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24 ダンスパーティーの会場では シャインside

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 自分とのダンスを終え去っていくメリーを見送って、シャインは信じられないような気持ちでいっぱいだった。


(今、自分が踊ったのは誰だ?)


 もちろんメリーだ。姿形も彼女のまま。転生者である彼女はあまりダンスが得意ではないはず――なのに。

 そういえば……とシャインは思い出す。

 お試し夜会でも彼女はツァールトハイト公爵令息をはじめ、仲間だという部員達と素晴らしいダンスを披露していた。

 メリーの父親は公爵家の出身だ。メリーとのお茶会でその公爵家の祖母からダンスを習っていると聞いて、ああなるほどと納得したが、自分が実際踊ってみて気が付いた。それどころじゃない。まるでダンスの教師に稽古をつけてもらっているかのようだった。

 いつの間にあんなに上手になったのだろう。最後に踊ったのはいつだったか。

 思い出せないことで何故か心に焦りが生じる。メリーのことは自分が一番よく知っている筈なのに。

 今度会ったら詳しく聞けばいいか、と焦りに蓋をしようとして機能していないことに気付く。

 彼女とは婚約を解消したのだ。向こうからの配慮もあり白紙になった。だから婚約をしていた事実すら無くなったし、この先2人きりのお茶会が開かれることもない。クラスも違う。もう、二度と自分が彼女と親しく話す機会はないのかもしれない。

 去り際に名前ではなく、名字で呼ばれたことを思い出して焦る気持ちが強くなる。


(今まで名字で呼ばれたことなんて一度も――いや、あるな)


 初めて会った時には確かあんな風に呼ばれていたはずだ。あっという間に仲良くなって、すぐに名前で呼び合うようになったけど。

 そうだ、シャインとメリーは幼馴染だ。婚約はなくなってもその事実は変わらないはず。シャインは懸命に自分に言い聞かせる。


「シャイン様! 私の為にありがとうございます。続けて踊って喉が渇いたでしょう。飲み物をお持ちしましたよ」


 ニコニコと。ヴィオーラが飲み物片手にやってきてシャインは我に返った。

 そうだ。自分は彼女の悪い噂を払拭するためにメリーと踊ったのだ。表情が明るくなっているところをみると、きっと効果があったのだろう。


「ああ、ありがとう、ヴィオーラ嬢。ちょうど喉がカラカラになっていたんだ。流石は転生者だ。気が利くね」


(そうだ。彼女は本物の転生者。アイアイガサに祝福された、彼女こそが僕の運命の相手だ)


 渡された飲み物で色々な思いを飲み下して、シャインは気持ちを落ち着けた。冷たい飲み物が張り付いた喉を癒してくれる。そうしてシャインは自分が見つけた本物を見る。

 何も知らないメリーとは違う。あちらで生まれあちらで育ち、記憶も経験もある転生者。あちらのことで彼女が知らないことはないはずだ。

 これからは彼女がシャインの知りたいことを何でも答えてくれるだろう。

 シャインはそう信じて疑わなかった。



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