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122 言葉の壁
しおりを挟む「王子、○○少し□□○○□が」
「※っ☆何て?」
「○っ!? 王子、言葉が」
「※っ!? 召喚主※言葉が」
――本日三回目となる夜の召喚。
警戒することなく私の用意した栄養ドリンクを一気飲みした王子様に変化が起きた。今までは三回目の召喚では言葉がまったく通じなかったのに、なぜか所々が翻訳されている……何だコレ。
王子もかなりビックリしているようだ。何で……とか、ほにゃらら……とか聞こえた。うん。ほにゃららとかの方が圧倒的に多いかな。
「鈴木さん※□※※」
「□っ○、王子。□□□□○言葉が」
あーうん。名前以外聞き取れないね。これ、あれだ。中途半端に翻訳されてるっぽい。法則性とかあるのかな??
気になる。気にはなる……が。
とりあえず時間は有限なので――ってことで、当初の予定通りスーパーへと王子を連れ出した。言葉が通じるのが一番いいんだろうけど、どの道これじゃあ中途半端だしね。通じないなら通じないでもう慣れたから別に困らないし、ゲーム時間の方が大切だもの。
とか、思っていたんだけど。中途半端にでも通じるのは意外と便利だった。
「好き……好き……嫌い」
私が指さすお惣菜に対して、好みを伝えてくる王子様。ちゃんと訳される言葉の中から近いモノを選んで、使用しているようだ。「これがいい」とは伝えられなくても、「好き」「嫌い」は伝えられる。今までは頷いたり首を振ったりで判断していたけれど、ほんのちょっぴり進化したようだ。
意思の伝達方法が増えたのは単純に便利だろう。少しずつしか伝わらなくても、組み合わせればそこそこ伝わるようにはなるだろうし。
そういえば、離宮から戻ってから初めての三回召喚の翌日に、信頼関係が強くなったとか何とか言っていたな。魔法のことはよく分からないけど、信頼関係が強くなると魔力が節約されるとか言っていたから、なにかでまた、信頼関係とやらが深まったのかもしれない。
王子様のクセに私が用意する飲食物を特に気にすることなく何でもホイホイ食べるから信用されているのはよく分かるし。……まあ、ウッカリとかもあるかもだから、多少は警戒してほしいとは思うけど。
とりあえず言葉が中途半端な今は細かいニュアンスを伝えるのは無理なので、夜食を食べて、寝支度をした後は昼間の続き。
王子が帰ってからだと遅くなっちゃうからね。水回りの使用は早いうちに済ませます。
壁ドン怖い。嫌! 絶対!!
最近決まった二人建築の場合の定位置。王子に眼鏡をかけてもらっての腕組みで大浴場の建築を進めていく。うん。この体勢にも慣れたよね。
あーだ、こーだ、と意思の疎通を試みながらだったけど、なかなかにカッコイイお風呂が出来ました☆
引き続き学食を作りたかったんだけど――今日は早朝からバイトだったし、眠気には勝てなくて結局は日付が替わる前には寝てしまった。
まあ、お風呂作りの途中から思いっきり船を漕いでいたから、私にしてはよくもった方だと思う。栄養ドリンクも限界の眠気には勝てないな。
そういえば王子には栄養ドリンクの効果はあったのだろうか。確かめたいし、色々話したいこともあったけど、
「お休み……」
どうにかそれだけつぶやいた後のことは覚えていない。
なんか、久しぶりに一緒に遊んだ本日三回目となる夜の召喚は途中から王子が少し落ち着かない様子だったけど、翌朝起きた時に確認をしてみたら建設がかなり進んでいたので、王子にもそれなりに栄養ドリンク効果はあったみたい。
うん。良かった!
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