魅了堕ち幽閉王子は努力の方向が間違っている

堀 和三盆

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37 魅了堕ち幽閉王子と夜のお散歩

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「王子、今日は天気もいいし久しぶりに散歩に」
「行かない」

 あれ以来王子が部屋に引きこもっている。召喚生活も落ち着き、すっかり日常を取り戻したかと思いきや――コレだ。


 王子が履いたまま帰った靴は召喚再開の翌日に持ってきたので(履かずにちゃんと手に持って……鈴木さんしつけサンクス!!)、現在はウチの玄関に置いてある。だから、散歩に行こうと思えばいつでも行けるのだが――。

 やはり、二カ月半もの間こっちに来られなくなったのが相当ショックだったのだろう。また強制召喚終了になっては堪らないと、近所へのお散歩すら拒んでいる。

 無理強いも良くないと様子を見ていたのだが既に一週間。そろそろ軽い散歩くらい始めたい。ただでさえ、久しぶりだからと王子の大好物を毎日出しているのだから、体重だって心配だ。


「家にお菓子もうないし、買いに行かないと夜の召喚野菜スティックになっちゃうよ?」

「……………………問題ない」






 ポリポリポリポリ……ポリ……

 その日の夜。翌日バイトが休みだったので本日二度目の召喚。王子は大人しく野菜スティックを齧っている。「コレはこれで美味しいな!!」なんて無理して言っているが、若干元気がない。はあ……しょうがないな。


「ちょっとお留守番してて。まだ開いているからスーパー行ってくる」

「ちょ……っ! 外、暗いぞ!? 盗賊でも出たら」


 何だ、盗賊って。まあ、変な人くらいはいるかもだけど。


「人通り多いから大丈夫。ちょっとお菓子買うだけよ。あと、お米切らしちゃったし。今日特売だから」

「俺も行く」

「え? 無理しなくていいよ。もう夜だし」

「夜だからだ。一人歩きは危ないだろう。……鈴木さんも言っていた。酔っぱらいや不良に絡まれると嫌だから夜はできるだけ外出しないって」


 鈴木さん……。まあ、正論ではある。まだ寒い中悪いな、とは思うけど外に行く気になったのなら丁度いい。とはいえ上着がないから、ジャージにカイロ貼ってマフラー付けさせて簡易冬装備。チャチャッと済ませるか。

 でも……。強制召喚終了が怖いから外に出たくないって言っているのに、夜だと私を心配してついてきてくれるのか。


「ふふっ」

「ど、どうした!?」

「ううん。王子優しいなって思って。ほら、行こう」


 手を差し出すと、何も言わずに繋いできた。若干、緊張しているのが分かる。怖いのだろう。


「言葉、通じなくなったらすぐ戻ろうね」

「……ああ」


 王子の震える手は寒いから、ってことにしておこう。



 まあ、そんな感じで出掛けたものの、やっぱり外出は楽しいようで。


「すごい! お買い得品がこんなにあるぞ!」


 意図せず閉店間際になったせいか値下げシールのオンパレード。美味しそうな菓子パンセット(半額)に王子が食いついていたので今日の王子のおやつはそれにした。

 私もお肉(半額)が買えたので大満足だ。今日中に下処理しなきゃだけど、明日はバイト休みだから大丈夫。

 特売品のお米5キロは王子が持ってくれた。こんな重い物持ったことないだろうに……と思ったら身体強化が使えるらしい。すごい!! なので、急いでジュース2リットルと液体洗剤も追加したら鬼だと言われた。

 いや、それも特売だったんで……ごめんね?

 とりあえず荷物持ちの報酬としてお買い得のポテトチップスを追加したらご機嫌になった。win‐winだと思う。




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