじゃ私の心臓も持たないしいい見世物だわ
「セッちゃん!大丈夫!?」
コレットの不安そうな声が聞こえる
「も、申し訳ありません!お怪我はありませんか!?」
それに続いて焦ったような男の子の声が聞こえた
きっと私の不注意のせいでぶつかってしまった方だ
早く立て直して二人を安心させてあげなきゃ
シェリーの胸に手をついて適切な距離を取ってからにっこりと笑顔を浮かべる
「コレット、ありがとう。大丈夫よ。それから、あなたも、私の不注意のせいでぶつかってしまってごめんなさい。この通り、怪我もしていないので気にしないでください。」
しっかりと立っている私を見て二人ともホッと息をつく
私とぶつかった男子生徒は再度謝罪をしてからこの場を去った
コレットは私の心配をしていたが、委員の事で教員室に用があるのに私のことで足止めをしていることが申し訳なくて行くように促した
最後まで渋る様子を見せていたコレットだったけど、私が背中を押しながら促せば「すぐ!すぐ戻ってくるからね!!」と少し小走りにその場を去って行った
さて
「アーレス先生、先ほどはありがとうございました。おかげで公衆の面前ではしたない姿を晒さずに済みましたわ」
シェリーにこんな固い言葉を向けるのは慣れないが、未だに私たちに向けられる視線は多いため、ここはちゃんと線引きをしなければいけない
それはシェリーも分かっているのだろう
「いえ、とんでもございません。人として当前のことをしたまでですよ」
一瞬だけ少し寂しそうな顔を浮かべたものの、そのあとの対応は普通の教師と言えるものだった
義務的な会話を続ける私たちを見て、さっきまで騒いでいた生徒たちも段々興味を無くしていったのか、漸く私たちの存在を周りが気にしなくなった頃
「セツィーリア様、本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫だよ、シェリーがすぐに支えてくれたし」
小さな声で問いかけてくるシェリーの顔には心配でたまらないという感情が滲み出ていた
全く、ちょっとよろけたくらいでみんな大げさだな~
小さい頃なんて木から落ちてもピンピンしてた人間だよ?
こんなことで心配されるような軟弱な体してないのよ!
「それなら、良かったです」
ふにゃっとした笑顔を浮かべるシェリーに危うく変な声が出そうになった
あ、危ない危ない
今日の私はシェリー耐性が整っていないから簡単にノックアウトされそうだ
気持ちを落ち着かせるためにもここは一旦シェリーと距離を取ろう
「そ、それより、シェリー今日はうちのクラスで歴史学を教えてくれるって約束をしてたんでしょ?もうみんな待ってたから早く行ってあげなよ!」
「…メリさんが戻ってくるまで一緒にいますよ?」
「え!?いやいや、子どもじゃないんだから一人でも全然平気だよ!?」
「ですが…」
シェリーが言い淀んだその時だった
「あっ、いた」
小さな呟きだったけどすんなりと私の耳に入ってきた声
バッ!とその方向に目を向ければそこには思っていた通りの人物が
「お久しぶりです、シェイルス先生」
小さく笑みを浮かべながら、クロスは私たちの元へとやってきた
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