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348 やらかし王子の忘れ物
しおりを挟む「……えーと。それで、よくそんな凶悪な魔物をウチに連れて来られたわね?」
「ん? ああ、それがだな。最初はかなり手こずってこれはもうダメかと思ったんだが、最後の手段『言葉による説得』を試みた結果、奇跡的にうまくいったんだ。『大人しくしていたら、異世界に連れて行ってやるから』と言った途端、喉を鳴らして大人しくなったぞ。魔物相手でも意外と話が通じるものだな。先入観にとらわれずに試してみてよかったよ。まあ、騎士団の精鋭部隊ですら毎年行方不明者を出すあの地下ダンジョンを平気でフラフラしているくらいだから、思ったよりも知能が高いに違いない。ほら、そいつ魔物のくせに服とか着てるし」
おっと。王子の言葉を受けて、ローブ猫ちゃんが居心地悪そうにスッと目を逸らしましたよ。これは、王子の誘惑に自ら乗っちゃった疑惑が出てきましたね。
まったくもう、悪い猫ちゃんですね。そうまでしてウチに遊びに来たかったの?
あらあら、誤魔化しちゃって。猫ちゃんたら、か~わいい♪
なでなでなでなで……
経緯はともあれ、せっかく降ってわいたモフモフタイムなので、存分に楽しませてもらうとしましょうか。
まあ、王子が焦る気持ちも理解できないでもない。
三年に進級して時間割がハッキリしたものの、必修と取りたい講義がおやつの召喚時間に重なっちゃったから、土日を除けば、王子を召喚できるのは夕方の一~二時間だけだったし。
そうなると、この夜の召喚がメインになるんだけど、それもダイエットのため自粛――という名の、偽王子(大)の指名呼び出しをしていたし。
ああ、ちなみに、指名呼び出しについては栄養ドリンクの賄賂を贈って、王家の影のお偉いさんこと偽王子(腹黒)に協力をしてもらいました。どうせ思考を読めちゃう腹黒さんに隠し事はできないし、後々バレて怖い思いをするのは嫌ですからね。話は通しておかないと。
思いのほか素直に受け取って貰えたので、腹黒さんもやらかし王子のせいで相当お疲れが溜まっているみたいです。
そんなわけで、王子にしてみたら春休みに呼びまくっていた分、召喚が減ったのが余計に堪えたに違いない。
それで『ダンジョンで見かけた猫っぽい魔物を捕まえて、召喚主のご機嫌をとろう!』ってなるのがいかにも王子らしいというか、相変わらず努力の方向性が(以下略)……とは思うけど。
とりあえず体重も元に戻ったし、今日からは通常モードになったわけですが、しばらくはこの『夜の召喚』が中心になりそうだ。私としても、就職活動を見据えて早いうちに単位は押さえておきたいし、こればかりは仕方がない。
(その分、偽王子さん達の召喚回数も減るわけだけど……って、あれ? そう考えると、この王子+偽王子(猫)の召喚ってすごく効率的だし、意外とアリなのかも!)
――なんて、考えたのがまずかったのだろうか?
「ふわぁ~、よく寝た。サッサと朝ご飯食べて、バイト行かなきゃ……」
「にゃ~ん」
「え?」
「にゃ?」
……なんか……王子がうちに猫ちゃんを忘れていってるんですけど…………!
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